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「網易考拉(ネットイースコアラ)」がアリババに買収されてもなお、ソーシャルコマース大手「ピンドゥドゥ(拼多多)」の株価上昇の勢いは衰えない。9月5日の米国株式市場で、ナスダックに上場している同社株の終値は2.6%上昇し、時価総額は405億ドル(約4兆3700億円)と初めて400億ドルの大台を突破した。同社はIT企業としてアリババ、テンセント、美団点評(Meituan-Dianping)、京東(JD.com)に続き、時価総額で引き続き中国第5位につけた。
ピンドゥドゥは地方都市市場の莫大な消費ポテンシャルを味方につけ、2015年9月の創業からわずか4年の間に数々の成長神話を生み出してきた。同社の株価は年初から累計55.39%上昇しており、大手テック各社が軒並みスランプに陥る中、今も堅調な伸びをみせる。
時価総額400億ドルのわけ
ピンドゥドゥのGMV(総流通総額)は創業からわずか2年で1000億元(約1兆5000万円)を突破し、今年6月末時点のGMVは7091億元(約10兆6300億円)と京東の60%に及ぶ。また創業から3年で上場を果たし、上場初日の時価総額は288億ドル(約3兆1100億円)だった。
同社の株価上昇の主因は好調な業績だ。2019年第2四半期(4~6月)の売上高は前年同期比169%増の72億9000万元(約1081億円)、また月間アクティブユーザー数(MAU)は前四半期に7630万人の純増と過去最高を記録し、各指標はいずれもアナリストの予想を上回った。
さらにユーザーの客単価上昇もGMV増加に大きく貢献している。2018年の客単価は前年の576.9元(約8600円)から95%増の1126.9元(約17000円)となり、GMVを押し上げる最大の要因となった。
現時点での客単価は京東やアリババに遅れをとっているものの、ピンドゥドゥはユーザーの購入回数やリピート率をより重視しており、品揃えも一般的な消費財がメインだ。昨年の利用者の購入回数は前年の17.6回から51%増の26.5回に増えており、リピート率の上昇が同社の継続的な高成長を支える要因となっている。
今後はブランディングが課題に
2019年第2四半期のオンラインマーケティングサービス事業の売上高は、前年同期比173%増の64億6700万元(約970億円)と力強い伸びをみせた。一方、各店舗から徴収する手数料は8億2300万元(約123億円)と前期比で減少している。
ピンドゥドゥは一昨年、自社での仕入れ・販売業務から完全に撤退し、出店者を募集し手数料を徴収するタオバオ(淘宝)方式への転換を図った。割安な手数料(売上の0.6%)や手数料の値引きにより出店者を引きつけ、事業規模を急速に拡大している。とはいえ、出店業者の数は徐々に飽和状態に近づいており、手数料収入の伸び鈍化というリスクを抱えることは避けられないだろう。
タオバオ方式を目指すとしながらも、ビジネスモデルの中心はマーケティングサービス事業が担っており、同社が直面する課題は多い。
アリババは当時、タオバオからB2C(企業と個人間取引)プラットフォームを切り離して「天猫」を立ち上げ、差別化することで大手企業を取り込んだ。これによりブランディングと多額の広告費の獲得に成功した。また、大手ブランドはマーケティングへの支出額も大きく、現在ではマーケティングサービス事業の売上が天猫のみならず、アリババ全体の成長の核心となっている。また京東もオンライン広告の争奪に力を入れている。今年上半期、モバイルアプリを大々的にリニューアルし、ニュースフィード広告の導入とレコメンド機能の完全カスタマイズ化を実施した。これにより広告効率が大きく改善され、ブランドを展開するより多くの企業を取り込むことができるという。
「複数のECサイトには出店できない」というこれまでの暗黙のルールは、ピンドゥドゥのモデルチェンジを阻む壁となってきた。タオバオや天猫、さらに京東に出店済みの店舗がピンドゥドゥにくら替えする可能性は低く、広告費の増加は期待できない状況だ。
このような厳しい局面の中、ピンドゥドゥは昨年末に「拼工場」と呼ばれる1000社の中小ブランドと直接契約するサポートプログラムを打ち出した。今後は主業務であるEC以外の成長の起爆剤を見いだすことが、成長の限界を押し上げていく上での鍵となるだろう。
(翻訳・神部明果)
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