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次世代電池として期待を集めるナトリウムイオン電池の商用化をめぐり、電気自動車(EV)への搭載が2023年末に立て続けに発表された。12月27日、ナトリウムイオン電池メーカー「中科海鈉(HiNa Battery)」は、安徽江淮汽車集団(JAC)傘下のEVブランド「釔為(Yiwei)」と開発したナトリウムイオン電池搭載EV「花仙子」のラインオフを発表した。航続距離は252キロ、ナトリウムイオン電池を搭載した世界初の量産モデルで、24年1月から納車が始まっている。翌28日には、車載電池メーカー「孚能科技(Farasis Energy)」が、EVメーカー「江鈴集団新能源汽車(JMEV)」と共同開発したナトリウムイオン電池搭載のコンパクトEVがラインオフしたと発表した。
このほか2023年中は、電動バイクメーカー「雅迪(Yadea)」が3月にナトリウムイオン電池を使用した電動二輪車をリリースし、4月には車載電池最大手CATLがナトリウムイオン電池を中国自動車大手「奇瑞汽車(Chery Automobile)」のEVに搭載するなど、多くの動きがあった。
ここ数年、世界的なリチウム資源の不足と価格高騰により、リチウムイオン電池に代わる選択肢としてナトリウムイオン電池が大きな注目を集めるようになった。2023年は「ナトリウムイオン電池元年」となり、中国の新興企業がたびたび資金調達に成功したほか、電池メーカーや自動車メーカーなども相次いでナトリウムイオン電池の分野に参入した。
ナトリウムイオン電池は安全性や安定性の面で非常に優れている。特に高温や低温下でも高い性能を発揮し、使用温度範囲はマイナス40度から80度と広く、マイナス20度の低温環境でも定格容量の約90%を利用できる。リチウムイオン電池に比べて、発火や爆発の危険も少ない。
不足するリチウム資源に比べ、ナトリウム資源は豊富に存在している。中国には世界のナトリウム埋蔵量の約22%があり、資源に不足はない。一方、リチウム資源については多くを海外からの輸入に頼っているため、ナトリウムイオン電池の開発がどうしても必要なのだ。
とはいえ、ナトリウムイオン電池にはエネルギー密度が低いというデメリットがある。ナトリウムはイオン半径がリチウムより大きいため、同じ質量で比べるとナトリウムイオンが運べる電荷量は少なくなり、エネルギー密度ではリチウムイオン電池にかなわない。こうした特性により、ナトリウムイオン電池の活用分野は必然的に、高いエネルギー密度を必要としないシーンに限られてきた。
世界で初めてラインオフした2種類のナトリウムイオン電池車は、いずれも航続距離の短い近距離移動用モデルだ。今後、市場規模がさらに拡大していけば、エネルギー密度の向上にも取り組む必要も出てくるだろう。さらに、2023年後半にはリチウム価格が大幅に下落し、ナトリウムイオン電池のコスト的なメリットも薄れてきている。
リチウムイオン電池関連のデータサービスを提供する真鋰研究(RealLi Research)の墨柯総裁は、今後2年はリチウム価格が低めに推移するとみられるため、コスト面でナトリウムイオン電池に魅力はないとの見方を示す。その上で「電池技術について言えば、この2年はまさにナトリウムイオン電池の技術を磨き、強化する期間になる。電池メーカーはこの2年間で技術の向上を図り、コストを削減し、市場での検証を十分に行う必要がある。そうしておけば、リチウム価格が再び上昇した際に、ナトリウムイオン電池のメリットが十分に発揮され、急成長を遂げるだろう」と語った。
(翻訳・畠中裕子)
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