アリババ先端技術研究所が高精度測位システムを発表 無人物流車両の量産へさらに前進

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6月4日、アリババ傘下の先端技術開発機関「阿里達摩院(Alibaba DAMO Academy)」が、新世代の測位システムの開発に成功したと発表した。このシステムではマルチセンサー統合の密結合アルゴリズムをベースとし、GPSに頼らずにセンチメートル単位の測位が可能。同システムはすでに達摩院の無人物流車両に実装されており、ソフト・ハード統合の設計により、コストを9割減らすことができるという。

GPSシステムでは、メートル単位の測位しかできず、センチメートル単位に精度を上げるためには、RTK(リアルタイムキネマティック)技術がよく使われる。RTKでは地上に設置された基準局からの位置情報でGPSの精度を高めることができるが、通常慣性航法装置との併用が必要であり、コストが高いのが難点である。また、障害物があると衛星からの電波が不安定になることも避けられない。

この問題に対し、達摩院は密結合アルゴリズムを採用し、GPS、慣性航法装置、車輪速センサー、カメラ、LiDARなどマルチモーダルのセンサーを統合させることで、低精度のセンサーでセンチメートル単位の測位を実現した。また、GPS電波の届かないトンネルなどでも通常通りの測位が可能である。達摩院はこのアルゴリズムに適した高精度のハードをも開発している。

マルチセンサー統合による測位は、疎結合と密結合の2つが主流だ。疎結合は各センサーが一度処理したデータを統合させるもので、密結合はオリジナルのデータを統合させた上で計算するものである。後者のほうがより精度が高く、技術的に難しい。

ここ数カ月、達摩院は自動運転分野において頻繁に研究成果を発表している。4月8日、達摩院は独自開発した3Dノイズ除去技術・画像補正アルゴリズムを搭載したISP(Image Signal Processor)プロセッサを発表。夜間や高速移動中など複雑な環境において、現在の主要製品より10%以上パフォーマンスが向上するという。4月22日には、世界初の自動運転「ハイブリッド式シミュレーター」を発表した。わずか30秒で極めて複雑な環境のシミュレーションができ、1日800万キロ以上のシミュレーションが可能だ。

これらの研究成果をみる限り、アリババ傘下の物流プラットフォーム「菜鳥網絡(Cainiao Network)」の無人物流車両は、すでに量産化態勢を整えたと考えてよい。

4月18日、菜鳥網絡傘下の技術開発機関「菜鳥ET物流実験室」のアルゴリズム責任者の陳俊波氏はメディアに対し、菜鳥の無人物流車両はまもなく商用化され、年内にラストワンマイルの配送を担当することになると話した。菜鳥はすでに昨年2月から大規模な実験を始めている。20万平米近い無人車両産業パークの内部で、クラウド上で車両に指令を出し、パーク内の倉庫や仕分けセンターの間での輸送を行うものだ。

新型コロナ禍の影響もあって、EC大手「京東(JD.com)」の無人物流車両はすでに実用化され、生活関連サービスの「美団点評(Meituan Dianping)」の無人物流車両も北京市順義区で試験的運営を開始した。そこに菜鳥の無人物流車両が加われば、巨大ECプラットフォーム同士の無人物流競争が勃発するだろう。

(翻訳:小六)

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