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今年に入って人工知能(AI)モデルの活用が爆発的に広がり、クリエイティブ業界やメディア、金融、工業などさまざまな業種の業務プロセスを大きく変えつつある。
蓄電業界もAIモデルの活用に乗り出し、多くの蓄電システム開発企業や蓄電池メーカーがAIモデルを導入した製品やサービスを発表してきた。業界全体がコスト削減を迫られるなか、AIを活用してコスト削減と効率化を図る動きが見られている。
蓄電システムはエネルギーをためて必要な時にそれを利用するシステムだ。リチウムイオン電池を使った蓄電システムの内部では常にデータが生成され、電源や送電網との間でも頻繁にデータのやり取りが発生する。これがAIモデルの重要な学習データとなる。
先ごろ開催された第2回中国国際儲能展覧会(China International Energy Storage Exhibition)で、再生可能エネルギー会社「遠景能源(Envision Energy)」が新たなスマート液冷ソリューションを披露した。デジタルツイン技術を取り入れたこのソリューションは、IoTプラットフォームとエネルギー分野に特化したAIモデルがベースになっている。デジタルツインプラットフォームには電力取引最適化アルゴリズムが組み込まれており、リアルタイムまたは事前に電力取引価格を正確に予測するなどの機能を通じ、現物取引やアンシラリーサービス(電力品質を安定させる電力系統運用サービス)を行う事業主をサポートする。AIを活用したスマート電力取引では、手作業の場合と比べて収益が40%増加するという。
遠景智能のスマートエネルギーソリューション部門の社長を務める鄭穎氏によると、火力・風力・太陽光発電は中長期の電力取引が多いのに対し、蓄電システムによる電力取引は現物取引やアンシラリーサービスがメインだという。短期的で頻繁な取引を繰り返すうえ、電力市場が急成長していることを受けて取引ルールも変化し続けている。このため市場ルールに迅速に対応し、人手に頼らずに自動制御できる蓄電システムが必要とされているが、AIモデルを活用したオートメーションを導入すればこの問題は解決できる。
AIモデルをバッテリーの安全管理に活用しているスタートアップもある。産業・業務用蓄電システムを手がける「楽創能源(LEGEND ENERGY)」だ。同社は7月24日に、AIモデルを活用した一連の新製品を発表した。搭載されたバッテリー管理アルゴリズムはバッテリーに最先端のAI技術をもたらし、バッテリーの安全性を正確度97.37%以上で予測でき、バッテリー寿命を通常のものより33%延ばすことに成功した。
楽創能源の常偉CTOは次のように語る。「蓄電施設を管理するうえで最も扱いが難しいのがリチウムイオン電池だ。電池材料の劣化や熱暴走などの変化はバッテリー内部の指標をオンライン測定しても感知できないため、現在のところAIと蓄電池内部の状態を予測できるP2Dモデルを組み合わせたバッテリー管理が主流となっている」
海外向けに家庭用蓄電システムを開発する「思格新能源(Sigenergy)」は、米OpenAIの開発した大規模言語モデルGPT-4を自社のモバイルアプリ「mySigen」に直接組み込んだ。このアプリはApp StoreとGoogle Playで公開されている。
GPT-4を搭載したmySigenアプリはインテリジェンス能力と音声サービス機能を備えており、ユーザーのニーズや好みに基づいてエネルギー使用を提案したりプランを最適化したりするほか、システムのクイック設定、情報照会、問題に対する対話型の問い合わせなどのサービスを提供する。
注目すべきことに、現段階では業界特化型AIモデルのコストは汎用型モデルより大幅に低く、ある分野に特化して使用する場合は小規模のAIモデルでも事足りるため、参入ハードルは下がり続けている。今後、コンピューティングコストが下がっていけば、蓄電業界のさまざまなニッチ市場やシーンで業界特化型AIモデルの活用がさらに広がると見込まれる。
AIやデジタル技術を活用したエネルギー効率の向上は、国家エネルギー局が強く提唱する発展目標であり、エネルギー改革の重要な道筋でもある。デジタルとエネルギーが融合する新時代に向けて、AIモデルの果たす役割もますます重要なものとなるだろう。
(翻訳・畠中裕子)
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