世界越境EC大手の8割が顧客、クロスボーダー決済の「Airwallex」がシリーズDで170億円調達 

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クロスボーダー決済プラットフォーム「Airwallex」がシリーズDで1億6000万ドル(約170億円)を調達した。リード・インベスターはSalesforce Venture、コ・インベスターはオーストラリア・ニュージーランド銀行の投資部門である「ANZi Ventures」、及び既存株主のDST Global、テンセント(騰訊)、セコイア・キャピタル・チャイナ(紅杉資本中国基金)、高瓴資本(Hillhouse Capital)、維港投資(Horizons Ventures)。調達した資金は、グローバルデジタル金融インフラの構築や商品開発に充てられ、欧米市場や中東など新興市場向けビジネスを開拓していく。

2015年にオーストラリアのメルボルンで設立されたAirwallexは、プラットフォーム型企業にクロスボーダー決済サービスを提供している。同社は海外送金業務で起業し、2017年には決済サービスに参入、昨年からは金融システムの構築スキルの発信やプラットフォーム統合も手がけている。2019年、KPMGとオーストラリアベンチャーキャピタルのH2 Venturesが共同で発表した年次レポート「2019 FINTECH100」にも選ばれた。

共同創業者の劉月婷(Lucy Liu)氏によると、最初に海外送金にフォーカスしたのは、それがクロスボーダー取引において企業のコストや売上高を左右する重要な部分だからだという。Airwallexでは外貨取引サービスシステムを開発し、提携するリクイディティプロバイダーを通して有利なレートでサービスを提供、クライアントの為替コストを90%削減することに成功している。

海外送金サービスが軌道に乗ったところで、Airwallexはさらに決済ネットワークの構築に取りかかる。各地の地元の決済事業者と接触し、企業間の少額かつ頻繁な決済を中心にビジネスを展開する。同社のプラットフォームでは、直接決済を行える仮想口座を利用している。コルレス銀行とSWIFTを利用した従来の方法では、送金に時間がかかる上に手数料が高いというデメリットがあったが、Airwallexの採用した方式だとこれらを回避することができるので費用や手間の大幅な節約につながる。

Eコマースが台頭し、クロスボーダー取引の業務許可証が広く開放されたことで、クロスボーダー決済企業が急成長をはじめた。クロスボーダー金融ネットワークの構築は多大の時間と労力を要するため、スタートアップ各社の現状を推し量る指標となってきた。この点、Airwallexはオーストラリア、香港、英国、米国、日本、カナダで金融サービスのライセンスを取得しており、全世界に広がるネットワークは越境EC大手の80%以上にサービスを提供するまでに拡大している。

2019年からはシステム能力や多方面にわたる商品の発信を行ってきた。主力商品の一つは同年初めにリリースされたプラットフォーム向け決済パッケージ商品「Scale」だ。

劉氏は次のように語る。「金融系企業でなければ、一定の水準に成長した企業は金融インフラを構築する必要が生じる。プラットフォーム型企業は大規模なユーザーを抱えており、通常業務以外にも金融サービスを提供したいと考えるものだ。しかしプラットフォーム型企業にとって金融システムを構築することは、自前であれアウトソーシングであれコストと時間がかかりすぎる。私たちは自社の金融システム能力をこのような企業に提供したいと考えている」

Scaleがターゲットにするのは大規模ユーザーを抱え、双方向決済を必要とするプラットフォーム型企業だ。Scaleはアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を通じて企業が金融決済システムにアクセスできるようにし、企業やサプライチェーンの提携事業者を集中管理する。これにより事業者や購入者、サプライヤーなどが全て同じシステム上で代金の受け取り、両替、送金、支払いをシームレスに行うことができ、プラットフォーム全体のユーザー体験を向上させることができる。

もう一つの主力商品は、今年の春節時期にVISAと共同でリリースしたバーチャルカード「Airwallex Borderless Card」だ。企業はプラットフォーム上で必要に応じたバーチャルカードをリアルタイムに生成し、わずか数秒で世界200カ国以上のVISA加盟店に多通貨決済を行うことができる。取引記録の照会や限度額・支出の管理も可能。今年はさらにサービスを拡大し、エンドツーエンドのユーザー体験を改善し、中小企業の顧客を開拓していきたいとしている。

劉氏によると、企業向けのクロスボーダー決済は大きな成長の可能性を秘めているという。Airwallexの方向性としては、欧米市場や中東など新興市場のビジネスを開拓し、グローバル決済ネットワークの拡大を進めると同時に、ローカルウォレットやアクワイアリングなどの業務も展開し、サービスのさらなる向上を図るとのこと。
(翻訳・畠中裕子)

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