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6月9日、アリババ・クラウドは「2020アリババ・クラウドオンラインサミット」を開催し、張建鋒(ジェフ・チャン)総裁がアリババ・クラウド(阿里雲)の3つの方向性を発表した。
まずクラウドOS「飛天(APSARA)」の強化に加えて、ハードウエアにまで拡張することで強固な基盤を作ること。次にアリババ・クラウドにオフィスツール「Dingtalk(釘釘)」などの新しい操作システムを取り込んだ「雲釘一体」サービスを提供し、ミドルオフィスの充実を図ること。そしてクラウドと新しい操作システムに基づくアプリケーションサービスのエコシステムを構築することだ。
アリババ・クラウドは、毎年上半期のサミット(通常は3月)でその年の戦略ガイダンスを発表するのが慣例だ。2019年3月、スマートクラウドの総裁になって半年足らずの張建鋒氏が「アリババ・クラウドは自身ではSaaSを行わなず、提携企業に委託する」と発言したことは、ビジネスとしてうまみのある部分を業務パートナーと分け合うことに相当し、関連企業に大きな衝撃を与えた。
しかし、アリババ・クラウドがSaaSを行わないと発言してから間もない同年6月、かつては独立した事業部だったDingtalkが、アリババ・スマートクラウドとの合併を発表した。確かにアリババ・クラウド自体はSaaSをやらないが、SaaSをやりたければアリババ・クラウド傘下のDingtalkを使えというわけだ。
今年のサミットで張総裁は、何度も「Dingtalk」に言及した。「Dingtalkはコミュニケーションツールと思われているが、Dingtalkはコミュニケーションそのものをはるかに超えている」張総裁は語る。彼はDingtalkとアリババ・クラウドの関係を従来の情報化時代のパソコン(ハッシュパワーのインフラ)とWindows(アプリケーションのプラットフォーム)にたとえることさえした。
ゲームや動画再生を動かすのはWindowsシステムだが、ゲーム画面の滑らかさや動画のクリアさは、パソコンに搭載されたグラフィックボード、サウンドカード、プロセッサーの性能で決まる。ハードウェア構成が優れていれば、アプリケーションの動作も良くなる。両者は相互に補完するのだ。
「雲釘一体」とはつまり、クラウドサーバー、チップ、データベースなどの基盤となる技術と、Dingtalkが搭載するアプリケーションが一体となって完全なソリューションを形成し、顧客に両者をセットで販売するという意味だ。
こうしたアプローチは顧客に響きやすい。あるDingtalk関係者は「現在、アリババ・クラウドは金融機関や銀行のような大口顧客にDingtalkの専用オフィスツールを提供している。顧客が望んでいるのは、手間を省けるワンストップソリューションなのだ」と語る。6月1日、「中華保険(CHINA UNITED INSURANCE)」はアリババ・クラウドと7億元(約100億円)の契約を交わした。これは、業界内で金融クラウド史上最大の受注と言われている。
Dingtalkがアリババ・クラウドの顧客獲得を促進する作用は、アリババによって徐々に実証されてきた。それもそのはず、Dingtalkは無料である上に、一般向け機能は初心者にも導入しやすくなっており、これにコロナウイルス感染症の影響が加わって、デジタル化に積極的な企業ユーザーを大量に獲得した。これは、客価格の高いアリババ・クラウドからすれば、疑いなく潜在的な顧客である。
アリババが公表している最新のデータによると、アリババ・クラウドの企業顧客は300万社、Dingtalkを使っている組織は1500万部門、ユーザー数は3億人を超えているという。
Dingtalkはアリババの企業向けエコシステムで重要性を増していくだろう。Dingtalkがライトなコミュニケーションツールとして企業に入り込み、企業内部のデジタルインフラが整った後、クラウドサーバーなどの製品やビジネスチームを売り込み、最終的に企業のニーズをまとめて受注する。
Dingtalkはシステム、そしてクラウドは土台だ。しかし、アリババが真に野心を抱いているのはデジタル経済に対してである。
張総裁は以前、3年でさらに2000億元(約3兆円)を投資すると発表したが、デジタル経済インフラについて言えば、2000億元の投資は大きな額ではなく、3年以内にもっと資金を投入するだろうと述べた。また、今年はインフラ以外に一流のテック人材の確保にも力を入れ、クラウドサーバー、ネットワーク、チップ、データベース、人工知能などのコアテクノロジー分野でさらに5000人を採用することも明らかにした。
(翻訳・永野倫子)
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