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中国の新興電気自動車(EV)メーカー「小鵬汽車(XPeng Motors)」は2月15日、傘下の販売会社「小鵬汽車銷售」の完全子会社として「上海鵬煦汽車銷售服務」を設立した。資本金は500万元(約9000万円)。企業情報サービス「企查查(Qichacha)」によると、新会社の事業内容は、新エネルギー車(NEV)の販売、マイクロバスのレンタル、自動車部品の卸売り、NEV向け電気部品の販売、NEV向けバッテリー交換設備の販売など、となっている。
小鵬汽車は昨年以降、中国各地で複数のバッテリー交換設備販売会社を登記しているが、現在のところバッテリー交換分野への参入を明確に表明していない。
同社はこれまで一貫して、急速充電ネットワークの整備に重点を置くと強調してきた。今年1月17日時点で、地級市(省に次ぐ行政単位)333カ所と直轄市4カ所に、計813カ所の急速充電スタンドを設置している。しかし、EV市場は拡大を続けている。 同社の出荷台数は昨年だけで10万台近くに上り、既存の急速充電スタンドだけでは顧客のニーズに応えられなくなっているのも事実だ。今年2月の春節(旧正月)休暇期間中は、同社の急速充電スタンドに最長4時間待ちの列ができたという。
充電システムの整備に迫られた小鵬汽車が、バッテリー交換市場に参入したとしても不思議ではない。
バッテリー交換方式で課題となるのは、コストの高さだろう。バッテリー交換方式を重点的に進めてきた「蔚来汽車(NIO)」を例に挙げると、バッテリー交換ステーション1カ所の建設コストは約200万元(約3600万円)を下らない。建設コストに地代や建設に関連する人件費、設備の減価償却などは含まない。竣工したバッテリー交換ステーションが800カ所近くに上ることを考えれば、同社はすでに約16億元(約290億円)を投じたことになる。資金力がなければ進められない事業だろう。
バッテリー交換方式に吹く追い風
2020年の全国両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)の「政府活動報告」には、充電スタンドとバッテリー交換ステーションがともに「新インフラ」として盛り込まれた。また、財政部など4部門はバッテリー交換方式を奨励するため、共同で「NEVの普及・活用に向けた財政補助政策の整備に関する通知」を発表している。その中で、明確にバッテリー交換方式の奨励を支持する方針を示すとともに、バッテリー交換方式を採用したEVに関しては、補助金給付の条件に販売価格30万元(約540万円)の上限を設けないことも明らかにした。
バッテリー交換に関する技術は長年かけて培われ、バッテリー交換ステーションの運営モデルも成熟しつつある。中国政府は昨年末、バッテリー交換業界に対する新基準を発表し、バッテリー交換ステーションの立地・建設・運営に関する条件を明示した。
明確な政策的サポートが加わったことで、バッテリー交換市場に新たな追い風が吹いている。すでに大手企業の参入も相次いでいる。
自動車大手「浙江吉利控股集団(Zhejiang Geely Holding Group)」は2017年、早くもバッテリー交換方式の研究・開発に取り組み始め、すでに関連特許1000件余りを取得している。同社は23年までにバッテリー交換ステーション200カ所以上の建設を目指すとともに、重慶市をバッテリー交換モデル都市とする計画だという。また、今年1月には自動車・二輪車メーカーの「力帆科技(Lifan Technology)」との共同出資で新会社「睿藍汽車」を設立。同社は今後、全く新しい「バッテリー交換式モビリティ」ブランドとして市場に参入する。
車載電池最大手の「寧徳時代新能源科技(CATL)」もすでに、バッテリー交換市場に参入している。同社の完全子会社「時代電服(CAES)」は今年1月18日、チョコレート型電池パック、急速バッテリー交換ステーションおよびアプリから成る総合ソリューションを提供するバッテリー交換サービスブランド「EVOGO」の立ち上げを発表した。
「東呉証券(SooChow Securities)」は、今年はバッテリー交換ステーション激増の年となり、バッテリー交換設備のサプライヤーが最大の受益者になるとの見方を示している。また、2025年にはバッテリー交換ステーション16000カ所が新設され、そのための投資額は6000億元(約1兆1000億円)を超えると予測している。
急速に拡大するバッテリー交換市場で、小鵬汽車もシェアの獲得を目指すことになるだろう。
作者:WeChat公式アカウント「鋒出行(ID:fengchuxing2021)
(翻訳・田村広子)
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