不正レビューに手を染める中国越境EC企業。Amazonアカウント閉鎖で実態露呈

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イヤホンや充電器などスマホ向け周辺機器で人気の中国ブランドが、相次いでAmazonアカウントを閉鎖された。

電子機器メーカー「Patozon(帕拓遜)」のメインブランド「Mpow」は、5月1日のメーデーを前にアカウントを閉鎖され、商品は削除、資金も凍結された。続いて同月7日には「Aukey Technology(傲基科技)」傘下の人気ブランド「AUKEY」もアカウントを閉鎖され、全製品が削除されたのだ。

ある業界関係者は同月8日、不正レビューを投稿していた業者がレビュー1300万件分のデータを流出させたことが原因で、不正レビューを原因とするアカウント閉鎖問題が「Anker」を除く複数の大手周辺機器ブランドに波及する可能性があると指摘した。越境EC業界の構図が大きく変わるのではないかとの噂も聞こえている。

Amazonの「AUKEY」商品ページ

越境ECの「跨境通(Global Top E-Commerce)」によると、Patozonの昨年の売上高は前年比43.88パーセント増の49億4000万元(約840億円)、純利益は3億1000万元(約53億円)だった。Aukey Technologyの売上高は、2018年に50億元(約850億円)を突破。昨年は100億元(約1700億円)を超えたという。超大手ECブランドのAmazonアカウント閉鎖に、世間は騒然となった。

Aukey Technologyは5月8日、メディアの質問を受け、アカウント閉鎖の原因は現在調査中だと回答。一方のAmazonは同月12日、コンプライアンス違反があった場合は然るべき対応を取るとの公式声明を出している。

中国越境EC事業者はコンプライアンスを守れるか

越境EC分野を手がける投資家は「海外進出する中国の事業者は、その成長の過程で基本的に皆が不正レビューの投稿に手を染めている。Amazonの調査システムは高度化しているものの、不正レビューがなくなることはないだろう」と語る。業界界隈では「Amazonで売り上げの多い業者は不正レビューに、利益の多い業者は脱税に頼っている」という噂も根強い。

これまで中国の越境EC事業者は商品販売をメインとしてきたが、ブランド力が伴わない中で商品を販売する鍵は営業の手段にあった。出品アカウントの複数所有、架空注文、不正レビューおよび顧客の囲い込みは、よくある手段だ。だが、これらの手段はAmazonに詐欺行為またはコンプライアンス違反とみなされている。

Amazonというプラットフォームの仕組みは、事業者たちの目に「融通がきかず、事業者に優しくない」と映っているようだ。事業者は、顧客の囲い込みでリピート率の向上を図りたいと考えている。中国では当たり前の営業手段だが、Amazonからは明確に禁止されている。Amazonは全ての取引を同社のエコシステム内に収める方針を取っているからだ。

前出の投資家は「事業者による架空注文もある程度は理解できる。とくに、商品発売当初の架空注文や不正レビューの投稿は、中国国内で行われているランキングの不正操作と似た理屈によるものだ。しかし、商品の認知度が上がり、事業が大きく成長してからも大規模な架空注文を続けるならば、思慮に欠けていると言わざるをえない」と指摘する。

昨年以降、複数の越境EC企業が上場の動きを見せており、今年は多くの上場企業が誕生する見通しだ。Ankerは昨年8月、深圳証券取引所の新興企業向け市場「創業板(ChiNext)」に上場。越境ECに特化したファストファッションブランド「SHEIN」も、早ければ年内に米国で上場するとの情報がある。渦中のAukey Technologyも上海A株市場への上場準備中だ。

今回のAmazonアカウント閉鎖問題は、越境EC事業の不安定さと潜在的なリスクを明るみにした。不正レビューがアカウント閉鎖の原因であることが事実ならば、影響を及ぼす範囲は拡大を続けるだろう。多くの企業の上場計画が遅延または頓挫する可能性もはらんでいる。

ある越境EC企業の創業者は「7月1日以降、欧州連合(EU)加盟国では越境ECで取り扱う全ての商品が付加価値税(VAT)の対象となる。関連政策の引き締めにより、法令を順守しない事業者が成長する道はなくなる。越境ECを手がける事業者は再び試されることになる」と今後の見通しを語った。
(翻訳・田村広子)

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