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36Krは11月27~28日、各界のリーダーや傑出した企業経営者を招き、新経済時代のイノベーションを考察するイベント「2018 WISE 新商業大会」を開催した。同大会に登壇した金星氏は、美容医療業界の注目人物だ。彼がCEOとして率いる「新氧科技(So Young)」は今年9月、シリーズEで7000万ドル(約80億円)を調達し、ユニコーン企業の仲間入りを果たした。
美容医療業界では門外漢だった金星氏が、同業界のユニコーン企業を率いるようになるまでのプロセスを、大会講演で明かした。以下はその抄訳。
「中国で美容医療市場が生まれて20年超。専門的かつ特殊な分野であるだけに、業界を改革しようにもメスを入れにくい。そのような中、2013年に創業した新氧科技は、業界がさらに成長することを目指して、5年間で3つの変革を行った」
1)顧客層の若年化
「従来はアンチエイジング目的が主流だった中国の美容医療市場。いまや主な顧客は30~35歳の女性で、この層が拡大している。当社の調べでは、今年、顧客の半数以上が1990年以降生まれの世代になった」
2)開業医の増加
「かつての美容整形医院はほとんどが大手病院の傘下にあったが、近年では高い技術を持つ医師が独立して開業するケースも多い。北京ではこの5年間で美容整形医院が倍増したという。医者が開業する際には、経営力、営業力、資金力が最大のハードルとなる。中でも多額の広告費が必要となるため、独立に踏み切れない医者も多かった。現在は、技術が確かならインターネットを通じて口コミが拡散されるので、開業するためのハードルが下がった」
3)料金の明瞭化
「以前は相場はないようなものだった。二重瞼の手術を例にとると、安ければ300元(約4900円)、高ければ20万元。料金が技術や実績に比例するのは当然だが、消費者にとっては料金の合理性を確かめる方法がない。そこで、当社のプラットフォームでは、各医院の施術料を明示するようにした。このシステムは従来、法外な価格を設定していた医院を淘汰する結果につながり、ヒアルロン酸注射の例では、この5年間で料金が約7割も下がった」
金氏は開業当初、美容医療業界の問題を理解するため、国内の医師や経営者、医薬品卸業者、韓国の医療機関や保健福祉部を訪問し、3カ月かけて実情調査を行った。産業チェーンの末端である消費者からスタートし、さまざまな場面を数十段階に分けて具体的にシミュレーションしていく作業だ。美容医療機関を利用する人は毎年何人いるのか? 彼らは公立か私立、どちらの医療機関を利用するのか? 利用する医療機関の規模は? 所在地は? その医療機関の売り上げは? 医師の給与は? 家賃は? 薬品の仕入れ額は? 広告予算は? これらを分析して得た結論は、「美容医療産業は、顧客獲得に最もコストがかかる」ということだったという。
「産業チェーン全体の中で最も資金が必要な部分が、その産業の問題点であると言える。問題だから、資金がかかるわけだ。美容医療業界における年間消費額が500億元に迫るとも言われる中、その収益が最も多く分配されるのが医師ではなく、医薬品でもなく、営業費なのだが、これはなぜか?」
「答えは、消費者が美容医療機関の広告を信用していないからだ。多額の予算を投じて広告を打っても消費者に響かず、顧客獲得につながらない。これは消費者側にとっても問題だ。何をもって医療機関を選んだら良いのか、信用できる基準が存在しないのだ」
「これが美容医療業界の悪循環となっている。多くの医療機関は目先の利益だけを見て顧客獲得に走り、持続性を考えない。顧客からお金を取れさえすれば、サービスの質は後回しで、顧客の再訪につなげることは考えない。顧客を医療機関に紹介する仲介業者も同様で、サービスの質を考慮しないため、顧客との取引は一度きりで終わってしまうケースが多い。30~50%と言われる仲介料を取れればそれでよいのだ」
「業界の10年後を考えるなら、より合理的な産業構造を構築していくべきだ。そのために重要なのは、各分野の専門家が参画し、専門分野を区分けしていくこと。また、施術体験者の評価や意見を大量に収集し、中立性が高い評価体系を構築することだ。消費者の意見を公開し、料金を透明化することについては、おそらく業界を挙げて反対の声が挙がるだろう。ただし、長い目で見れば、業界の持続性や競争力を保つには正しい方向を向かなければならない」
「農業や医療などの伝統産業でIT化を進めるのは非常に困難だ。どの業界にも長年にわたる独特の流儀があり、また多くの既得権益者がいる。打ち破るのはかなり難しい。また、IT化を進めるにあたり、専門人材が不足していることも問題だ。多くの医療機関では、専門性が高いIT人材を置いていない。地方都市の医療機関となるとなおさらだ。新氧科技はこうした各医療機関に対して、一からIT化のコンサルティングを行っている。それぞれの規模に合わせたITチームの構築を求人段階から支援し、育成するのだ。これは過去に淘宝網(タオバオ)が立ち上げた『淘宝大学』と同様の手法だ」
「一つの市場で産業インターネットを構築するには、3~5年はかかるという長期的視点で臨むほかない。地道に積み上げれば、やがてインフラができあがる。そこまで来れば、成功したも同然なのだ」
(翻訳・愛玉)
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