マッサージロボットは巨大市場への第一歩、シンガポール企業「Ai Treat」が開発

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急速に進む高齢化を背景に、中国では伝統医学である中医学が見直されている。中でも「推拿」と呼ばれる中国式マッサージは手軽な治療法として人気だ。世界保健機関(WHO)の調べでは、中国では実に3億人が何らかの痛みを抱えているという。

需要の高まりに対して、高い技術を持った推拿の施術師は圧倒的に不足している。また、推拿は1回の施術で30分~1時間かかるため、施術師には体力も必要とされる。反面、報酬は少なく、施術師は減少の一途だ。

中医学に従事してきた張藝鐘氏によると、推拿の施術は主に二種類の技術で成り立っている。一つ目は、「どこを、どのように推すか」。二つ目は、「どのように関節を調整し、どのように整骨を施すか」だ。前者が施術全体の90%を占めるが、物理的な反復作業なので機械で代替できるという。

そこで張氏は2015年10月、シンガポールで「Ai Treat」を設立し、施術できるロボットを開発し始めた。シンガポール政府と南洋理工大学などの支援を受け、半年後にはロボット推拿師「Emma」を完成させた。人の手指の動きを模倣できるロボットで、人体のツボを探し当てることもできる。Emmaは現在、バージョン5まで進化を遂げている。

Emmaの原型

人体の軟組織を扱うため、ロボット推拿師は力を正確にコントロールしたり、部位別にアプローチを調整したり、適切な順序で施術するなどしなければならない。スピノール算法で設計されたEmmaは、3D視覚センサー、マンマシンインターフェース、ハプティクス(皮膚感覚を読み取る技術)などを駆使して、的確かつ安全に施術する。筋肉や腱の硬さを読み取り、そのデータをクラウドに転送すると、その部位に適切な圧力をAIが割り出す。また、施術後の経過をトラッキングして、施術の効果を測定する。

製品は2017年10月、シンガポールの中医学診療所に試験的に初導入された。現在、シンガポールでトップクラスの複数の中医学系医療機関とも提携交渉を進めている。

Emmaの稼働風景

商品化に当たっては、マッサージ用途と医療用途の2種類に分けた。前者は医療機器としての認証申請が不要なので、短期間で販売に漕ぎつけられる。発売は来年前半を予定している。シンガポール以外に、中国、米国でも販売予定だ。後者の医療用はさらに開発を進めて試用段階に入る。

商品は当面、リースで提供する。現在、海外向けには月額3000ドル(約34万円)としているが、中国市場向けには7500元(約12万円)とする。

AiTreatはさらに、西洋医学と融合させてリハビリ領域へ応用することを目指している。独ハノーファー医科大学の専門家と共同で、すでに欧州での臨床実験に臨んでいるという。手術支援ロボットなどと異なり、マッサージ機器は競合が存在しないため、高いポテンシャルを見込んでいる。

また、張氏は、AiTreatの将来的な用途は中国式マッサージに限られないとし、「3年間研究開発してきた結果、ソフトウェアとハードウェアの特許を多数蓄積してきた。これから、様々な用途に向けた豊富な製品ラインアップを提供する」と述べる。

AiTreatは従業員約20名。ほとんどが研究者だ。創業者兼CEOの張藝鐘氏は、シンガポール南洋理工大学で中医学と生物医学を専攻。長年、中医学に携わってきた。共同創業者兼CTOの邱晨氏は、ロンドン大学キングス・カレッジでロボット工学の博士号を取得。もう1人の共同創業者でCOOの劉凱氏は、南洋理工大学で電気電子工学の博士号を取得している。

現在、4回目の資金調達を準備中。これまでに、製薬企業「天士力グループ(TASLY)」、マッサージ機器メーカー「蒙発利(EASEPAL、現名称:奥佳華)」、米「Brain Robotics Capital」などから資金を調達している。
(翻訳・愛玉)

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