【東京五輪】無観客開催で明暗分かれる日本の消費市場

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【新華社東京8月4日】日本の消費市場には「商戦」という言葉がある。東京五輪のほとんどの競技や式典が無観客開催となったことで、消費市場では事業者ごとに明暗が分かれた。何年も前から「五輪商戦」に備えてきた企業や店舗からは悲喜こもごもの声が上がっている。

日本の商戦は正月やゴールデンウイーク(GW)、夏の中元、クリスマスなど季節やイベントに合わせ次から次へと行われる。企業や店舗はその都度、消費者獲得に向けた真剣勝負を展開。今年は特別に「五輪商戦」が加わり、各事業者ともこの一戦のために何年もかけて力を蓄えてきた。

ところが、3月に海外観客の受け入れ中止が決定。ホテルやレストラン、交通、旅行分野は当初見込んでいた1500億円以上の市場を失うことになった。開会式が近づくと、今度はほとんどの競技を無観客で行うとの発表があり、大打撃を被った事業者は泣くに泣けない状況に陥った。

一方、思わぬ商機が巡ってきた業界もある。家電業界だ。東京五輪がテレビの買い替え需要を喚起することは、一部専門家の間で早くから予想されていた。2008年の世界金融危機後、当時の麻生内閣が家電エコポイント制度を打ち出し、地デジ対応テレビなどが飛ぶように売れた。日本人のテレビの平均使用年数は9.7年で、当時からちょうど10年余りが経過している。五輪イヤーとなった今年の日本のテレビ出荷台数は例年に比べ4割以上の増加が見込まれ、最終的な需要は約4千億円に上るとみられている。

無観客開催は家電業界にとって、予想外のチャンスになったといえよう。4Kテレビを購入したばかりだという東京・国分寺市の男性は、家族と自宅で出前のピザを食べながら、新しいテレビで五輪を観戦すると語った。家電量販店のビックカメラによると、7月はテレビの売上高が大きく伸び、60インチ以上の大画面テレビは約3割増となった。滑らかな映像が楽しめる有機ELテレビや生中継を録画して後でゆっくり観賞できるビデオレコーダーが人気商品となっている。

自宅観戦となったことで、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、食品デリバリーの需要も急増した。五輪開催に反対する世論の声は依然高く、大々的な宣伝は控えられたものの、開会式前夜には各スーパーやコンビニに「巣ごもり」用の食品や酒類がずらりと並んだ。デリバリー業者も需要増を見越し、事前に人手を確保した。

五輪開幕に合わせて4連休となった日本では、スーパーのいなげやで酒類の売上高が10%以上伸び、同業のサミットでは惣菜類の売上高が20%増えた。「ピザハット」や「ロイヤルホスト」などの出前の注文は30%増え、日本最大の宅配デリバリーサイト出前館は倍増となった。

五輪開幕後は、大会公式グッズや関連商品も売り上げを伸ばしている。大会スポンサーのアシックスによると、同社が開発した日本選手団の公式ウエアを目当てに東京の直営店を訪れる人の数がほぼ倍増し、予想を大きく上回った。特に東京五輪を応援する公式Tシャツが人気を博しているという。

コンビニのファミリーマートでは、店内の特設コーナーで販売するアシックスの応援グッズの売り上げが開幕前の5倍に達した。店内で応援グッズを購入していた年配の男性は、うれしそうな表情で「どれも孫たちにあげるつもりだ」と話した。

小売りやデリバリーが五輪特需の恩恵にあずかる一方、酒の卸売業者は苦境に立たされている。緊急事態宣言による飲食店の休業で、五輪が開幕しても苦しい経営状況は好転していないという。

第一生命経済研究所のエコノミスト、永濱利廣氏は、五輪の開幕以来、流通サービス分野にはっきりとした五輪特需が見られると指摘。無観客で開催する東京五輪の日本の国内総生産(GDP)押し上げ効果は3千億円程度になるとする一方、4回目の緊急事態宣言が日本経済に与える影響はそれ以上となり、GDPを7500億円程度押し下げるとの見通しを示している。(記者/劉春燕)

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