視覚障害、「脳テック」活用し改善に取り組む。中国スタートアップ、資金調達し巨大市場に挑む

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脳科学をテクノロジーに活用する「ブレインテック」から医療にアプローチする中国スタートアップ企業「覚華医療科技(Juehua Medical Technology)」が、エンジェルラウンドで「線性資本(Linear Capital)」から数千万元(数億〜十数億円)を調達した。

覚華医療科技は視覚の健康に特化するブレインテック医療企業で、脳科学の原理に基づいて視覚機能を検査・測定し、機能を向上させる技術を研究している。さらに、これに関連する「デジタルメディスン(デジタル薬)」の開発・生産・販売も手がけ、後続のデータマイニングや技術サービスも提供する。

紹介によると、同社の刁青松CEOは共同創業者の黄昌兵氏と大学の同窓生で、医療分野の商業化に20年以上従事し、黄氏は研究者として20年以上のキャリアを積んできた。同社はさらに検眼医学・脳科学・認知神経科学などの分野で世界的に有名な呂忠林教授を主席科学顧問として迎えている。

同社は中核的な技術システムとして「iVAT(Individualized and Adaptive Vision Training、個別化および自己適応が可能な視覚機能トレーニング)」を確立済みで、国内外での特許出願・取得が進んでいる。刁CEOによると、iAVTには精密な測定・個別化ソリューション・自己適応可能なトレーニング・効果保障のための4つの技術が集積している。つまり、各患者や個人の視覚機能を精密に測定し、損傷の生じている箇所を検出して、個々の損傷のメカニズムに応じて個別に視覚訓練のソリューションを策定する。訓練や治療の過程でもその時々の変化に応じてソリューションにも変更を加え、確実な治療効果を上げる。

将来的には視野欠損(視覚中枢の損傷や緑内障などを含む)や低視力(白内障などを含む)までパイプラインを広げ、視覚の健康の検査・監視・予測・治療・リハビリ・予防を一体化した「デジタルメディスン」を手がけていく計画だ。

刁CEOによると、この「デジタルメディスン」というのはデジタルセラピューティクス(デジタル治療)の範疇に含まれるものであり、治療期間、有効成分、用量、治療効果、適応症の区分などに明確な条件が求められるものだという。

同社の製品はこれまでに温州医科大学付属眼視光医院、中国障害者補装具センター、通信機器大手のファーウェイ(華為技術)、中国標準化研究院(CNIS)などの顧客に認められ、使用されている。一部の顧客とはすでに長期的な戦略的提携関係を結んでいる。

市場の需要側を見てみると、視覚の健康が重要であることは言うまでもない。視覚はヒトにとって主要な感覚情報源(80%以上)だが、視覚に健康問題を抱える人々は非常に多い。世界保健機関(WHO)の統計では、視覚の健康問題はがんや心血管疾患と並んでヒトのQOL(生活の質)に深刻な影響を与える三大疾患となっている。WHOのデータでは、世界では22億人以上、中国では5億人以上が視覚障害を持つという。

刁CEOは「弱視を例に取ると、中国での有病率はおよそ3%(4200万人)だ。そのうち50%が治療を受けるとして、平均治療費が5000〜1万元(約9万7000〜19万3000円)と仮定すると、弱視治療は1000億元(約1兆9300億円)以上の市場になる」と述べる。

供給側を見ると、現行のソリューションは主に投薬、手術などに集中し、視覚の健康に関わる多くの問題は解決が難しい。ヒトの視覚システムは眼と脳(視覚野)の2つのパートで構成されている。現在の臨床医学で採用されている技術的手段は主に眼をターゲットにしており、老化や脳が原因で発生する多くの問題や弱視などの疾病は解消できない。

この空白部分を埋めるべく、覚華医療科技は視覚システムのバックヤードとも言える脳の視覚野に注目し、ブレインテックや視覚科学、眼科学、AI技術を駆使して大脳の可塑性をじっくり開発し効果的に利用。欠損あるいは退化した視覚機能を精密に評価し、効果的に回復させることで臨床的な問題点を解決する。

(翻訳・山下にか)

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