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中国の新興電気自動車(EV)メーカー「理想汽車(Li Auto)」が、事業内容にチップ設計を含む新会社「四川理想智動科技」を設立していたことがわかった。理想汽車が車載チップの設計に乗り出しており、将来的に自社のEVに独自チップを搭載する可能性が高い。中国の自動車専門メディア「車東西」が5月17日に報じた。
スマートカー時代を迎え、チップが自動車の中核部品となった今、自動車メーカーがまた1社、車載チップの自社開発に向けて動き出した。企業情報サイト「企査査」によると、四川理想智動科技は理想汽車の関連会社「Leading Ideal HK Limited」が100%出資し、法定代表者はGeorge Li氏、資本金は1億元(約19億円)。登記住所は四川省綿陽市高新区で、登記日は今年4月29日になっている。
しかし企業の組織構造を見ると、法定代表者も監査役もチップ開発経験者ではないため、チップの自社開発についてまだ具体的なアクションはないようだ。理想汽車がチップを自社開発するのかについて、またその進捗状況についての公式発表は、まだ先になるとみられる。
自動車メーカーが続々とチップ開発
自動車のスマート化が急速に進みチップの重要性が増すなか、チップの自社開発に踏み切るのは理想汽車が初めてではない。テスラは早くも2019年に自社製の自動運転チップをモデル3に搭載し、MobileyeやNVIDIA製チップの使用をやめて自動運転技術の完全自社開発に切り替えた。
テスラが業界に先駆けてナビゲート オン オートパイロットや信号認識などの機能を実装し、北米の都市部で自動運転レベル2を実現できたのも、自社開発チップの大きなアドバンテージがあったからこそだ。
2020年には、中国版テスラ「NIO(蔚来)」が独自の自動運転チップの開発を計画し、創業者の李斌氏が自ら推し進めていると報じられた。NIOはまた21年に、半導体メーカーXilinx(ザイリンクス)アジア・パシフィック研究室の元ディレクターで、フロントエンド設計の経験が豊富な胡成臣氏を招いている。
同じ21年、中国自動車大手「吉利汽車(Geely Automobile)」の出資する インテリジェントカー開発メーカーの「億咖通(Ecrax)」が英半導体設計大手アームの中国合弁会社と共同で「芯擎科技(Siengine)」を設立し、7nmプロセスの車載チップ「龍鷹1号」を発表した。このチップは今年中に量産を開始し、吉利汽車の車種に初めて搭載されるという。
実際のところ、中国の国産ブランド、海外ブランドを問わず、自動車メーカーにとって自社開発のチップはスマート化を進める上での重要な選択肢となっている。インテリジェント機能を実装するためには自社製のチップが不可欠だと考えるメーカーもいる。
このように考えると、理想汽車がチップ企業を設立したのも驚くことではない。理想汽車は早くから自動運転アルゴリズムの独自開発を進めてきたが、「理想ONE」の20年モデルと21年モデル、「理想L9」の3車種にはMobileye、地平線機器人(Horizon Robotics)、NVIDIAとそれぞれ異なるメーカーの自動運転チップが搭載されている。最新車種により優れたチップを搭載したいという理想汽車の意欲が明らかに見てとれる。しかも自動運転アルゴリズムの独自開発に早くから着手していたことを考えると、理想汽車がチップを独自開発するという話はいっそう現実味を帯びてくる。
作者:車東西(ID:chedongxi)、James
(翻訳・畠中裕子)
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