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モバイル端末向け電子書籍大手「掌閲科技(IReader Technology)」は3月17日付の公告で、IT大手百度(バイドゥ)傘下の投資会社「百瑞翔創業投資管理(Bai Ruixiang Venture Capital)」(以下、百瑞翔投資)を引受先とする第三者増資割当を実施すると発表した。今回の第三者増資割当による調達資金は最大で7億元(約110億円)。百瑞翔投資は同社の株式の5%以上を取得するとみられる。
掌閲科技は、コンテンツの取得・開発やトラフィック、商業化、人工知能(AI)、ビッグデータ、アプリなど多分野において、百度との高度な戦略的協力関係を構築しながら、共に電子書籍のコンテンツエコシステムを発展させ、良質なIP(版権)コンテンツの派生作品を拡充していくと表明している。
百度が電子書籍の領域に進出するのは、これが初めてではない。百瑞翔投資は昨年7月、無料電子書籍アプリ「七猫小説(Seven-Cat)」への出資も行っている。
電子書籍市場は、今まさに成長の途上にある。調査会社「iResearch」のデータによると、中国の電子書籍市場の規模は昨年、前年比22.4%増の204億9000万元(約3100億円)だった。ショート動画やライブ配信など娯楽系アプリの伸びを受け、電子書籍アプリ市場の成長は若干緩やかになっているものの、依然として安定的な伸びを維持している。QuestMobileのデータによると、昨年9月の電子書籍アプリ全体の月間アクティブユーザー(MAU)は、前年同期比39.2%増となる3億5800万人で、1年間で約1億人増えていることが分かる。
調査会社「bigdata」のデータによると、昨年の電子書籍アプリの市場シェアでは、7割を上位3社の「閲文集団(China Literature)」系のアプリ(複数)、掌閲科技の「掌閲文学(iReader)」、アリババ系の電子書籍サービス「阿里文学(Alibaba Literature)」の「書旗小説(shuqixiaoshuo)」が占めている。この中、閲文集団の株式の56.87%はテンセント(腾讯)が保有。書旗小説は阿里文学とコンテンツを共有している。そして今回、百度が掌閲に資本参加したことで、電子書籍市場の上位3位企業にIT大手御三家「BAT(バイドゥ・アリババ・テンセント)」のバックアップが着いた形となった。
掌閲科技は今回の公告の中で、百度と共に良質なIPコンテンツの派生作品を拡充する方針を明らかにしているが、同社は既にインターネットドラマ「惹上冷殿下(恋は不意打ち)」や小説「読心追凶」、漫画「一念時光」などのIPを保有している。恋愛小説に基づいて製作された「惹上冷殿下」の視聴回数は「腾讯視頻(テンセントビデオ)」と「芒果TV(Mango TV)」で放送初日に1億回を超え、放送後30日間で18億回を突破した。同ドラマは米動画配信大手「Netflix(ネットフリックス)」でも26の言語に翻訳されて放送されている。
オーディオブックもIPコンテンツを活用する方法の一つになるだろう。掌閲科技は昨年、検索エンジン大手「捜狗(Sogou)」と戦略的パートナーシップを結び、AI技術を利用した音声付き電子書籍の開発と大量生産を進めている。
掌閲科技の株価は公告を発表した17日、終値で19.77元(約297円)を付け、上昇率は10.02%となった。
(翻訳・田村広子)
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