ロボットによる業務自動化の「雲拡科技」が約30億円を調達、日本市場を基盤にRPAの国際化を加速

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定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を開発する「雲拡科技(Encootech)」が、最近シリーズBで3000万ドル(約32億円)を調達した。リードインベスターは既存株主の「セコイア・キャピタル・チャイナ」、コ・インベスターは既存株主の「GSR Ventures」、「明勢資本(Future Capital)」など。

さらに、マイクロソフト人工知能R&Dチーフディレクターや、RPAツール米「UiPath」R&Dディレクターを務めた胡世超氏が、CPO(プロダクト最高責任者)に就任すると発表した。

雲拡科技は2019年8月にシリーズA+でセコイア・キャピタル・チャイナなどから数千万元(数億円)を、同年6月にはGSR Ventures」や明勢資本から数千万ドル(数十億円)を調達している。

高い開発能力でシェア拡大へ

雲拡科技は創業以来、RPAの開発に注力してきた。製品は改良を重ねて熟成しており、急速な市場拡大の時期に入っている。創業者でCEOの劉春剛氏は、今後は製品のベースとなる自動化指標を急速に進歩させ、ソフトウェアの互換性と拡張性を大幅に向上させていくと語る。

同社のRPA製品は、欧州「SAP」や米「Oracle」、中国「Kingdee(金蝶)」「UFIDA(用友軟件)」「WeChat(微信)」、アリババの「Ding Talk(釘釘)」など多くのソフトウェアやシステムと互換性がある。 Windowsパソコンだけでなくスマートフォンでも使え、国境を越えてどこの国からでもアクセスできるようになっている。

雲拡科技が抱える開発者は現在5万人以上おり、エコシステムの提携パートナーは100社以上増加した。新しいアプリケーションストアと双方向学習プラットフォームも間もなくリリースされる。

劉氏は、現在のクライアントは200社を超えており、金融、エネルギーなど従来得意としてきた分野に加え、貿易、物流、医療、行政などの分野にも拡大していると述べる。現在、金融関連が全体の売上高の約25%を占めており、総売上高は200%増加した。

また雲拡科技の製品開発と配信システムはさらにレベルアップしており、より複雑な組織体系をもつクライアントにもサービスを提供できるという。最近では、ある国際貿易グループの子会社20社以上のために、輸出入事項入力用RPAを設計、納入した。雲拡科技がRPAを製品化するレベルは高い。簡単なプロセスの開発なら、通常一人のエンジニアで、2週間もあれば十分であり、クライアントのニーズに迅速に対応できる。

新型コロナウイルス肺炎の流行に際して、雲拡科技はRPAロボットを活用し、政府が流行状況について情報提供する処理効率を6倍に高め、上海での早期操業再開に貢献した。

AIを組み込んだクラウドRPAは将来のビジネスインフラ

劉氏は、雲拡科技が重視するのはRPAとAIの単なる連携というよりも、RPA製品本体のAI化、つまりAIをRPA自体に組み込むことだと述べる。たとえば、専用のロボット認識アルゴリズムを製品に組み込むことにより、RPAロボットがソフトウェア・インターフェイス識別、ドキュメント理解、セマンティック理解などの機能を継続的に強化し、製品の成熟度を一段と高めていくようにする。

今後、各メーカーは開発重点をクラウドRPAに移行していくだろう。たとえば、米「オートメーション・エニウェア」は、2019年10月にWebベースでクラウドネイティブなRPAプラットフォームをローンチした。配信や維持管理はみなクラウドベースで行われ、企業は需要に応じてローカルとクラウドを組み合わせて使用する。英「Blue Prism」も昨年、RPAをクラウドに引き入れるべく「Thoughtonomy」を買収している。

劉氏は、今年もクラウドベースのRPA製品をローンチすると発表した。その主要な位置づけはRPAを企業インフラの一部にすることであり、ローカルとクラウドを組み合わせたマイクロソフト「Office365」と類似する。

今はまだRPAの利用はプロジェクト制がメインで、1年ごとにライセンスを購入してもらっている。RPAを水道光熱費と同じように、ロボットの使用時間や処理件数など、ニーズに応じた料金体系にすることが雲拡科技の目標だ。これによりRPA利用のハードルを大いに下げることができる。

ただし、RPAクラウド化には、異なる操作プロセスにおける環境の違いを克服しなければならず、さらに分散型の大規模で高性能な調整技術、高い同時実行性と可用性を備えている必要がある。しかも十分な実用性があって初めて「サービスとしてのRPA」という段階に進めるのだ。 劉氏によれば、過去にマイクロソフトと世界的なパブリッククラウドサービスを担当したことがあり、マイクロソフトの「Azure Stack」創業メンバーの一人がアーキテクトとして加わっているので、同社には高い同時実行性や可用性、正確な費用計算などプラットフォームサービスの開発で豊富な経験があり、 RPA製品の開発能力を十分に備えているという。

エンクーテックの今後の計画について劉春剛氏はこう語る。「RPA製品のプラットフォーム化を徐々に進め、業界の汎用RPAインフラにし、ロボットのインテリジェンスと使いやすさを向上させる。さらにチャネルや提携パートナーシステムを徐々に確立することにより業界を深掘りするほか、現有の日本市場(エンクー・テクノロジー株式会社)を基盤として国際化のペースをさらに加速する」。
(翻訳・永野倫子)

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