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中国証券大手「中信建投証券(CSC Financial)」(以下、中信建投)は4月21日に発表したリポートで、香港証券取引所に上場するネット専業保険「衆安在線財産保険(ZhongAn Online P&C Insurance)」(以下、衆安在線)に初めて触れ、衆安在線の企業価値を評価するロジックについて分析した。
2013年に創業された衆安在線は、IT大手のテンセント、アリババ傘下の金融子会社アント・ファイナンシャル、保険最大手の「中国平安保険」などから出資を受けている。また、ソフトバンク・ビジョン・ファンドも戦略投資家となり、同社4.99%の株式を取得したという。
中信建投は、従来型の保険会社に適用してきたバリュエーション(企業価値評価)ロジックでは衆安在線の価値を判断することはできないとした上で、IT企業に適用するバリュエーションロジックに照らせば現在の衆安在線にはまだ成長の余地があるとの見方を示した。
衆安在線は中国で初めて保険会社としての認可を受けたIT企業で、2019年度の保険料収入は総額146億2960万元(約2200億円)に上り、全国の財産保険市場で第11位、自動車保険を除くインターネット財産保険市場で前年度に続き第1位となっている。
衆安在線は昨年、同社の売上高を支える保険事業で純利益7601万元(約11億4000万円)を達成している。同社は保険事業、企業向け技術サービスを提供するテクノロジー事業、生命科学技術や仮想銀行などを含むその他事業を主要3事業としている。市場には現在のところ、衆安在線と完全に同一の事業構成モデルを持つ企業はなく、比較対象に欠けている。
中信建投はリポートで、衆安在線の保険事業はチャネルも収益化モデルも従来型の保険会社とは異なるとした上で、同社はさらに顧客を増やす余地があり、「派生サービス」も提供できることから、より高い評価額を付ける価値があるとの認識を示した。
リポートでは、衆安在線が企業向けにインシュアテック(保険技術)を提供する部門について、競合するインシュアテック企業と比較すると、衆安在線は保険業界に軸足をおいているためより多くの経験があるとした上で、国内の保険会社が自社開発したITシステムはコストパフォーマンスが著しく低いと指摘している。
中信建投証券はIT企業のバリュエーションロジックに照らし、衆安在線の株価純資産倍率(PBR)を3倍とし、6カ月後の目標株価を37.8香港ドル(約530円)に設定した。4月22日現在の株価は24.9香港ドル(約350円)で、さらに上昇の余地を残している。
衆安在線の企業評価額がさらに上昇する可能性について、中信建投は三つの重要なポイントがあるとみている。一つ目は、顧客獲得のために独自のチャネルを構築し発展させることができるか。二つ目は、閉鎖的なエコシステムを構築し、保険製品の供給や顧客サービスで顧客の定着を図れるか。三つ目は、技術的能力をあらゆる業務の基盤としながら、いかにして成熟したインシュアテック製品を外部に提供するかだとしている。
衆安在線の2019年年次報告書によると、アプリを含む自社プラットフォームによる保険料収入は10億元(約150億円)を突破したが、100億元(約1500億円)を超える同社の保険料収入の総額から見れば大きな額ではない。
衆安在線の保険商品は、健康、消費者金融、自動車、ライフスタイル消費、旅行の五つの主要カテゴリーで構成されている。個別の保険で見ると、最も保険料収入が多いのは健康保険、次いで賠償責任保険となっている。
年次報告書では、同年1月に東南アジアのO2O企業と提携を結んだことも明らかにしている。また、これに先立ち日本のSOMPOホールディングスやシンガポールの保険協同組合「NTUC Income」とも提携している。衆安在線と契約を結び、技術提供を受けている企業は、昨年12月31日時点で260社近くに上っている。
(翻訳・田村広子)
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