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シェアサイクル事業などを展開する中国のモビリティ企業「永安行科技(Youon Technology)」が3月18日、太陽エネルギーから水素を製造しボンベ充填までを完了する世界初の一体型装置を発表した。この装置には太陽光を利用して水を電気分解し、水素を生成する技術が使われている。家庭で水素を生成・充填できる技術が試行段階に入ったことになり、燃料電池搭載の電動自転車など水素を動力とする製品を使う際の不便さを解決することになりそうだ。
永安行が今回発表した水素製造・充填装置は注水口、電解槽、水素・水分離器、水素貯蔵ボンベなどで構成され、クリーンエネルギーを利用した水素製造と、ボンベへの充填プロセスを一本化した。
同社の孫継勝会長は「この装置に注入された水は電解槽で水素と酸素に分解され、水素と水を分離してグリーン水素(クリーンエネルギーを用いて発生させた水素)を取り出す。最後に低圧自動充填システムを経てボンベに詰められ、家庭で水素を製造・充填する仕組みができあがった」と説明する。
永安行の水素製造・充填装置のセールスポイントは、必要な時すぐに製造して充填でき、一般家庭での使用に適していることと、製造コストが比較的低いことだ。発表会では実際に水素を製造する過程も披露された。スタッフが200ミリリットルの水を装置に注ぎ入れると太陽光パネルが作動しはじめ、水素量を示す液晶パネルの数字がみるみる上昇した。
この装置が製造する水素の純度は99.99%以上で、200ミリリットルの水から燃料電池自転車が40キロ走れる量に相当する200リットルの水素をわずか5時間で生成する。
孫会長の説明によると、この装置の体積は約0.04立方メートル。デスクトップパソコンの本体ほどの大きさだ。家やオフィスにも置きやすく、水素エネルギーが生活にもたらす利便性を気軽に体験できる。
製品の性能に関しては、「分散型デジタル水素エネルギーシステム」を用いて、一般消費者が自分で水素を製造・充填する際の難点を克服している。水素貯蔵ボンベなどあらゆる水素エネルギー製品に小型の低圧水素貯蔵技術を採用し、衝撃や燃焼などに対する耐久試験を幾度も実施して安全性も確認した。消費者に安全なソリューションを提供すると同時に、自宅内で電動自転車を充電できない消費者にも使いやすい仕様になっている。
永安行は環境にやさしいシェアサイクルのプラットフォームを主体としながら水素エネルギー産業にも注力し続ける上場企業だ。近年はクリーンで持続可能性のある「太陽光と水だけでつくれる水素エネルギー」をビジョンに掲げ、燃料電池自転車や燃料電池などの製品を相次いで開発・製造している。
2022年9月には中国初のコンシューマー向け燃料電池自転車を発表した。低圧水素充填や水素ボンベ交換の技術を取り入れて、ユーザーにカーボンフリーの移動手段を提供できるようになった。現在は上海市と江蘇省常州市でシェアサイクルサービスを展開しており、家庭用燃料電池自転車「Alpha」シリーズのデラックス版をリリース後、今年は折りたたみ式の「Beta」シリーズ、ミニタイプのマウンテンバイク「Gamma」シリーズを発表している。
孫会長は水素エネルギーのこれからについて語った際、エネルギー貯蔵と燃料電池の2つの役割を兼ね備えた水素エネルギーが、将来的には究極のエネルギーになるとの見方を示した。しかし水素エネルギーが大規模に利用されるようになるうえで、製造コストがカギになるという。
太陽光発電で得た電力で水素を発生させる技術では、太陽光発電のコストが大きく関係してくる。「太陽光発電コストは3〜5年後には1キロワット時あたり0.05元(約1円)にまで下がると予想され、その場合は水素製造コストは1ノルマル立方メートルあたり0.15元(約3円)、あるいはそれよりも安くなる。燃料電池の技術が改良を重ねれば早くて5年、遅くとも10年後には燃料電池のコストはディーゼル発電機と同等かそれ以下にまで下がる。そのころには燃料電池が完全にディーゼル発電機に取って代わり、乗用車分野でより幅広く取り入れられるようになるだろう」と孫会長は述べる。
同社は北京市、上海市、長江デルタの都市群、珠江デルタの都市群、四川省成都市・重慶市一帯の都市群、華中エリアの都市群などに技術サービスセンターを設けており、今後は英国、ドイツ、日本などでも技術サービスセンターを設立していく方針だ。
(翻訳・山下にか)
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