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電子機器受託生産世界最大手、富士康科技集団(フォックスコン)の親会社である「鴻海科技集団(Foxconn Technology Group)」は、10月16日にEV用のシャーシと、「MIH EVオープンプラットフォーム」を発表し、さらに2024年を目処に全固体電池を発売するとした。
鴻海科技集団の劉揚偉董事長によると、同社は現在、複数の自動車メーカーと部品提供について協議しており、約300万台のEVが鴻海のプラットフォームを使用すると見込まれるという。これまでにすでに台湾最大の自動車メーカー「裕隆汽車(Yulon Motor)」とEV製造において提携し、今年11月にはほかの自動車メーカーとのEV合弁会社を発表する予定である。
売上高の成長鈍化によるEV強化
鴻海は、2019年の売上高の伸び率が0.926%にとどまり、2018年の12.47%から大きく鈍化した。そのため、EV事業を強化することで、次なる成長軌道に乗りたいと考えている。同社は完成車生産を行わず、自社ブランドを持つ予定もなく、あくまで部品提供に徹する構えである。
鴻海と自動車産業の繋がりは2005年から始まっている。同年に台湾の自動車ワイヤーハーネス大手「安泰電業(MarkLines)」を完全子会社化した鴻海は、車載電子部品の製造を開始し、EVへの布石を打っていた。また、今年1月17日に、鴻海はフィアット・クライスラー(FCA)と新エネルギー車の合弁会社を設立する計画を発表。合弁会社における持株比率はFCAが50%、鴻海が40%以下となる。この合弁会社は2021年初頭に正式に発足する予定である。
鴻海によれば、自動車メーカーは「MIH EVオープンプラットフォーム」を使うことで、セダン、SUVなどに合わせたシャーシ、ホイールベース、バッテリーのサイズを自由に決めることができ、モジュール化された車両開発と生産が可能となる。一部のソフトウェアは今後OTA(「Over The Air」の略、無線送受信によるアップデート)することができ、新車開発に必要な時間とコストを大きく抑制することができるという。
しかし、フォルクスワーゲンのEV用プラットフォーム「MEB」に代表されるように、大手自動車メーカーは鴻海より先に同様のプラットフォームを発表している。自動車を製造したことがない鴻海が、どれだけのシェアを奪えるかは未知数だと言わざるを得ない。そもそも、2019年の世界全体のEV販売台数が200万台強しかない現状において、300万台が鴻海のプラットフォームを利用するという目標は、やや現実離れしているように見える。
全固体電池はいつ実用化できるか
全固体電池はEVの将来を左右する技術と目されている。同じバッテリー容量の場合、全固体電池は既存のリチウム電池より体積が20-30%小さく、発火、液漏れのリスクも低い。
そのため、鴻海のCPO(Chief Products Officer)であるJerry Hsiao氏は、「2025年以降、全固体電池を制する者がEVを制す」と話していた。鴻海のほか、動力電池大手の「寧徳時代(CATL)」もすでに開発に乗り出している。ほかにも、EV開発を諦めたものの、全固体電池の開発だけは継続している家電メーカーのダイソン、サムスン電子、トヨタ、フォルクスワーゲン、テスラなど、錚々たる企業が全固体電池の開発を行っている。
しかし、全固体電池はコストが高いのがネックである。今年7月、トヨタのパワートレーンカンパニーの副総裁を務める海田啓司氏は、全固体電池の実装について語るのはまだ時期尚早であり、現状では課題が多く、商用化が見通せないと話している。また、バッテリー業界の関係者によると、全固体電池の開発開始から量産化まで、通常10年以上かかるという。そのため、鴻海が掲げた2024年を目処に全固体電池を発売するという目標も、疑問符がつくものだと言わざるを得ない。
(翻訳:小六)
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