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運転席が無く、保安要員も乗っていない無人配送車が、時速40キロで中国・四川省の山岳地帯にある大涼山の田舎道を走り、荷物の発送地から約30キロ離れた物流拠点に到着した。この車両を開発したのは、2021年設立のスタートアップ「九識智能(ZELOS)」だ。
同社は、百度(バイドゥ)や京東(JD.com)で自動運転車部門のコアメンバーだった孔旗氏が創業した。都市部や農村の物流に自動運転レベル4(L4)の技術を導入し、複雑な環境でも安定して走行し、コスト削減と効率化を実現する無人配送車の開発を手がけている。
孔氏によると、物流分野では自動運転車に対する大きな需要があるため、商用化を進めやすいが、低速で走る無人配送車を実用化するには、想像以上に多くの技術的課題があるという。雪道、砂漠、山道、牧草地など多様な地形への対応が求められ、初期開発にかかる費用も大きい。また、製造コストの削減には、サプライチェーンの整備も不可欠だ。
車両はLiDAR、カメラ、ミリ波、超音波という4種類のセンサーを搭載し、環境と信頼性に関する厳しいテストを経て、過酷な温度環境下(55度〜氷点下30度)で5年以上の稼働実績を持つ。ソフトウエア面では、センサーフュージョンによる検出技術やさまざまなシーンに対する意思決定アルゴリズム、動的な分散式タスク管理システムによって推論にかかる時間を0.05秒以内に短縮し、都市部の複雑な道路に適応する能力を大きく向上させた。
また、現在は高精度3次元地図を使っているが、顧客に納車する前に地図データをあらかじめ車両に組み込んでおく必要がある。今年後半には軽量版の地図で走行できるL4の車両をリリースする計画で、納車前の準備期間を3~4日に短縮できるという。
技術を向上させるだけでなく、ビジネスモデルも工夫しており、購入のハードルを下げるためにサブスクリプションを導入した。例えば人気車種の「Z5」は、ユーザーが車両を4万9800元(約100万円)で購入し、ソフトウエア使用料として3カ月ごとに7000元(約14万円)を支払うことで、イニシャルコストを抑えられる。

車両のコストパフォーマンスにも優れている。大涼山では地元の宅配業者が「Z5」を4台導入したところ、最長180kmの航続距離により拠点間を複数回往復でき、運営コストは40%以上削減されたという。内モンゴル自治区でも同様に、2台の導入で月間の宅配コストが56.25%減少した事例もある。
さらに、運営業者の役割を担うようになった顧客もいる。1日に3~4回しか車両を使わないため、空き時間に車両を貸し出すと活用の幅が広がっている。
九識智能の無人配送車は、中国29省の100都市あまりで道路走行の許可を得ている。昨年時点で受注台数は1万台以上、納品台数は累計3000台余りとなった。車両の走行距離は1日当たり10万キロを超え、顧客は600社を超える。取引先には中小規模の宅配業者のほか、中国郵政(China Post)や物流大手の中通快遞(ZTO Express)、医療機器の国薬器械(National Medical Device)、シンガポールのタイヤメーカー・Gitiといった大企業も含まれる。中でもGitiは32都市に九識智能の無人配送車を配備し、都市部の倉庫・自動車修理工場への商品補充や在庫調整に加え、夜間に緊急にタイヤが必要となるケースに使用している。
海外では、シンガポールで初めて無人配送車の事業ライセンスを取得し、FairPriceなど現地の小売チェーンと提携したほか、日本や韓国、中東で市場開拓を進めている。
九識智能はこのほど、シリーズB3で1億ドル(約140億円)を調達し、シリーズB全体の調達額が計3億ドル(約430億円)近くに上った。資金は、次世代製品の開発やサプライチェーンの強化、海外市場の開拓に充てられる予定だ。
*1元=約20円、1ドル=約142円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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