「脱NVIDIA」に現実味 中国発「AI専用チップ」、推論コスト削減で海外製に対抗

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人工知能(AI)チップを開発する中国スタートアップ「凌川科技(Transtreams)」がこのほど、シリーズAで数億元(数十億円)を調達した。北京市人工知能産業投資基金とショート動画大手の快手科技(Kuaishou Technology)が共同で出資を主導し、亦庄国投(E-Town Capital)や順禧基金(Shunxi Fund)、九智資本(JZ Capital)なども参加した。資金は次世代チップの開発、現行のAIチップ「SL200」の生産拡大、海外市場の開拓に充てられる。

凌川科技は北京市人工知能産業投資基金と快手科技が共同で立ち上げた企業で、2024年3月に快手のヘテロジニアスコンピューティングおよびチップ事業部が独立する形で設立された。主力製品SL200は、映像エンコードやAI推論、マルチコアCPUなどの主要機能を統合したAI処理専用チップで、すでに数万個が出荷され、23年に開かれた「世界インターネット大会」でも高い評価を受けている。

AIチップ市場では、米NVIDIA(エヌビディア)がGP(汎用)GPU開発環境「CUDA」で世界をリードしてきたが、大規模言語モデル(LLM)の推論などで運用コストやエネルギー効率が重視されるようになり、AI処理専用の「ASIC(特定用途向け集積回路)」アーキテクチャが生まれた。

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中国では動画生成AI市場が急成長しており、快手の「可霊(Kling)」やバイトダンスの「即夢AI」などが注目を集める一方で、AIチップの多くを海外製品に依存しており、米国の輸出規制によるリスクも残る。凌川科技はASICアーキテクチャによって推論コストを低減し、1枚のチップで最大36本の動画処理を実現。電力消費も従来比で約30%削減しており、海外製品への依存を低減する効果が期待されている。

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SL200は中国初のASICチップで、故障率は1万分の1と極めて低い。ロシア国立モスクワ大学(MSU)が主催するビデオコーデックのコンテストでは、動画圧縮性能で米インテルやエヌビディアを上回り、動画1本あたりの処理コストは4割低かったという。現在開発中の次世代チップは、LLMの学習・推論処理を主な用途とし、画像・映像生成やレコメンドアルゴリズムなど、高度な演算性能が求められる分野に対応。とくにKlingのような動画生成AIの性能向上を支えることを目指している。

凌川科技はまた、CUDAのようなプログラミングインターフェースを開発し、ディープラーニング用フレームワーク「PyTorch」や主要な推論エンジンにも対応させる。開発者の移行負担を軽減することで、普及を加速させたい考えだ。

目下、SL200は快手やアリババグループ、百度(バイドゥ)といった大手インターネット企業のデータセンターをはじめ、テレビ局やスマートシティ、巡回点検など、20以上の現場に導入されている。また、通信機器大手のファーウェイや、サーバー企業の超聚変(xFusion)、浪潮集団(Inspur)などにも供給しているほか、快手の海外事業ネットワークを通じて、シンガポールやブラジル市場にも進出している。

劉凌志最高経営責任者(CEO)は「2025年から2026年にかけては、ロボットやドローン、自動運転といったエッジコンピューティング分野にも注力していく」と展望を語った。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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