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2025年1月10〜12日に千葉県・幕張メッセで開催された「東京オートサロン2025」で、中国電気自動車(EV)大手のBYD(比亜迪)は、日本市場向け乗用車第4弾となる「シーライオン7(SEALION 7)」を発表した。
BYDは、PHEV(プラグインハイブリッド車)と純電気自動車(BEV)の二足のわらじでラインナップを拡充しており、販売台数も年々増加している。2024年には全世界で427万2145台の新エネルギー車(PHEV+BEV)を販売し、世界トップの地位を確立した。乗用車のラインナップは現在、中国の歴代王朝から名付けた「王朝シリーズ」と海洋生物・艦種から名付けた「海洋シリーズ」の2つを基軸としている。また、低〜中価格帯のBYDブランド以外にも、高級EVブランドの「デンツァ(騰勢)」「方程豹」「仰望」といった多様な車型展開を行なっている。
日本市場では2015年より電気バスと電動フォークリフトを販売していたが、2022年7月には乗用車市場への参入を発表し衝撃を与えた。日本導入第1弾のスモールSUV「アット3(ATTO 3)」、第2弾のコンパクトカー「ドルフィン(DOLPHIN)」、第3弾のミドルセダン「シール(SEAL)」は、それぞれ2023年1月、同年9月、2024年6月に発売された。
2024年はアットスリーのマイナーチェンジや、シールの投入が日本での販売を促進させ、2024年1-12月期の販売台数は前年比53.7%増の2223台を記録した。また、全国のディーラー店舗数も37カ所にまで拡大させており、「2025年末までにディーラー100か所」という目標の実現に着々と歩みを進めている。
これまでの3車種体制から4車種目の登場を待ち望む声が多い中、次なるのはドルフィンよりもひと回り小さい「シーガル(海鴎)」や、2023年ジャパンモビリティショー(東京モーターショー)で出展されたデンツァのミニバン「D9」などさまざまな憶測を呼んだが、今回ついに発表されたのは2024年5月に中国で「海獅07」として発売された最新型の純電動SUV「シーライオン7」だ。
シーライオン7は全長4830 mm x 全幅1925 mm x 全高1620 mm、ホイールベース2930 mmを誇り、BEV用新プラットフォーム「e-プラットフォーム3.0 Evo」を採用した最初のモデルとして注目されている。36Kr Japanでは2024年9月27日付の記事でシーライオン7が日本国内でテストしているとお伝えしたが、そこで予測した通りとなった。
e-プラットフォーム3.0 Evoは、インバーター、BMS、DC-DCコンバーター、減速機、モーターなど8個のコンポーネンツを1つの統合したこれまでの8-in-1ユニットを進化させ、12個のコンポーネンツを含む「12-in-1ユニット」を搭載する点が大きな特徴となる。これ以外にも、最高回転数2万3000 rpmの駆動モーターや改良ヒートポンプによる電費向上、10-80%をわずか12分で完了させる急速充電機能など、多くの点でフラッグシップ車種にふさわしい性能を持ち合わせる。
中国では容量71.8 kWhと80.64 kWhの2種類のバッテリーを基本に、後者は後輪駆動(RWD)と四輪駆動(AWD)モデルを用意する。71.8 kWhのRWDと80.64 kWhのAWDは両者ともに中国独自のCLTC方式で550 kmの航続距離を誇り、80.64 kWhのRWDは610 kmとなる。ただ、これは世界的なスタンダードであるWLTC方式での測定値ではないため、実質的な航続距離はこれら数値の7~8掛けと考えるのが妥当だ。
一方、シーライオン7は欧州向けにも展開されているが、欧州仕様車は若干仕様が異なる。バッテリーの選択肢は82.5 kWhと91.3 kWhとなり、後者はAWDのみの最上級グレードとなる。WLTC方式での航続距離は82.5 kWhのRWDで482 km、AWDで456 km、そして91.3 kWhで502 kmと公表されている。モーターの出力は中国仕様車と同じく、RWDが308 hp、AWDが523 hpとなる。
日本仕様車の詳細はまだ明らかとなっておらず、バッテリーの構成も中国と同じか、欧州と同じかも不明だ。ただ、中国仕様車は競争力を高めるために価格を抑えていることに加え、これまで日本で販売されてきた車種はどれも最上位グレードが基本であることを考えると、日本仕様車は欧州仕様車と同じ構成である可能性が高い。
ここからは完全に筆者の予測となるが、日本での価格は500万円台後半から600万円台中盤の間になるのではないかと見ている。根拠はシーライオン7自体がシールとさほど変わらない価格で展開されている点にあり、例えばシーライオン7の欧州価格はシールのそれと比べてグレード平均で4700ユーロ(約75.6万円)ほどの高さにとどまっている。これは中国仕様車でも同じで、中国ではもっと価格の差が縮まっている。これらの点を鑑みると、シールの日本でのメーカー希望小売価格が528万円と605万円なので、シーライオン7が3グレードで展開されるなら先述の価格帯が妥当と言える。
シーライオン7を2025年春に日本で販売する予定だ。1月24日に東京・臨海副都心エリアの電動カート用サーキット「CITY CIRCUIT TOKYO BAY」で開催される「BYD 事業方針発表会2025」で、さならる詳細が発表されるという。また、この発表会では、中型バス「J7」の初披露や、最近匂わせている日本へのPHEV導入に関する新情報も期待されている。
(文:中国車研究家 加藤ヒロト)
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