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中国では政府が掲げる脱炭素戦略「ダブルカーボン(双碳)」が徐々に実施され、今年は大手企業がエネルギー産業の大口顧客を獲得する動きを加速させている。
最近になってIT大手のアリババと京東集団(JDドットコム))がそれぞれ国有大手電力会社の国家電力投資集団(SPIC、以下:国家電投)と戦略的提携契約を締結した。
アリババは国家電投のデジタル化の土台となる「三網融合」を構築するほか、農村部での次世代エネルギー開発・利用、データセンター、ニューリテール(新小売)、物流、オフィスエリアなどで業務提携していく。
京東はサプライチェーンや物流などの分野により集中して業務提携する。県域総合エネルギー、物資調達、スマート物流、エネルギー供給、カーボンニュートラル計画、産業エコシステムなどを含む総合的なエネルギーエコシステムの共同構築やサプライチェーンのインテリジェントトランスフォーメーション(AIなどの高度なテクノロジーを活用した改革)を進めていく。
国家電投が今回、アリババや京東との間で取り決めた提携は間違いなく重大案件であり、その背景には国家電投が近年、デジタル化やエネルギー管理方法の転換に取り組んできたことがある。
中国は2020年9月、30年までにカーボンピークアウト(二酸化炭素の排出量ピーク超え)、60年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量と削減量を差し引きゼロにする)を達成することを目指す「3060」ダブルカーボン戦略を発表した。同戦略は、まず石油や電力などエネルギー多消費型産業の大企業に排出削減の重要任務を課している。
国家電投は原子力発電所の開発・建設や運営を手がける中国の三大電力会社の一つであり、中国で唯一、水力発電、火力発電、原子力発電、新エネルギーなど電力エネルギー全般を手がける中央企業(政府直轄の国有企業)だ。国家電投もダブルカーボン戦略に則って、23年までのカーボンピークアウト達成を宣言している。
国家電投のデジタル化は急速に進んでいる。21年3月にはエネルギーネットワーク・行政ネットワーク・コミュニティネットワークの3つの「網」を結びつける「三網融合」を目的に、総合スマートエネルギー管理・サービスプラットフォーム「天枢一号」を打ち出した。
天枢一号の総合スマートエネルギー開発プロジェクトはすでに230県域をカバーし、第1弾として10のパイロットプロジェクトを始動させている。国家電投は6月中旬、3億元(約60億円)に上るデジタル化プロジェクトをアリババと京東が落札したと発表。2社は天枢一号プロジェクトのほか、産業用IoTプラットフォーム「天枢雲」や国家電投のプライベートクラウド「電投雲」などのプロジェクトを手がけていくとした。
インターネット企業も昨年からダブルカーボンの潮流に積極的に乗っかっている。相次いでカーボンニュートラルに関するレポートや行動計画を発表し、脱炭素に対する決意を表明するとともに、社外に技術力をアピールしてさまざまな業界で新たなビジネスチャンスをつかもうとしている。
アリババも昨年、カーボンニュートラルに関する行動計画を発表している。その中で30年には自社でカーボンニュートラルを達成し、バリューチェーンの川上・川下企業でも二酸化炭素排出量を半減させるとした。これ以外にも、向こう15年で自社のエコシステムからの二酸化炭素排出量を15億トン削減させるという。
今年に入ってアリババ、テンセント、京東などの企業はいずれもエネルギー関連のソリューションを打ち出している。
アリババクラウドは2月にSaaS「能耗宝」をリリースし、顧客が事業活動や製品を通じて排出した二酸化炭素の計測・分析・管理を行うバックアップをしている。すでに2000社以上がこのサービスを利用しているという。
京東は自社で有する物流やサプライチェーンのインフラを強みに、太陽光発電や充電スタンドなどの分野で新事業を模索。発電量が世界最大のルーフ設置型太陽光発電のエコシステム構築をパートナーとともに進めていくと発表している。自社で建てたスマート物流・産業パーク「亜洲一号」でも太陽光エネルギーを急速に取り入れており、太陽光発電装置の搭載量は21年末時点で200兆ワットに、年間発電量は1億6000万kWh以上に達したと予想される。
各インターネット企業はエネルギー業界の大口顧客獲得を加速させ、影響力強化を図っている。最近ではテンセントが独自に開発したエネルギー関連のプロダクトを2つリリースすると発表した。今年はすでに国有送電最大手の国家電網(ステートグリッド)、国有鉄鋼最大手の中国宝武鋼鉄集団(China Baowu Steel)、国家電投などの大企業を顧客としている。
(翻訳・山下にか)
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