医療業界への投資で大成功収めた投資ファンド「ヒルハウス」、メディテックを有望視する理由とは

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IT巨頭テンセントやEC大手京東(JD.com)への投資で知らている中国大型投資ファンドの「ヒルハウス・キャピタル(Hillhouse Capital=高瓴資本)」が、現在およそ600億ドル(約6兆5000億円)もの資金を管理している。

2019年末に米証券取引委員会(SEC)が発表したデータによると、ヒルハウスが株式を所有する米国企業54社のうち25社がバイオ医薬品企業だった。今年2月、ヒルハウスは23億1100万元(約350億円)を超えない価格でAPI(医薬品原薬)受託製造の米企業「Asymchem」の未公開株を購入、持ち株比率5%以上の株主となった。また、3月初めに医療機器を手掛ける「微創医療(MicroPort)」の株式を4773万4000株、6億4500万香港ドル(約84億円)相当分買い増した。中国の民間シンクタンク「胡潤研究院」が同月発表した「2020年中国健康関連民間企業TOP100(Hurun China 100 Most Valuable Non-State-Controlled Healthcare Companies 2020)」のランキングによると、時価総額10位以内にランクインした民間の製薬企業のうち、ヒルハウスは7社に投資している。

米国のテンバガー(10倍株) 医療・ヘルスケア業界が最多

ヒルハウスが医薬品業界を評価するのは成長性があるからだ。

招商証券(CMSC)のリポートによると、米国で過去10年間に株価が10倍以上上昇した企業は81社あるという。リポートで取り上げているのは2019年末の時価総額が10億ドル(約1080億円)以上の企業だ。中でも医療・ヘルスケア業界と通信・IT技術業界の成長が顕著であり、それぞれ23社、22社だった。

データ:招商証券 作図:36Kr

中国国内でも2019年の医療業界には取引と合併・買収に増加傾向が見られた。2018年の下半期と比べ2019年上半期、中国の医薬品業界は取引数が35%増加、取引金額も45%増の108億ドル(約1兆1700億円)となった。

メディテック三大分野:革新的医薬品、CRO/CDMO、医療機器

ヒルハウスの医薬品業界への投資は比較的フレキシブルで、一次市場から二次市場までカバーしている。株式を所有している企業は主に以下の3分野だ。

公開情報をもとに36Krが作図

一つ目は革新的医薬品の分野だ。同社は「ベイジーン(百済神州)」「恒瑞医薬(HENGRUI MEDICINE)」「君実生物(Junshi Biosciences)」「信達生物(Innovent Biologics)」の4社へ出資することで、新しいがん免疫療法である「PD-1」に関連する国内の大手企業を全網羅している。ベイジーンは同資本が米国で二番目に多く株式を所有している企業だ。2019年第4四半期の持ち株時価総額は9億1000万ドル(約980億円)となり、第3四半期の6億7000万ドル(約720億円)と比べて35.8%増加した。

二つ目はCRO(医薬品開発業務受託機関)とCDMO(医薬品受託開発・製造企業)、つまり大手製薬企業に新薬の臨床研究サービスを提供する企業だ。この分野でヒルハウスは「薬明康徳(Wuxi AppTec)」「泰格医薬(Tigermed)」のほか前出のAsymchemなどに投資している。「南方医薬経済研究所」の統計によると、中国のCDMO業界の2018年市場規模は370億元(約5700億円)で、今後3年間同市場規模は世界平均よりも速い19%前後で成長する見込みだという。

三つ目は医療機器分野だ。医療改革や分級診療(医療機関をランク分けして患者が疾病レベルに応じた医療機関を受診できるようにする制度)、国産設備利用の支援などの政策のもとで、医療機器業界は急速な発展が期待される。中国における医療関連の消費額で医薬品と医療機器の比率は「1:0.35」であり、世界平均の「1:0.7」よりはるかに低く、将来的に大きな成長の余地がある。医療機器のカテゴリごとに市場シェアを見ていくと、画像診断(16%)、IVD(体外診断用医療機器)(14%)、低額消耗品(13%)、心血管(6%)、整形外科(6%)となっている。そのうちヒルハウスは整形外科、心血管などの分野にも出資をしている。人工関節大手「愛康医療(AK Medical)」や心臓弁膜用の医療機器「啓明医療(Venus Medtech)」、前出の微創医療だ。

将来的な成長に期待

ヒルハウス創業者の張磊氏は、現在のイノベーションはもはや消費やインターネットの分野にとどまらないとし、バイオ医療や生命科学、新エネルギー、AIなど幅広い分野に浸透していると語った。

医療・ヘルスケア関連消費の急速な成長と高齢化の進行や医療ニーズの増加にともない、医薬品業界には今後大きな可能性がある。おりしも新型コロナウィルスの流行により同業界が世界中で注目を集めており、さらに多くの投資家たちがこの業界に関心を寄せるかもしれない。

(翻訳・山口幸子)

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