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中国EC大手の「京東集団(JD.com)」は先月10日に発表した2019年第1四半期(1~3月)決算報告書の中で、傘下の医薬品小売、医薬品卸売、インターネット医療、健康都市などの部門を統合し、「京東健康」グループを設立する方針を明らかにした。その前日には、京東健康のシリーズA優先株式による資金調達をめぐり、「CPEChina Fund」、「中金資本(CICC Capital)」、「覇菱亜州(Baring Private Equity)」などと最終合意に達している。京東健康は10億ドル(約1080億円)以上の資金を調達する予定で、完了後も引き続き京東集団が支配株主になるとみられる。
京東の医療関連部門、全体図は「スマイルカーブ」
京東集団の医療関連部門を大きく分けると、直営の医薬品販売サイト「京東大薬房(pharmacy.jd)」とモール型ECサイト、オンライン診療サービスの「京東互聯網医院(JD Online Healthcare)」、医薬品B2Bサイト「京東医薬(薬京採)(YAO.JD.COM)」、スマート医療(医療ビッグデータと医療AI)の4つだ。
同社が手がける医療サービスをまとめると「スマイルカーブ」の形になる。京東互聯網医院を診療サービスの入口とし、オンライン診療で対応できない場合は、受付・予約機能により、患者が症状に合った医師を見つけ出し、対面診療を受けることをサポートする。また、医療保険システムとの接続後は、オンラインで医療保険を使った支払いができるようになるという。つまり、同社は診察前、診察中、診察後の全過程に対する一貫したサービスを提供することが可能だ。
京東の医療分野における強みとは
インターネット界の巨頭、「BAT」(バイドゥ、アリババ、テンセント)も以前から医療分野での取り組みを進めており、各社とも医療分野に高い期待を寄せ、力を入れている。展開する事業も重複する中、京東の強みはどこにあるのか。
京東の医療サービスの根底はやはりECと物流だろう。医薬品電子商取引業者として、多くの優良業者と商品を統合したほか、物流サービスの「京東物流(JD Logistics)」を他社も利用できるようにしたことで、医薬品サプライチェーンにおいて力を発揮し続けている。財務資料によると、2019年3月末時点で同社と提携する医薬品チェーンストアは400数社、医薬品のオンラインショップは2万店を超えている。
一方、BATに比べると弱点も目立つ。業務内容が乏しいほか、医療サービス分野への進出でもやや遅れをとった。京東が医療に関する全体の流れをカバーできるようになったのは、2017年8月に京東互聯網医院を立ち上げてからだ。ただ、2019年1月時点のデータによると、京東互聯網医院はすでに専門家8万人以上、医師20万人以上と連携しており、有料問診件数は毎月100%以上増加していることから、同社の弱点も徐々に改善されつつあることがわかる。
好材料は国が「インターネット病院」の発展に力を入れていることだ。中国の病院等級の最高クラスである「三級甲等」の大病院も次々に参入し、政策、審査、監督などに関する措置も整備された。このほか、病状別診療と医薬分業に関する一連の国家政策に基づき、関係当局は今後、病院等級が二級以上の病院によるオンラインサービス、三級の病院による院内での情報共有などの実現に注力するとみられている。
京東健康がこうした環境下で関連業務を進めていくにつれ、同社のサプライチェーン周辺では協力パートナーがますます増えていくだろう。また、京東はすでに医薬品小売分野でユーザーから一定の認知を得ているのに加え、プラットフォームの集客力における優位性もあることから、オンライン診療サービスに関連する周辺事業も急速に発展する可能性がある。
(翻訳・池田晃子)
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