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中国でつくられた産業用ロボットの世界進出が加速し、日本やドイツといった伝統的なロボット製造国でも歓迎されている。トヨタなど日本の大手企業にも納品するロボットメーカー、節卡機器人(JAKAロボティクス)はその代表格と言える。
上海市閔行区のハイテク産業パーク「大零号湾」にある同社の工場に足を踏み入れると、背の高いものから低いもの、ずんぐりしたものからすらりとしたものまで、さまざまな形のロボットが並んでいるのに出くわす。赤色のジョイント(関節)とシルバーのリンク(骨)がトレードマークで、高いデザイン性を感じさせる。用途はさまざまで、Bluetoothヘッドセットなどの精密機器の接着、完成車組立ラインでの部品の溶接、貴州省にある500メートル球面電波望遠鏡(FAST)の巨大パラボラアンテナの保守など各シーンで活用されている。
李明洋董事長は「大規模生産の時代からフレキシブル生産やスマート生産の時代に入り、製品の開発サイクルが加速し、パーソナライズされた設計と迅速な生産フィードバックへの要求が高くなった。その結果、ヒューマン・コンピューター・インタラクション(HCI)やヒューマン・ロボット・コラボレーション (HRC) への要求もより高まった」と語る。
JAKAは2023年、協働ロボット「ジャカ ミニコボ」で日本の「グッドデザイン賞」を受賞。同製品は日本の大学や研究機関への導入が進んでいる。トヨタ自動車もJAKAの協働ロボットを採用し、優れた製品でコスト削減と競争力向上を助けたとJAKAに感謝状を送っている。
日本市場でJAKAの代理店を務めるエンジニアリング商社、進和の担当者はJAKAについて、企業のニーズに迅速に対応し、専門的なサービスを提供できると評価する。特にJAKA独自の視覚的なティーチング機能は、研修に要する時間とコストを大幅に削減し、技術者の習得が3~4日で可能だが、これは他のロボットメーカーにはできないことだという。
李董事長によると、日本のロボット産業はエコシステムが比較的成熟しており、新興企業が市場を切り開くには、技術、製品、サービス、サプライチェーンなどでより際立った能力が求められる。JAKAのロボットは鍛え抜かれた総合力で、トヨタ、日産、アイシン、デンソー、日立ジョンソンコントロールズ空調などの有名企業と深い連携を構築。自動車のシャシーシステム、エンジン、ギアボックス、トランスミッションシステムなどの生産ラインに製品が投入され、部品のロード・アンロード、ねじ締め、検査、組み立てなど10以上の工程で使用されているという。
ドイツでこのほど開催された産業見本市「ハノーバー・メッセ」は、同社が新製品を初披露し、中国のロボットの進化と産業オートメーションでの世界展開を紹介する場となった。同社はロボット制御のための新たなインターフェースSRCIをサポートする中国初の協働ロボットメーカーとなっており、世界の主要産業ユーザーのサプライチェーンへの統合が進んでいる。
中国は10年連続で産業用ロボットの世界最大の市場となり、導入台数の世界シェアは2012年の14%から22年には52%に上昇した。JAKAが本拠とする上海は、従業員1万人当たりのロボット導入台数「ロボット密度」の統計を中国で初めて開始した都市で、重点産業の一定規模(主要業務の年間売上高2千万元、1元=約22円)以上の工業企業におけるロボット密度は426台と世界のトップレベルにある。
JAKAのロボットの急成長は、上海さらには中国のスマート製造の進展とデジタル転換の縮図と言える。同社をはじめとする中国の新興ロボットメーカーは、中国の「新たな質の生産力」(科学技術イノベーションが主導し、質の高い発展を促す生産力)を代表する存在となっている。(新華社上海)
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