価格破壊でシェア伸ばす中国「BYD」、ハイエンドEVは苦戦気味

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中国EV最大手のBYD(比亜迪)は、電気自動車(EV)市場の激しい競争のなかコストパフォーマンスを追求する製品戦略で、2023年に年間販売台数302万4000台を達成し、EV販売台数で世界トップに立った。

しかし、10万~20万元(約200万~400万円)の中価格帯市場を獲得したBYDは、次なる成長点を模索し始めなければならない。その選択肢のひとつが高価格帯市場だ。独フォルクスワーゲンのアウディやポルシェ、トヨタのレクサスといった高級車ブランドと同様、高価格帯モデルはBYDの可能性を大きく広げる鍵になる。また、自動車の購入も高級志向が見られている。米マッキンゼーのレポートによると、中国の高価格帯モデルの市場シェアは2016年の10%から23年には23%に拡大したという。一方で上汽通用五菱汽車の超小型EV「宏光」に代表される10万元以下の低価格車市場は縮小している。

BYDは現在、事業戦略のジレンマに立たされている。値下げして販売台数を追求するも、ブランドイメージを高め利益を増やすために高価格帯に進出しないければならないということになる。

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販売台数か、ブランドイメージか

中汽数研のデータによると、10万~20万元の中価格帯市場で、BYDの2024年上半期(1~6月)の販売台数は84万6700台、シェアは18%だった。2位のフォルクスワーゲンのシェア10%に大きく差をつけた。しかし、30万〜50万元(約600万円~1000万円)では、BYDはトップ10にランクインすらしていない。50万元以上では、華為技術(ファーウェイ)が支援するEVブランド「問界(AITO)」の「M9」が月間1万6000台以上を売り上げ、ガソリン車・EVを含めた50万元以上の高級車カテゴリで販売台数トップに輝いた。

BYDは低~中価格帯の市場で足場を固めた後、傘下のブランド「方程豹(Fangchengbao)」「仰望(Yingwang)」「騰勢(DENZA)」を通じ、徐々に高価格帯市場へと歩を進めている。低~中価格帯市場では価格破壊を繰り返し、驚異的な業績を上げた同社だが、高価格帯市場では確かな技術力に加え、ブランドの認知度がいっそう重要になる。

方程豹の元従業員は、BYDは低価格帯市場に長く注力しすぎたため高級車では難航しており、低価格車の方法論のまま高級車事業を展開しようとしていると語った。例えば、グループ購入すればディスカウントするというマーケティング手法があるが、これは10万元前後の低価格モデルに適した方法で、30万元(約600万円)クラスの方程豹ブランドには使えない、と店長がこぼしていたという。

また販売促進のため、BYDは7月29日、方程豹の「豹5」シリーズの公式販売価格を5万元(約100万円)引き下げた。この戦略は一時注目を集め、短期的には販売台数が増加したが、値下げがブランドイメージを損なうと考える一部オーナーの不満も引き起こした。

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「中~高価格帯市場では、BYDはありきたりのマーケティングで人海戦術を行うのではなく、新興勢力から学ぶべきだ」との声も上がる。新興EVメーカー小鵬汽車(Xpeng Motors)のある営業担当者が明かしたところによると、同社のフラッグシップモデルだった「G9」が失敗した後、2023年に同社に加わった王鳳英氏(長城汽車元社長)は、営業担当者にメルセデス・ベンツやBMW並みの接客態度を求めたという。

BYDの別の弱点はスマート化だ。過去2年間、BYDは研究開発スタッフを大規模に募集していたが、中国のビジネスメディア晚点(Latepost)によると、BYDはファーウェイのスマートドライビングシステムを調達し、方程豹の新型オフロード車に採用する予定だという。

BYDの高価格帯モデルで最も業績が良かったのは、販売価格32万4800~60万6600元(約650~1200万円)の騰勢「D9」だった。月平均1万台以上の販売台数を記録し、2023年のミニバン(MPV)部門で販売台数トップとなった。7月に438台を納車した仰望「U8」も、100万元(約2000万円)という価格を考えれば悪くない成果と言える。

BYDが「高級路線」を目指し始めてまだ1年。ブランディングに成功したかがはっきりするまでにはもう少し時間が必要だろう。

*1元=約20円で計算しています。

作者:Tech星球(WeChat公式ID:tech618)

(編集・36Kr Japan編集部、翻訳・北村一仁)

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