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中国の自動車輸出台数が今年初めて世界一になる見通しだ。うちBEV(電気自動車)など新エネ車は比亜迪(BYD)を筆頭に存在感を示し前年の約2倍に拡大しており、輸出台数が全体の4割程度を占める見込みだ。年を追うごとに目立つ中国のEV企業の海外進出だが、自動車メーカーそのものが進出する以外のケースもある。
日本の「HW ELECTRO」や「Folofly(フォロフライ)」は商用EVにフォーカスしたスタートアップだ。どちらも大きく言えば中国企業がOEM元にしている点で共通している。日本で車を製造し販売するのは簡単ではなく、国土交通省の定める安全基準を満たすには、数百件もの部品試験をクリアする必要がある。そしてその過程で多額の費用もかかる。
米国カリフォルニア州と中国杭州に拠点を置く商用EVメーカー「CENNTRO(恒源電動汽車集団)」は、 プラットフォームモデルの研究開発を専門に行い、各国のニーズに合わせたEVを開発する、中国人の王祖光氏らが設立した会社だ。例えば米国に移動ワクチン車を開発するARYOというEV企業があるが、車両の開発にCENNTROのプラットフォームを利用している。同様に、HW ELECTROの車両もCENNTROプラットフォーム上で生産され、日本での試験などを経て、2021年4月に日本企業として初めて輸入小型EV商用車「エレモ」を市場投入した。
一方、Foloflyはより中国のモノづくりに直接依存している。同社は生産コストを抑えるべく東風汽車傘下の東風小康汽車に、日本の条件にあった製品のOEM生産を依頼した。結果、FoloflyのEVトラックは、積載量1トン、標準航続距離300キロに達し、輸入した場合の販売価格は1台380万円(19万2000元相当)とガソリン車並みの水準を実現できる。同じモデルの車を日本で開発生産する場合は少なくとも1000万円以上になるという。Foloflyの商用EVは主に「ラストワンマイル」の物流向けに活用されるもので、物流大手SBSホールディングスが導入している。
このように中国系企業のOEMによるスマートフォンなどの電子機器や家電が日本市場で売られたようなことがEV業界でも起きている。そして電子機器がそうだったように新機種が頻繁に登場してもおかしくない。中国EV企業が外資企業に技術供与を行う事例は他でも増えている。
例えば、今年7月末にフォルクスワーゲンは、中国の新興EVメーカー「小鵬汽車(Xpeng)」と、技術協力の枠組み協定と第三者割当増資の契約を結んだ。フォルクスワーゲンは小鵬汽車の株式4.99%を取得し、スマート機能や自動運転システムなどを導入した車の開発・販売を行い、2026年をめどに生中国市場で販売する計画だ。小鵬汽車と組んだ背景として、同社は設立以来テスラを意識した研究開発を行っていることからソフトパワーが強く、フォルクスワーゲンの弱点を補強するものだという分析がされている。
フォルクスワーゲン傘下のアウディも、上海汽車と戦略的覚書を締結し、共同開発を行うことになった。アウディはEV開発用プラットフォームを所有していなかったが、上海汽車との提携によりアウディブランドのEV開発ペースを加速させる。
ほかにもルノーと吉利汽車(Geely)や、フォードとCATL(寧徳時代)との提携が挙げられる。日本企業においては中国第一汽車集団とトヨタの合弁会社である「一汽トヨタ自動車」と、トヨタとBYDが合弁で設立した「BYD TOYOTA EV TECHNOLOGYカンパニー」が「bZ3」を共同開発した。
かつて中国では外資系メーカーは合弁でしか自動車生産ができず、中国企業は外資系企業と提携することで、中国市場での展開と引き換えに自動車生産を学んだ。ところが近年になって中国は外国資本比率の制限緩和へシフトした。これは自動車産業に限らず、中国の他の産業にも言える傾向で、中国企業の力が外資企業に勝てるほどに十分ついたときに起こすアクションだ。
つまり中国のEV開発力は十分にあり、これまでとは逆に外資企業に技術を提供し市場を拡大することができるという確固たる自信がついた。そして実際には当記事で挙げたようにさまざまな提携形態を通して、中国企業が技術を輸出する側にまわったのである。
(作者:山谷剛史)
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