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中国はあらゆる物を宅配してもらえる「デリバリー大国」だが、こうした環境で育った若い中国人は、海外留学先で不便を感じることもあるようだ。
中国に比べ、アメリカではそれほどフードデリバリーのサービスが根付いていない。UberEatsやGrubhubなどの新興事業者は多いが、それらに登録されている中華レストランの数は少ない。こうしたニーズに応え、現地在住の中国人向けに生活関連サービスを展開する企業がある。2013年末に創業した「Gesso」だ。
Gessoは飲食店からのフードデリバリーを中核事業に、生鮮食品の配送や中華系スーパーからの商品配送、さらに市内当日配送を謳う物流サービスを展開しており、これまではロサンゼルス周辺で営業していたが、4月からはフェニックス(アリゾナ州)でもサービスを提供している。今後はラスベガス、シカゴ、ボストンなどへサービスエリアを拡大していく予定だ。
注文はアプリやミニプログラムで行う。5マイル以内の配送は無料で、5マイル以上の場合は3ドル(約330円)の基本料金に加えて、1マイルにつき1ドル(約110円)が徴収される。
一見、高くはない配送料だが、実際に利用してみると事情は異なる。ロサンゼルス周辺は広大な土地に人口が分散しており、配送距離がかなり長くなることもあるのだ。料理をもう一品余分にオーダーしたのと同等の料金がかかる場合もある。
CEOの孫隣家氏によると、ロサンゼルス周辺地域のガソリン代や人件費を考慮すると、配送料の値下げはそう簡単ではない。当面の解決方法としては、会社や学校などの組織単位で受注することしかない。
36Krが、ロサンゼルス周辺の中華系飲食店取材したところ、以下のようなことが明らかになった。中にはデリバリーサービスへの参入に及び腰の店舗もある。その理由として、中華料理には揚げ物や汁気の多い料理が多く、配送の途中で中身が沁みたり漏れたりするトラブルが多いことや、冷めると味の落ちる料理が多いことが挙がった。また、多くの飲食店は運営が順調で、イートイン客に対応するだけで精いっぱいだという声もあった。
これらの声に対し、孫CEOは配送体制の効率化や独自の包装形態で対応していると語った。
配送体制に関しては、これまでは客からの受注後に配送員が店舗へ向かい、客のオーダーを伝えていたが、現在は客から店舗側へ直接オーダー内容が流れる仕組みになっている。これまでは遅配も頻発していたが、現在は5マイル以内は1時間、10マイル以内は1時間半で配達しており、遅配は3%以下に抑えてられている。
包装形態に関しては、保温機能や仕切りを備えた専用の配送ボックスを採用している。さらに、これまでは店舗側から受注額の10%を利用料として徴収していたが、一律1ドルに改定した。
現在、Gessoに加入している飲食店は1000店以上に上る。そのうちの8割以上が中華系レストランだ。頻繁に稼働している中華系飲食店はおよそ200店だという。中でも人気のある飲食店は、月あたりの受注額が1万4000ドル(約155万円)を超えている。
登録している配送員は300人以上に上る。彼らの収入は、配送料から一定の割合で支払われる報酬と、客から受け取るチップだ。97%の客がチップを支払っており、その平均額は13ドル(約1400円)だ。ただし、ガソリン代は配送員の自己負担となる。
Gessoの収益源はフードデリバリーの利用料とアプリ内の広告料だ。孫CEOによると、2018年の流通総額(GMV)は2000万ドル(約22億円)で、月間アクティブユーザー(MAU)は3万人に上る。今年2月に黒字に転じたという。
自社で決済システムや物流システムを擁するほか、北米でアジア食品・雑貨を販売するオンラインショップ「亜米網(Yamibuy)」と提携し、ロサンゼルス地区での配送業務を請け負っている。
Gessoでは、今年は主力のフードデリバリー以外に生鮮食品やスーパーからの配送にも注力する。中国系の小売店ではオンライン化があまり進んでいないため、ここを掘り起こせば大きな商機になると見込んでいる。
孫CEOは2012年にコンビニチェーン「隣家舗子(LIN JIA PU ZI)」、2015年に訪問型美容サービス「易美佳人(EM BEAUTY)」の創業に参画し、2017年に車両物流プラットフォーム「闖客行(TRUCALL)」でCOOを務めている。その他の創業メンバーは1990年代生まれが主で、米国の名門大学でMBAなどを取得後、O2Oやモバイルインターネット分野での豊富な起業経験を持つ。
(翻訳・愛玉)
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