TikTokを失ったバイトダンスには何が残るのか?

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中国発の短編動画アプリTikTokについて、トランプ米大統領が米国事業の売却あるいは米国内での利用禁止措置を求めており、運営元のバイトダンス(字節跳動科技)が窮地に追い込まれている。

今月3日、米ブルームバーグは関係者からの情報を引用し、米マイクロソフトがバイトダンスのTikTok米国事業を買収する方向で両者の協議が進んでいると報じた。マイクロソフト側は、同案件が米国だけでなくカナダやニュージーランド、豪州の事業も含む可能性があると示唆している。両社が話し合いを取りまとめるまでの期間として米ホワイトハウスが与えた猶予はわずか45日間だ。

TikTokを失ったバイトダンスの評価額

バイトダンスは設立8年になる企業で、2018年11月にシリーズEで資金調達を行った際に750億ドル(約7兆9000億円)の評価額をつけた。その後も評価額は上がり続け、米ウォール・ストリート・ジャーナルによると今年7月にはセカンダリーマーケットで1500億ドル(約15兆8000億円)をつけた。上場までのカウントダウンが始まったということだ。このフェーズにまで成熟した企業の場合、投資家は売上高や利益をより重要視するようになる。

ロイター通信の報道では先月29日、マイクロソフトによる買収案が明るみに出る前、バイトダンスの一部投資家がTikTokの株を買い取ることでTikTok事業単体の評価額を500億ドル(約5兆3000億円)にまで高める計画が出ていたという。この額はTikTokの今年の売上高予想の50倍に相当するといい、逆算するとTikTokは今年、10億ドル(約1100億円)の売上高を見込んでいたことになる。一方、バイトダンス全体の今年の目標売上高は287億ドル(約3兆円)であることから、総売上高にしめるTikTokの売上高は4%にも満たない計算だ。利益の面で見ても、TikTokは海外で急速な成長段階にあったが、いまだ黒字には程遠い状況だ。

これらの点からみると、TikTokがバイトダンス全体の業績や評価額に及ぼす影響は限定的なものといえる。

とはいえ、TikTokはバイトダンスの海外事業拡張にとって目玉商品だ。ダウンロード回数は現在でも増え続けており、米調査会社Sensor Towerによると、今年上半期、TikTokは中国を除く世界各国で前年比89%増となる6億回もダウンロードされた。

36Krの取材に対し複数の投資家が、TikTokがバイトダンスから分離すれば、同社の評価額はある程度のダメージは免れないが、事業売却に成功すれば従来の予想と同等の評価額に納まるだろうとの見解を示した。中国のシンクタンク「文淵智庫」の創業者・王超氏は、世界155の国・地域で運営しているTikTokの潜在的リスクを指摘しており、TikTokに対する米国の姿勢が各国で連鎖反応を引き起こすことを懸念している。

TikTokを手放した後、バイトダンスが見出す次の価値

それでもバイトダンスは海外事業拡大に向けた決心を揺るがせてはいない。今月3日、同社は一貫してグローバル企業を目指し続けるとの決意表明をした。

海外進出を続行するなら、同社には二つの選択肢がある。

一つ目の選択肢は、リスクの少ない地域に軸足を移すことだ。欧州などはTikTokが開拓を続けられる市場の一つだろう。実際、TikTokがグローバル本社をロンドンに構える方向で検討中であることが今月3日に明らかになっている。

二つ目の選択肢は、TikTok以外の事業を海外進出させることだ。「天奇創投基金(SkyChee Ventures)」のマネジングパートナー魏武揮氏は「個人的には、バイトダンスは海外でゲーム事業を展開させるのではと考えている。ゲーム事業はマネタイズが速く、他国からの圧力も受けにくい」と述べている。Sensor Towerのデータでは、バイトダンスは昨年すでに海外市場で試験的にカジュアルゲームをローンチしている。いくつかの市場で困難に直面しているとはいえ、TikTokのダウンロード数、利用時間はともに伸び続けており、TikTokはゲームアプリを拡散するための恰好のプラットフォームであり、アプリインストール広告にも大きなポテンシャルを秘めている。

グローバル化を進めると同時に、改めて中国国内事業に重きを置くようになる可能性もある。米有料ニュースメディア「The Information」の報道によると、バイトダンスは一部の投資家に対し、今後は国内市場での成長に集中すると伝えており、新たな事業やアプリの開発を目指すという。

同社がさらなる成長を懸ける新たな事業として可能性が高いのは、「ゲーム」「Eコマース」「オンライン教育」の三つだ。

ゲーム事業に関しては、早々に他社との共同開発・配信を手がけているほか、独自の開発プロジェクトも立ち上げ済みだ。今年2月、もともと社内で戦略投資を統括していた厳授氏がゲーム事業のトップに就任し、新たにスタッフ1000人を募集する計画だという。

Eコマース事業に関しては、TikTokの中国国内版アプリ「抖音(Douyin)」のライブコマース事業を通じ、今年のGMV(流通取引総額)目標額を2000億元(約3兆400億円)と設定した。6月には正式に抖音のEコマース部門を設立している。

オンライン教育事業に関しては、今月で部門設立1周年を迎えている。教育事業を統括する陳林氏は「向こう3年は赤字だろう」としながら、全社を上げて大々的に教育事業に注力していくと表明している。K-12(幼稚園年長~高校まで)向けの教育やAIを活用した英語教育を主に手掛けていくという。

創業者の張一鳴CEOもこれまで幾度も教育事業に言及しており、オンライン教育事業における顧客獲得コストの高さは、大規模なユーザーを抱えるバイトダンスにとってむしろ有利に働くとしている。教育事業が好調ならば、再び評価額1000億ドル(約10兆6000億円)以上に返り咲くのも難しくはないと述べている。

企業調査会社「透鏡公司研究(Lens Company Research)」の創業者・況玉清氏は、バイトダンスは製品企画力に優れ、同時に収益化にも長けている企業だと評価する。前出の魏武揮氏も「張一鳴氏はまるでゴキブリのように生命力が強い。嗅覚も鋭く、統率力にも優れている」と手放しで評価する。

バイトダンスはともすると「第二のTikTok」を生み出す途上にあるのかもしれない。
(翻訳・愛玉)

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