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アリババのビジネスコラボツール「DingTalk」 発案者が離任しクラウド事業と融合へ

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中国IT大手アリババグループ傘下でクラウド事業などを手がける「アリババクラウド・インテリジェンス(阿里雲智慧事業群)」が27日、全スタッフ宛のメールで新戦略について通知した。ビジネス向けコラボレーションツール「DingTalk(釘釘)」を手がける事業部を「大釘釘事業部」に格上げし、DingTalk以外の複数の既存業務を包括する。また36Krの独自情報として、DingTalkの創業者兼CEOの陳航氏が離任することがわかった。内部情報によると、陳氏は今後、アリババグループCEOのダニエル・チャン(張勇)氏の補佐業務に就くという。

新しい大釘釘事業部のトップは、アリババクラウド・インテリジェンスのプレジデント、ジェフ・チャン(張建鋒)氏が兼任する。「今回のDingTalk周りの人事は『激震』といっていい」。社内からはそんな声も聞かれる。

DingTalkとは

今回行われた人事異動でも、陳航氏の離任は最も大きな衝撃だった。同氏は「DingTalkの精神」といえる人物だからだ。

2014年、アリババはテンセントの「WeChat(微信)」に対抗するSNSプロダクトとして押し出した「来往(laiwang.com)」が失敗に終わったことを認め、当時の責任者だった陳航氏はその8カ月後に企業向けインスタントメッセンジャーDingTalkを立ち上げ、再起を図った。

DingTalkのローンチ当時はアリババ社内でも評価を得られず、事業拡大の支援も受けられなかったという。当時アリババグループを率いていた創業者のジャック・マー(馬雲)氏は、陳航氏がDingTalkの直前に手がけた来往が敗北を喫したことについて「テンセントと戦ってほしかったのに、むしろ返り討ちに遭ってしまった」と酷評している。

この失敗を活かし、陳氏はDingTalkの立ち上げ時には「ユーザーの需要を理解する」ことに努めた。実際のオフィスシーンにスタッフを赴かせ、顧客企業と共にノウハウを編み出すことにしたのだ。これが代々のDingTalk製品に貫かれているプリンシプルだ。DingTalkが過去に発表した勤怠管理用のタイムレコーダーなどは、こうした方針が生んだものだという。

DingTalkが2017年に発表したタイムレコーダー

DingTalk は2015年1月に正式ローンチした。わずか160日で法人ユーザーは50万社に達し、現在では1500万の組織の3億人に利用されている。当初はインスタントメッセンジャーとしてスタートしたが、その後は人事業務関連のSaaSやスマートカスタマーセンターなどのソフトウェア製品、さらにはタイムレコーダーやルーターなどのハードウェア製品にまで拡張し、今年初めには一般消費者を対象としたコミュニケーションプラットフォームを発表、企業内のマネジメント機能に加えてカスタマーリレーションの機能も持たせた。

DingTalkの生みの親であり、今回離任が決まった陳航氏は強烈な個性を持った人物で、組織マネジメントにもそれがよく表れていたという。

「彼の身体のすべての細胞がDingTalkのために生まれた」。同氏と長年を共にしてきたDingTalkの元従業員はそう語る。

公開の場でも陳氏の個性は際立っており、押しが強く、歯に衣着せぬ発言も目立った。ライバルであるテンセントのWeChatと自身の製品を同列に語ることも辞さず、「仕事ならDingTalk、プライベートならWeChat」と幾度も強調し、さらには「WeChatを仕事に使うと集中力が削がれる」「テンセントの社員は誰も『WeChat Work(企業微信、ビジネス用WeChat)』は使っていない」などと発言して物議を醸すこともあった。

方向性の違いが顕在化

「これはやや大きく出たと感じる」。アリババクラウドとDingTalkにまつわる今回の戦略調整や陳氏の異動について、前出の元従業員はそう述べた。

アリババクラウドとDingTalkとの融合が最初に図られたのは昨年6月のことで、DingTalk事業はこの時にアリババクラウド・インテリジェンスに編入された。しかし、そこから両者の協業が進んだ形跡は見られず、多くの従業員が「両者はKPI(重要業績評価指標)も目標も違う」と語る。

こうした違いは今年5月に発表されたアリババグループの年次決算報告書にも現れている。アリババクラウドは収益を重視しており、年間売上高400億元(約6200億円)と記載されているが、DingTalkはユーザー数拡大を重視しており、ユーザー数が3億を突破したと記載されている。

アリババクラウドとDingTalkが再度融合を図るなら目下のリスクは、陳航氏を失ったDingTalkが収益を重視するアリババクラウド事業の一員となることでさらなる規模拡大が目指せるかどうかという点だ。

今年9月、アリババグループが例年開催する最大のテクノロジーイベント「雲栖大会(Apsara Conference 2020)」で、DingTalkのCEOとしては最後の出席となった陳氏は「DingTalkが中堅企業や大企業に浸透する中でさらに多くの需要を発見した。例えば、既存のクラウドソリューションをDingTalkとかけ合わせるか、あるいは生産システムと連携して協業を行うか。アリババクラウドとDingTalkの一体化は顧客にとってすべての問題を解決に導く入り口となる」と語った。

Apsara Conference 2020で。陳航氏(右)とジェフ・チャン氏(中)がメディア取材に応じた(画像提供:アリババクラウド)

両者の融合が進めば製品の位置づけや重複する業務の整理など細かな調整が必要だ。昨年初め、アリババクラウドは中国のオフィスコラボレーションツールの元祖といえる「Teambition」を完全子会社化しており、まさにDingTalkと一部機能が重複する。例えるなら、DingTalkはクラウドにおけるWindows(OS)で、TeambitionはOffice(オフィススイート)に相当する。

DingTalkとアリババクラウドの徹底的な融合は、多くのテックジャイアントがクラウドコンピューティング事業を手がける際の常とう手段だ。テンセントは2018年にWeChat Workとクラウド事業を連携させ、ファーウェイは昨年12月にWeLinkをクラウド事業の傘下に置いている。
(翻訳・愛玉)

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