原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録
今年6月から、中国の大手インターネット企業の海外事業が相次いで頓挫している。
まず、インド政府がアリババグループのUCブラウザー、バイトダンスのTikTok、テンセントのWeChatや微博(Weibo)など多くのアプリを「国家安全保障上の理由」により禁止した。ほどなくして、米国によるTikTok禁止令がメディアで盛んに取り上げられるようになる。
騒ぎが大きくなるにつれ、禁止令はテンセントにも飛び火した。同社SNSアプリのWeChatが米国政府のターゲットとなり、一連の報道によりテンセントの株価は一時10%下落したのだ。
テンセント幹部は8月12日の決算説明会で、米国市場がテンセントのグローバル収益に占める割合は2%未満だと語った。中国の証券会社の中には 「WeChat禁止」がテンセントに与える影響はそれほど大きくないとする見方もあるが、テンセントの株価の変動からは、市場には依然として懸念や嫌気が存在することが見て取れる。
懸念はテンセントの海外戦略の曖昧さに由来する。すなわち、外部の目にはWeChat以外にテンセントにはどんな海外事業があるのか、それがテンセントにとってどの程度重要かが不透明なのだ。
多くの人には注目されていないようだが、テンセントは早くから海外進出をしており、主力製品のWeChaはその帝国の一角に過ぎない。また、海外事業はテンセントの全体の事業発展にも大きく影響している。ただ、海外戦略では投資のウエイトが大きいことがTikTokなどとは異なる。
WeChatの海外戦略小史
テンセントの馬 化騰(ポニー・マー)CEOはかつて海外事業への希望をすべてWeChatに賭け、それを公然と表明していた。2013年には「テンセントの製品群の中でグローバル展開できるのはWeChatしかないと思う」とまで述べている。
テンセントがWeChatを重視したことは理にかなっている。2013年、設立2年のWeChatには国内ユーザー4億人と海外ユーザー1億人がいた。これによりテンセントはモバイルインターネットで勢いづき、国際化への夢を膨らませていった。
WeChatの海外進出を支援するため、テンセントは世界的に有名なサッカー選手メッシ氏をイメージキャラクターに起用したこともある。テレビ広告は15の国と地域で同時放送され、広告はモバイルやオフラインでもそこかしこで掲載された。
大金とサッカー王者まで投入したが、WeChatの海外進出はスムーズとは言えない。中国国内で人気の機能でも海外ユーザーにとっては魅力的に感じられないものがあり、進出した国それぞれでの現地化対応も必要とする。特に、当時の海外市場ではFacebook、LINE、WhatsAppなどの類似アプリがある程度シェアを固めており、そこに割り込むのも容易ではなかった。
ブルームバーグの報道によると、テンセントは2014年にWhatsAppを買収しようとしたが、交渉が最終段階に近づいた時、馬CEOは健康上の理由でシリコンバレー訪問を延期した。この時、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOがテンセントが提示した2倍近い価格で一足先にWhatsAppを買収してしまった。
WhatsAppは取り逃がしたが、中華圏ユーザの間で絶大な人気を誇るWeChatは、中国と世界の国々とつなげる「電子架け橋」となった。留学生から家族への連絡、企業の海外業務など、世界中の中国系住民が情報のやり取りにWeChatを使用しており、その重要性は世界における中国の地位の反映でもある。(翻訳・永野倫子)
世界に広がるテンセント帝国の海外戦略、投資&提携がテンセントの主戦略
原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録