セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録
日本の薄型テレビ市場で中国のテレビメーカーのシェアが高まり、約半分のシェアを占めるまでになった。
日経新聞とBCNの調査結果では、2024年1月から9月にかけて中国家電メーカー大手のハイセンス(海信)がシェア40.4%で1位となり、TCLが9.5%で3位に入り、両社の合計シェアは49.9%に達している。2019年には12.1%、2023年には21.4%となっていたのでシェアが倍増し続けている。一方、日本勢ではソニーが9.7%で2位、パナソニックが9.0%で4位だった。
1位に輝いたハイセンスは、東芝(旧東芝映像ソリューション)のテレビブランド「レグザ」を買収し、資材調達や事業部の再構築などにより、レグザの製品の競争力を高めた。加えてハイセンスブランドでも低価格攻勢をしかけており、日本市場である程度地位を確立した。最近、ECだけでなく、家電量販店やディスカウントストアでもハイセンスやTCLの製品を見かけるようになっている。優れたコストパフォーマンスで日本の消費者の支持も集めていて、「家電を買うなら日本メーカー」という考えは薄れつつあるようだ。
テレビ市場で中国ブランドが日本を逆転
中国製テレビが日本市場で売れているというニュースは、中国で様々なメディアから報じられている。その理由は、中国のテレビが「品質を重視する」日本市場でも通用し、好調な売上を示している点だ。
また、中国のテレビ産業は日本と縁が深く、うんちくが書きやすく記事にしやすいということも挙げられる。現在中国ではハイセンス、TCL、スカイワース、KONKA、長虹電器に絞られているが、この5社が注目される前は、国営企業が東芝、日立、三洋電機、パナソニックといった日本企業から製造ラインや部品を導入して生産していた。物持ちのいい年配の方が昔から住み続けている家では、今も小型の日本のテレビが置かれていることがあり、当時の日本企業の勢いの一端を見ることができる。
中国人の間で「中国ブランドのテレビはまんざらでもない」と認識させる契機となったのは、2008年から開始された、農村部向けの「家電下郷(中国ブランドの家電購入に補助金を支給する)」政策と、都市部向けの「以旧換新(中国ブランド家電買い換えに補助金を支給する)」政策だ。これにより、中国メーカーの薄型テレビへの移行が急激に進んだ(ちなみに昨今ではEVにおいて買い替え補助金制度が出た)。ただし、中国メーカーの薄型テレビが普及していくも「中国ブランドは悪くはないが、それでも日韓ブランドのほうがいい」という考えを持つ消費者は少なくない。そのため、日本で中国ブランドが売れシェアを獲るというのは驚きのニュースだ。
中国メディアが中国テレビの好調を報じたくなる別の理由もある。それは、中国国内のテレビ市場は低迷しており、明るい材料があまりなかったということだ。調査会社AVC(奥維雲網)のデータによると、2024年中国におけるテレビの販売台数は3085万台だった。一見好調にみえるが、実は2020年以降は台数・金額共に減り続け、2024年の9月以降は補助金によってようやっとプラスに転じる状況だ。製品の大画面・低価格化とスマート化が進む一方で、そもそも「スマートテレビは使いたくない」というスマートテレビ不要論をネット上でよく見るようになった。
中国のスマートテレビは電源をつけただけでは見られるコンテンツが限られていて、視聴サービスを別途買わなければいけない。複数企業が提供している上にそれぞれ無数のプランを用意していて、何かのドラマや映画をオンデマンドでみようとしても何かにつけて新規に有料会員になる必要がある。その上ショートムービーやライブストリーミングなど、スマートフォンのほうが使い勝手のいい動画サービスも普及したものだから、いよいよスマートテレビは要らないものとなっている。こうした中で海外、それも日本で中国製テレビが売れるのは明るい話題だ。
前述の理由から、中国家電メーカーは飽和状態にある国内市場を離れ、海外市場への展開を加速させている。最近、中国スマートフォン大手のシャオミ(Xiaomi)も日本でスマートテレビの販売を開始した。32型モデルでわずか2万円強という手頃な価格で提供され、消費者にとって魅力的な選択肢となっているようだ。このコストパフォーマンスの高さが購入の決め手となり、さらにその品質が購入者に認められれば、口コミを通じてさらに広まり普及が進むだろう。
今後、中国企業はスマートフォン市場で成功を収めたように、単に低価格な製品だけでなく、技術力のアピールも兼ねたハイエンド製品を日本に投入する日も、そう遠くないかもしれない。
(文:山谷剛史)
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録