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これまで「日本風」を装っていた中国ブランドが、徐々に日本要素を脱ぎ捨てている。
「ニセ日本ブランド」の話題で必ず名前が挙がるのが、無印良品やユニクロに酷似していることで知られる中国雑貨チェーン「メイソウ(名創優品、MINISO)」だ。
中国消費者からの強い反発を受け、メイソウはグローバル展開を進めた2015年末から18年にかけて「日本人デザイナーのブランド」を売りに宣伝活動してしまったことを認め、店舗入口や商品タグ、広告などから日本要素を完全に取り去る作業を23年3月末までに完了させると発表した。中国にある店舗のロゴは、21年10月以降「メイソウ」から中国語に順次変更されている。
同様の路線変更は、人気ティードリンクブランド「奈雪的茶」でも見られる。2022年12月に、ブランドの英語名を日本語読みの「NAYUKI」から中国語読みの「NAIXUE」に変更、ロゴも「奈雪の茶」から「奈雪的茶」に改めた。創業者は最近の講演のなかで、民族としての自負はブランドに欠かせないものであり、奈雪は今後も中国要素を取り入れた「国潮」を貫くと表明した。
中国の無糖飲料ブランド最大手「元気森林(GENKI FOREST)」は早くも2020年に、公式サイトやオンライン旗艦店のロゴに使われている「気」の文字を、日本の漢字から中国語簡体字にひっそりと戻した。それまでボトルにプリントされていた「日本の株式会社元気森林 監修」の文字もすでに消えている。
中国文化にアイデンティティーを見いだす
2014年頃の中国では、北欧や日本の美的センスやライフスタイルブランドがもてはやされ、一大ブームとなった。こうした流れのなか、市場を拡大するために「高品質の商品を提供する」ことに重点を置いた中国ブランドがある一方で、一部ブランドは日本文化を借用するという近道を見つけ出した。
パッケージに「の」などの日本語を使ったり、遠回しに「日本発」をほのめかしたり、ブランドコンセプトからデザインに至るまで日本ブランドに似せたりするなど、日本と関わりが深そうな中国ブランドが続々と登場するようになった。メイソウが誕生したのも、中国で絶大な人気を誇る無印良品やユニクロにあやかってのことだ。
それから時は流れ、「ゲームのルール」は変化してきた。
そのことを印象づけたのが、2018年のニューヨーク、パリ・ファッションウィークだ。中国のスポーツブランド「李寧(LI-NING)」が初めてショーに参加し、世界の注目を浴びた。中国製品が存在感を増し、市場の評価や消費者の志向が逆転したことで、外国風を装う必然性がなくなった。
若い消費者の意識の変化に機敏に反応したのが奈雪的茶だ。ブランド誕生7周年を迎えた2022年12月にロゴを変更、これを機に国内ブランドとのコラボ、商品開発、創業者の講演などさまざまな分野で、中国的な要素を全面的に取り入れていく姿勢をはっきりと打ち出した。この一連の動きから、中国テイストを好む新たな消費者の心に訴えて、ブランドの情緒的価値を高めようとしていることが見てとれる。
米国も日本も、すべては模倣から始まった
世界的ブランドの歴史を振り返ってみても、新たなビジネスのきっかけになったのは多くの場合、模倣だった。
今や押しも押されもせぬ人気を誇る米国ブランドも、模倣から始まっている。「手の届く高級ブランド」として多くの人から支持される「COACH」は、イタリアの高級ブランド「GUCCI」のGG柄に似せたデザインを採用し、ブランドロゴの馬車モチーフも、高級馬具メーカーとして始まったハイブランド「HERMES」を彷彿とさせる。
現在では世界から高い評価を得ている日本のものづくりの歴史も、同じく模倣や改良からイノベーションに至る典型的な段階を踏んできた。その後「メード・イン・ジャパン」は世界を舞台に次々と伝説を生み出し、諸外国にとっての研究対象となった。
フランスの社会学者ボードリヤールは著書「消費社会の神話と構造」の中で、現代社会ではモノが使用価値に基づいて消費されるのではなく、社会的な記号として消費されるようになると指摘した。
歴史的に見ると、中国ブランドは「物質的な基盤固め」から「文化的自信の構築」段階へと進化してきた。ここ数年、中国ブランドも高品質の商品を生産できるようになったが、世界の舞台で戦えるほどの底力はなかった。しかし国潮ブームの盛り上がりと共に、ナショナリズムが中国の消費文化に深く浸透し、中国ブランドが少しずつアイデンティティーを取り戻している。
模倣からイノベーションへと進む次のステップでは、中国ブランドが自国文化に回帰し、海外に向けて独創的な発信をするという新たなプロセスが始まることになる。その先にはきっと明るい未来が待っているはずだ。
作者:WeChat公式アカウント「刀法研究所(ID:DigipontClub)、隠城
(翻訳・畠中裕子)
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