中国スポーツブランド「PEAK」が340億円調達 ゆとり教育や運動の習慣化政策も追い風

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中国のスポーツウェアブランド「Peak Sport Products(匹克体育、以下PEAK)」が先日、約3億ドル(約340億円)の戦略出資を受けていたことがわかった。リードインベスターは「華潤国調厦門消費基金(CR State-Regulated Xiamen Consumption Fund)」で、中国建設銀行系の「建信信託(CCB Trust)」もコ・インベスターとして出資した。

PEAKは1989年に福建省泉州市で設立され、スポーツ用の衣類や靴、アクセサリーを販売する中国では老舗のスポーツブランドだ。2009年には香港証券取引所のメインボードに上場したが、2016年11月に株式を非公開化した。

今回は株式非公開化から5年で初めての資金調達で、出資元はいずれも国有系投資機関だ。リードインベスターの華潤国調厦門消費基金は、中国政府系コングロマリット傘下の「華潤創業(China Resources Enterprise)」と「華潤資本管理(China Resources Capital Management)」、国有企業改革を目指すファンド「中国国有企業構造調整基金(China Structural Reform Fund)」などが共同で設立したファンドだ。

華潤とは小売事業でも戦略提携を行う。PEAKの許志華CEOは「チャネルで相互補完を計る以外に、PEAKとしてはオフラインで顧客へのリーチ力を高めたい」と述べている。PEAKの新店舗はすでに華潤傘下の商業施設で開店している。

PEAKのオフライン拡張戦略は一〜二級都市への全面進出を掲げており、華潤と共同で販売店「PEAK-TAICHI(匹克態極)」を前面に押し出していく計画だ。2020年7月には初店舗が瀋陽市でオープンしており、今後3年で800〜1000店を出店していくという。

PEAKのブランドイメージを押し上げたのは独自技術「TAICHI(態極)」だ。同社公式サイトによると、TAICHIは自己調整ができるよう特殊加工されたミッドソールで、2018年12月に発表されたものだ。運動状態によってクッション性や反発性が自在に変化する機能を持ち、昨年12月には超軽量化されたバージョン3.0がリリースされている。現在はバスケシューズ、ランニングシューズ、スポーツサンダルなどに幅広く使われており、スポーツサンダル類はオンライン通販の売り上げ上位にランクインしている。

TAICHIを導入した商品シリーズは累計1500万足を売り上げ、売上高は35億元(約600億円)を超えた。今後はTAICHIをより幅広い製品に活用することを目指し、着心地がよくしわになりにくいスポーツウェアに応用する試みを進めている。

許CEOによると、中国のスポーツ用品ブランドは近年、オリジナル性やファッション性、技術力により力を入れており、PEAKの場合は3〜6カ月ペースで新バージョンの商品を発表している。世界的なブランドでも一般的に商品更新ペースは2〜3年だ。

TAICHIシリーズの売上高はPEAK全体の3割以上を占めるまでになった。背景には中国の若い消費者がドメスティックブランドへの関心や支持を深めていることがある。許CEOによると、これまでは価格が購入の決定打になったが、現在の若年層は知覚品質(消費者個人が主観的に知覚する商品の魅力や品質)を重視するようになっているという。

中国ではスポーツ産業そのものが上昇傾向にある。中国国務院は8月初めに発表した「全民建身計画(2021〜2025年)」の中で、2025年までにスポーツやトレーニングを習慣化している国民の割合を38.5%に高め、スポーツ産業全体を5兆元(約86兆6700億円)規模に成長させると明記した。小中学生の学習負担軽減を目指す「双減」政策も推進されている現在、青少年にスポーツを普及していくことも重要な要素となりそうだ。

PEAKに出資した華潤国調厦門消費基金の王鑫総経理は、中国のスポーツ消費産業が新たな急成長期に入り、若年消費者が遊び心のある個性的な商品を好むようになったため、小規模でニッチなブランドが急速に台頭してきたと指摘する。一方で大手メーカーはサブブランドを設けたり、他社を買収したりしてニッチ分野にも手を広げてきているという。さまざまに異なるチャネルに適応していく能力が、今後のスポーツブランドの成長を握ると分析した。

今回の資金調達で、PEAKは再上場への伏線も敷いたようだ。36Krが関係者に取材したところ、PEAKは中国国内での上場を計画中で、来年にも上場申請書類を提出する予定だ。先立って年末ごろにもう1回資金調達を行う見込みだという。
(翻訳・愛玉)

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