テンセントのクラウドゲーミングプラットフォーム「START」に期待 Mac対応テスト版で実力を探る

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テンセントのクラウドゲーミングプラットフォーム「START」に期待 Mac対応テスト版で実力を探る

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中国IT大手のテンセント(騰訊)が、先ごろ開催された「2020年度北京国際ゲームイノベーション会議(BIGC2020)」で、同社のクラウドゲーミングプラットフォーム「START」を搭載したスマートテレビを展示し、好評を博した。

STARTは現在、広東省や上海市、北京市など一部地域のユーザーを対象にテスト公開されている。Windows版の利用には事前のユーザー登録が必要だが、Mac版の利用には申請が必要なく、ゲームを直接ダウンロードできる。テレビ版とモバイル版の公開時期は今のところ未定となっている。

「START」公式サイトのトップページ

テンセントは中国ゲーム業界のトップ企業だ。豊富な資源と資金を背景にクラウドゲームに進出すること自体は容易だが、成功するかどうかは別問題だろう。われわれは実際にMac版のSTARTを体験し、その実力について考察してみた。

START体験リポート

体験には500MBのブロードバンドと「TP-LINK」のルーター(2600MB/s)、「MacBook Air 2018」(SSD128GB、メモリ8GB)を使用した。

STARTで現在プレイ可能なゲームは「QQ飛車(Garena Speed Drifters)」「逆戦(Assault Fire)」「保塁之夜(フォートナイト、Fortnite)」など13タイトルと多くはない。また、基本的には全てがマルチプレイヤーゲームなので、シングルプレイヤーゲームのビッグタイトルを待ち望むユーザーには物足りないかもしれない。

「START」のゲーム選択画面

一通りプレイしてみたところ、ほとんどのタイトルはSTARTから直接プレイできるが、QQ飛車、逆戦およびフォートナイトは、まずテンセントのゲーム配信プラットフォーム「WeGame」にログインする必要がある。また、フォートナイトをプレイする場合はゲームアクセラレーターを用意しなければログインすらできない。

結論から言えば、テンセントの実力をもってしても表示画面の遅延やビットレートの低さは解決できていない。ただし、STARTはまだテスト段階だ。今後リリースされる正式版では、これらの問題が解決されていることが期待される。

評価できる点は、ユーザー側の通信環境さえ整っていればネットワーク遅延はほとんどなく、ゲーム画面のフレームレートも安定していることだろう。

静止画面はまずまずの鮮明さ

実際にプレイすると、いずれのゲームでも静止画面はまずまずの鮮明さだ。しかし、ビットレートが低いため、キャラクターを動かした途端に画面がぼやけてしまう。対戦時に画面が突然フリーズし、回復したときには相手に負けているという事態も発生した。

STARTのプレイ体験は最低だったと言わざるをえない。ユーザーはクラウドゲームに対して、画面の鮮明さをさほど求めてはいない。だが、基本的な操作がスムーズに行えないのは致命的だ。

こうした問題はSTART以外のクラウドゲームでも発生しており、業界全体の課題となっている。幸いにもSTARTはまだ公開テスト中だ。改善するための時間は十分ある。

対戦時に画面がフリーズすることも

STARTの今後に期待

現段階でのプレイ体験が良いとは言えないものの、クラウドゲームに巨大なポテンシャルがあることは否定できない。本格的なAR(拡張現実)・VR(仮想現実)時代が訪れれば、パソコンなどの機器は必要なくなり、ゴーグルさえあればオンラインゲームを楽しめるようになるだろう。

テンセント傘下のクラウドサービス「テンセントクラウド(騰訊雲)」は先ごろ、動画圧縮規格「H.265」対応のハードウエアエンコーダー「瑶池(Yaochi )V500」を正式にリリースした。公式発表によると、瑶池V500はモバイル向けクラウドゲームのプレイに適している上、現在主流となっているエンコーダよりも帯域幅を15%削減することができ、ゲームの画質を向上させられるという。現時点では瑶池V500がSTARTに搭載されるかは不明だが、少なくともテンセントはSTARTのゲーム画面のぼやけや表示の遅延について解決策を講じているはずだ。

現在テスト段階にある「START」の正式リリースに向け、期待が高まっている。

(翻訳・田村広子)

作者:雷科技(Wechat ID:leitech)、雷科技インターネットチーム

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