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エンボディドAI(身体性を持つ人工知能)の開発を手がける中国スタートアップ企業「千訣科技(Qianjue Technology)」がこのほど、エンジェルラウンドで数千万元(数億円超)を調達した。出資は英諾天使基金(InnoAngel Fund)が主導し、水木清華校友基金(Tsinghua Capital)や啓迪之星(TusStar)、著名投資家の龔虹嘉氏のファミリーオフィス・嘉道功程などが参加した。
調達した資金を研究開発の強化や製品の改良、市場開拓に充て、より先進的で信頼性のあるエンボディドAIソリューションの提供を目指すという。
エンボディドAIは、意思決定を担う「大脳」と動作の実行を担う「小脳」の2つの部分に大きく分けられる。この概念の登場から1年あまりの間に、中国では大半の企業が「小脳」の開発に注力した結果、「RT(Robotics Transformer)」「RDT(Robotics Diffusion Transformer)」「WALL-A」などのモーションコントローラや複雑な操作モデルが誕生した。
一方で「大脳」の開発はあまり進んでおらず、マルチモーダル基盤モデルを転用する段階にとどまっており、ロボット向けの製品はほとんどない。
ロボット汎用化のカギを握るエンボディドAIの「大脳」が最近、注目を浴びている。ロボットAIを手がける米Physical Intelligenceは2024年11月初めに、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏やAI開発の米OpenAIなどから4億ドル(約630億円)を調達し、その企業評価額は20億ドル(約3100億円)と、この3カ月ほどで7倍増加した。
千訣科技の創業者・高海川氏によると、学術界ではエンボディドAI分野の研究が長らく進められているという。清華大学類脳計算研究センター(CBICR)が7年にわたってPhysical Intelligence創業チームの主要論文341本や、世界的に最先端の研究成果を網羅した結果、最終的にPhysical Intelligenceのコアメンバー・Sergey Levine氏と同じ技術論に至ったため、千訣科技はそれをベンチマークにしているという。
「脳型AI」技術をロボットの検知や意思決定、制御に活用する千訣科技の中核技術は、清華大学類脳計算研究センターと清華大学自動化学部の支援によって開発された。
現在の生成AIでは、エンボディドAIを十分に機能させるという難題を解決できない。既存のモデルは、インターネットにつながるオンライン環境では汎用性を持つが、ロボットに搭載して実世界で情報をやり取りさせようとしても、物体細部の検知や動的な推論・意思決定、操作データの取得が困難で、ハルシネーション(幻覚)の発生や電力消費が大きくなるといった問題にぶつかっている。
こうした状況の中、同社は中国で唯一、検知・意思決定AIを製品化し、ロボットの形態や環境、タスク、用途にかかわらず、完全に自律的な動作と環境変化への動的な対応を可能にするという真の汎用化を実現した。
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例えばロボット犬に千訣科技の「大脳」を搭載すると、電源を入れるだけで自らソファに飛び乗ったり、人と触れ合うことができ、人の指示や専門的なトレーニングなしで、初めての環境でも自律的に検知・意思決定を実行する。
千訣科技は、清華大学類脳計算研究センター発の脳型チップ「天機芯(Tianjic)」をベースに、ハードウエアとソフトウエアが統合されたロボット用コンピューティングソリューション「脳塢」を開発し、クラウドコンピューティングやエヌビディア(NVIDIA)製チップからの脱却を図った。推論パラメータが130億(13B)に対応する「脳塢」は、千訣科技の「大脳」と提携企業が開発した「小脳」を同時に働かせることが可能で、性能はエヌビディアのGPU「GeForce RTX 4090」と肩を並べ、消費電力は1〜2ケタ少ないという。
*1元=約21円、1ドル=約157円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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