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英国のフットウェアブランド「Clarks」が、まもなく香港のPEファンド「Lion Rock Capital」によって買収されるとの情報が流れている。関係者によると、今回の買収は中国のスポーツウェア大手「李寧有限公司(Li-Ning Company Limited、以下「李寧社」と略称)」が要請したもので、買収によって最もメリットを得るのは李寧社になるという。
Lion Rock Capital以外にも、英国の投資会社「OpCapita」などがClarksの買収に名乗りを上げたが、現在は欧州の小売企業の買収を手がける「Alteri investors」とLion Rock Capitalの一騎打ちの状態となっている。どちらが買収できるかは、来月に公表される。
2019年中期、李寧社はLion Rock CapitalとPEを立ち上げ、約6100万ドル(約65億円)で企業の買収や投資に乗り出した。李寧社の創業者である元体操選手の李寧氏はLion Rock Capitalの株主となり、董事長も務めている。Lion Rock Capitalはインターネット企業を中心に投資しており、投資対象にライドシェア最大手の「滴滴(DiDi)」、個人間融資仲介プラットフォームの「上海陸家嘴国際金融資産交易市場(Shanghai Lujiazui International Financial Asset Exchange)」、そしてイタリアの名門サッカークラブのインテル・ミラノなどがある。
李寧社は同業のアパレルやスポーツ用品での買収も試みてきたが、同じスポーツウェアの「安踏(ANTA)」が、国際的スポーツ用品ブランド「FILA」のグレーターチャイナ事業を買収したほどインパクトのあるものはなかった。李寧社の買収先は、卓球用品の「上海紅双喜(Double Happiness Shanghai)」、バドミントン用品の「凱勝(KASON)」など国内ブランドにとどまっている。
そのため、今回Lion Rock Capitalを通してClarksを買収することは、年初に李寧社が香港のアパレルブランド「堡獅龍(Bossini)」を買収したのに続く、アパレル業界における勢力を拡大させようとする措置だといえる。
この情報が流れると、李寧社の株価は高騰した。10月12日に4.5%上がり、終値は上場来高値の39.45香港ドル(約550円)となった。
李寧社は2011年から3年連続で売上高が下がり続けたが、2014年に創業者の李寧氏が再びトップの座に戻ってからは、6年連続の成長を記録している。2019年の営業収益は約138.7億元(約2100億円)で、2015年と比べ倍増し、株価は2015年の10倍となった。
コロナ禍で2020年第1四半期の店舗売上は大きく下がったが、李寧社の財務状況は良好であり、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)が前年で比4.1%増えた。
一方のClarksの財務状況は2014年から悪化し、2018年に赤字となり、2019年の赤字額は8290万英ポンド(約110億円)となった。そこにコロナ禍がのしかかり、今年5月には約1000人の人員削減と同時に大量閉店を発表し、デジタル・トランスフォーメーションを急ぐとした。そのために、株式譲渡で約1.5億英ポンド(約210億円)を調達しようとしている。
Lion Rock Capitalの買収が成功すれば、李寧社の運営によってClarksの運命が変わる可能性がある。李寧社の勢力もさらに広がり、多角的に発展していくだろう。
(翻訳:小六)
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