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AIの第一人者で米メタ(Meta)のチーフサイエンティストでもあるヤン・ルカン氏が人工知能の脅威をテーマとした公開討論会に登壇し、「5年後には誰もChatGPTを使っていないだろう」と再びChatGPTを痛烈に批判した。
この大胆な予想はたちまち大きな注目を集めた。
ルカン氏がChatGPTを非難するのは今回が初めてではない。まず技術面で特に革新的なところがないという理由でChatGPTに懐疑的な立場を取っている。他の企業も同様の技術を持っており、ChatGPTを開発したOpenAIが特に先進的というわけではなく、単に技術を上手く組み合わせたに過ぎないというのがその考えだ。
あまりに大きな反響があったためかルカン氏は後日、自身の発言を釈明している。OpenAIを批判しているのではないこと、ChatGPTは信じられないほど革新的なもので他社サービスを凌駕しているという世間やメディアの捉え方を正したいだけだとし、ChatGPTの基盤技術を誇張したり喧伝したりしてほしくないことを表明した。
ルカン氏の考えでは、大規模言語モデルで訓練されたAIシステムは純粋にテキストによってのみ訓練された非常に限定的なものであり、現実世界における人類の本当の経験を学ぶことはできない。
ChatGPT批判にライバルを攻撃する意図がなかったとは言えない。ルカン氏は2013年にフェイスブック(現メタ)に加わり人工知能の研究に取り組んできた。メタはChatGPTに先駆けて、チャットボット「BlenderBot3」と、巨大言語モデルに膨大な科学論文や教科書などを学習させた「Galactica」を発表した。しかしGalacticaはでたらめな回答を生成したために厳しい批判を浴び、公開は中止された。ルカン氏が我慢ならなかったのは、ChatGPTがGalacticaと同じように誤った回答をしても、人々がそれを容認したことだ。
OpenAIの成功は明らかにルカン氏とメタを刺激した。メタは今年2月、大規模言語モデル「Llama (Large Language Model Meta AI)」を発表した。そして研究者に対してコードをオープンソースとして公開し、Llama を使ってチャットボットを訓練できるようにした。さらに6月、AIモデル「I-JEPA(Image Joint Embedding Predictive Architecture)」をリリースし、関連論文やコードを全てオープンソースとした。人間に近い学び方をする初のモデルで、生成型AIに比べ正確で効率がよいとのこと。
(編集者注:7月19日、メタは「Llama 2」をリリースし、能力は「GPT-3.5」に匹敵するという)
OpenAIはクローズドソースを選んだが、ルカン氏は対立する立場をとり「オープンにすることで研究は加速しより活気あるエコシステムを生む。そして誰もがそれに貢献できる」と語った。
しぼむChatGPTバブル
ChatGPTは今や世界で1億人以上に利用され、多くの人が有料版ChatGPT PLUSを使うために毎月20ドル(約2800円)を支払っている。しかし、ウェブサイト分析のSimilarWebのデータでは、ChatGPTへのアクセス数は今年1月から3月までは大幅に増加していたが、4月に勢いが鈍化した。伸び率は3月に前月比55.8%だったのが12.6%に落ち込み、5月もわずか2.8%にまで下落、6月にはマイナスになると予測されている。
複数の国での調査結果によると、ChatGPTの利用率は想像していたほど高くなく、4割以上の人が聞いたことがない、もしくは使っていないという。また、目新しさを感じなくなった一般のユーザーを引き留めることもできなかった。
ルカン氏の発言は必ずしも客観的とは言えない。しかし市場の反応からみれば、大規模言語モデルのブームは確かに冷めつつある。バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジスト、マイケル・ハートネット氏は、AIは「ベビーバブル(小粒のバブル)」の状態で、このAI熱は21世紀初頭のインターネットバブルを思い出させるとした。さらに、米国株の動きがよいとはいえ、企業も株主も大量に株を手放していることから、AIバブルははじけてしまうだろうと警告している。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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