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動画投稿SNSアプリ「抖音(Tiktok)」上の売上王と言えば、99%の人が李佳琦氏(リージャーチ)を思い出すだろう。しかし、「淘宝(タオバオ)」のデータでは、今年の「618セール」期間中には、「正善牛肉哥(正善牛肉おじさん)」による売上がが李佳琦氏を超えて抖音で第1位、抖音(Tiktok)、中国最大のSNS「微博(weibo)」、動画投稿SNSアプリ「快手(Kuaishou)」などタオバオ以外のインターネット全体では第3位に輝いたのだ。たった300万人強のファンしかない彼だが、618の期間中ワイン100万本、ビール10万ケース、ステーキ20万枚を売り上げた。中でもワインとステーキはいずれも淘宝のPB商品だ。
このような大量の売り上げはどのように達成したのだろうか。36Krは「正善牛肉哥」の背後の仕掛人食肉販売企業「正善食品(ZHENG SHAN FOOD)」に話を聞いた。
目玉商品はステーキとワイン
多くのインフルエンサーが激しく競い合う女性のコスメ、ファッション等の業界と異なり、男性顧客をターゲットにする生鮮食材市場はブルーオーシャンだ。正善はその中からステーキとワインを目玉商品として選び、販売に力を入れた。なぜなら、これらは社交性とステータスのシンボルであり、本質的にいずれも購入リピート性が高い贅沢品なのに、市場ではまだ有力なブランドが形成されていないからだ。
「メーカー直輸入で最低価格だ」
「メーカー直輸入で最低価格だ」は「牛肉哥」が動画で最もよく口にするキャッチコピーだ。
ワインについていえば、正善はスペインのトップ3のワイナリーと独占販売契約を結んでいる。欧州のワイナリーの多くは政府から多額の補助金を受けているため価格が低い。しかも、ワイン造りが欧州で最高のコストパフォーマンスを誇るスペインは世界有数のワイン流通市場である。
牛肉についていえば、正善は「スーパーサプライチェーン」と言われる国内の経験豊富な牛肉輸入業者と提携している。牛肉輸入の規則は必ず全頭輸入することだが、国内の多くのサプライヤーは全頭牛の販売能力を持っておらず、市場で売れにくい部位を消化するチャネルを必要としていた。正善はその点を利用して価格をさらに値下げするように交渉することができたのだ。
「サプライチェーンの可視化」と繰り返し投稿
CEOの李荣鑫氏によれば、「牛肉おじさん」の動画の多くはスペインのワイナリーで撮影され、サプライチェーンを紹介するコンテンツであるという。一言で言えば、「サプライチェーンの可視化」で消費者に信頼感を持たせるのだ。
配信に関しては、細部までこだわって作成されたコンテンツが連続して繰り返して投稿される。例えば、昨年の「双十一節(11月11日のECの販売キャンペーン)」までの20日間はワイン「魔力風車(Los Mollinos)」の産地紹介、価格交渉、製造現場などの動画が毎日数十本ずつ配信されていた。それには、潜在的な消費者を増やすと同時に商品の印象を強めるという狙いがあった。
「如涵(RUHN)」との相違点
しかし正善の野心はワインと牛肉にとどまらない。牛肉おじさんのほか、正善は新たに4名のKOLと契約した。今年は食品分野にフォーカスしている30名との契約を予定している。こうしてみると正善は最終的に、インフルエンサーを活用する「如涵(RUHN)」のグルメ版を目指しているのかもしれない。サプライチェーンを片手に、もう片方の手でKOLをインキュベートするのだ。しかしその如涵は上場後株価が振るわない状態だ。その大きな原因は人気インフルエンサー張大奕氏に過度に依存するビジネスモデルにある。しかし、正善でも今後起こりうる同様の問題について、李栄鑫氏は全く心配していないようだ。
なぜなら、正善の強みはインフルエンサーの背後にある質の高いサプライチェーンにあるからだ。インフルエンサーがもたらした全てのトラフィックは最終的に正善自社の淘宝ショップに流れ込み、正善ブランドの知名度の大幅アップにつながる。正善のファンが追いかけるのはインフルエンサーではなく、インフルエンサーが紹介しているコストパフォーマンスの高い商品だ。その商品に関連するサプライチェーンのリソースは常に会社が握っているため、一人のKOLに依存しすぎるという事態は避けられる。
会社業績については、昨年のGMV(総流通総額)はおよそ1.3億元(約20億4000万円)、純利益率は10%前後。今年のGMVは4億元(約63億円)に達する見込みだ。Eコマースだけではなく、正善はすでに実店舗の展開も手掛けている。フランチャイズ方式で「正善超級肉舗」6店舗を上海、福州、嘉興などの都市に出店している。
関係筋によれば、正善は現在シリーズAで約3000万元(約4億7000万円)の資金調達を計画しているという。
(翻訳・桃紅柳緑)
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