10年目迎える「双十一」:頭打ちを迎える中国EC業界、実店舗が打開策となり得るか?

中国でオンラインショッピングが普及して久しい。EC各大手が毎年11月11日に行う大々的な販促イベント「双十一」も、今年で10年目を迎える。ECの登場で中国の小売市場を取り巻く状況は大きく変化したが、最近では「オフライン(実店舗)」への回帰の流れが大きくなりつつある。

ECが迎える「限界」

過去数年、小売業者はこぞってECへ参入した。これに対し、天猫(Tmall)や淘宝(タオバオ)など既存のEC大手は、コンテンツマーケティングなどの手法でシェア確保を図った。しかし、複数のソースから得たデータを総合すると、淘宝出店者のコンバージョンレートは現在、1%にも満たない状況だ。また、微信(WeChat)などのユーザー分析を行う侯斯特の調査によると、各企業の微信公式アカウントでもコンバージョンレートは2.24%となっており、コンテンツマーケティングの難しさを物語っている。これを受けて、業界内では徐々に「オフライン回帰」の動きが表面化しつつある。

ECと実店舗の融合が必須事項に

ベンチャーキャピタル華映資本(Meridian Capital)のパートナー孫瑋氏によると、小売ブランドは売上高が4~5億元(約65~81億円)に達すると、一般的に頭打ちの時期を迎える。ECでさらに新規顧客を獲得するにはコストも相当のものになる。これは業界内でも共通認識だ。すでに実店舗経営を試験的にスタートしている抹茶菓子ブランド「関茶(matchall)」の創業者、小関氏も「実店舗における顧客獲得コストは、オンライン店舗の4分の1だ」と述べている。

実店舗では各社とも、無人店舗や宅配の無人集荷、ティッシュペーパーの無料配布、写真のプリントアウトサービスなどで顧客を呼び込むが、いずれにしても重要なのはEC(オンライン)と実店舗(オフライン)の“共同運行”だ。双方のどちらが欠けてもいけない。実店舗はユーザーエクスペリエンスにおいて大きな役割を担うが、オンラインとオフラインは徐々に融合し、現在ではその境界線は次第に曖昧になってきている。

アクセンチュアの調べでは、消費者の55%が「過去1年間でオンライン通販を利用する頻度が上がった」としているが、彼らのうち80%は同時に「実店舗でも頻繁に買い物をする」と回答している。

ECと実店舗、全く異なる運営手法

ECから実店舗運営に乗り出した企業は枚挙にいとまがないが、いずれにしても、両者の運営手法はまったく異なる。ECでの成功体験は実店舗には応用できないため、往々にして失敗に終わる。

■実店舗運営の落とし穴
実店舗の来客数を決めるのは立地だ。立地を決めてから運営コストや顧客層、取扱商品が決まる。たとえ賃料が高くても、客層を正確に掴めれば成功が見込める。ただし、店内の動線や商品陳列、空間設計から従業員の管理、サービスの質、業務マニュアル、営業許可、セキュリティ、消防など、クリアすべき問題は山積している。未経験者には相当のハードルだろう。

■看板商品の落とし穴
一つの看板商品を呼び水に集客力を高めるECの手法は、実店舗では通用しない。他社がより安価な類似商品を発売したらおしまいだからだ。前出の関茶は、ECでは特定の看板商品を強力にプッシュするが、実店舗では季節ごとに目玉商品を入れ変えて再訪率を上げ、商品単体ではなくブランドそのものの認知向上に努めているという。

多様化する実店舗展開

ECが実店舗運営に乗り出す主な理由は、利益拡大とプロダクト体験の提供だ。

ECがソーシャルを経由して行うコンテンツマーケティングは、各ユーザーの嗜好に合致したおすすめコンテンツを提供することで、商品への購買欲を掻き立てる。ユーザーはその後、実店舗を訪れ、実際にプロダクトに触れる。そして購買につながるというストーリーが描かれる。

食品に限って言えば、消費者の70%が実際の試食を経て購買を決めるという。関茶では開業初期にソーシャルで顧客を開拓し、その後ECへ戦場を移した。さらに現在は、北京市内で6店舗を運営する。カウンターのみの小規模店でも月あたりの販売額は約8万元、月あたりの来客数は約1600人となっている。開店4~6カ月で初期費用を回収できるという。

実店舗は売り手と顧客が直接交流を行える貴重な場でもある。ただし、ECの顧客を実店舗へ、実店舗の顧客をECへ誘導するのは容易ではない。実店舗は赤字の覚悟をもって参入すべきだろう。

近年では、低予算で効果の見込める期間限定のポップアップストア出店も人気の手法だ。出店する商業施設にとっても来客数増加を見込めるため、双方にとってWin-Winの企画だ。

ポップアップストアの一例。商品の陳列のみで、受注はECを経由させる

オフライン展開を希望する小規模事業者を取りまとめ、マーケット形式で各地に期間限定で出店させる業態も登場した。「伍徳吃托克(WOODSTOCK OF EATING)」は、飲食、物販、音楽、エンターテイメント、ワークショップなど多様な体験を提供する。新興ブランドの新たなプロモーション手法として人気だ。実店舗出店に係る申請手続きなどは伍徳吃托克が代行するため、出店者としては安心して気軽に参加できる。

伍徳吃托克のマーケット

また、盒馬生鮮(Hema Fresh)、超級物種(Super Species)などの次世代O2Oスーパーマーケットも、こうした新興ブランドの出店場所として注目を浴びている。

(翻訳・愛玉)

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