性能×コストで海外勢に勝負。中国発「力覚センサー」、人型ロボット需要で急成長

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ロボット向けの力覚センサーを開発する中国スタートアップ「藍点触控(Link-touch)」がこのほど、シリーズBで1億元(約20億円)近くを調達した。広発信徳(GF Xinde Investment)、復星創富(Fosun Capital )、合肥創新投資(Hefei Innovation Investment)および華倉資本(Huacang Capital)が共同出資した。資金は製品開発や海外市場の開拓などに活用される予定だ。

藍点触控は2019年に設立され、北京に本社を置く。スマートロボットにおける力制御技術の研究開発と応用に特化した国家ハイテク企業として、人型ロボット向け6軸力覚センサー、汎用6軸力覚センサー、関節トルクセンサー、引張・圧縮両用ロードセルなど、各種力覚センサーを提供している。

同社の製品は研磨・組立・溶接ロボットや手術支援ロボットに搭載され、航空宇宙や電子機器、自動車、医療などの業界で活用されている。人型ロボット向けの製品では、優必選科技(UBTECH Robotics)や智元機器人(Agibot)、千尋智能(Spirit AI)など業界を代表する企業とパートナーシップを結ぶ。

海外勢を超える性能とコスト最適化を両立

高性能力覚センサー市場では、これまで米ATI Industrial Automationなどの海外メーカーが優位を築いてきた。しかし、創業者の劉呉月氏は、「中国の航空宇宙分野では70年以上にわたり6軸センサーの研究が行われてきた。当社の中核メンバーは宇宙開発出身であり、その技術的蓄積を産業応用に転換してきた。特に信号干渉(クロストーク)や精度などの性能面では、すでに海外企業のレベルを上回っている」と語る。

最大の課題は、宇宙開発分野で培われた高性能な技術を、産業用に最適化して低コストで量産することだった。藍点触控は、コストコントロールと技術ソリューションの両面で調整を加え、高い性能を維持しつつ費用対効果を高めることに成功した。「まず技術ソリューションを改善し、ハードウエアの回路・構造・生産プロセスを全面的にアップデートした。次に生産の自動化技術を改良し、生産効率や良品率を高めた。量産体制を確立してからは、サプライチェーンを管理することでさらにコストを低減し、生産品質を向上させた」と劉氏はまとめた。

製品の性能指標も大きく向上させた。測定精度は0.3%FS(Full Scale)未満、人型ロボット向け6軸力覚センサーでは0.1%FSを達成。また、最大応答周波数を10kHzとし、0.1ms(ミリ秒)ごとに1つのデータポイントに応答できるようにした。さらに、集積度を高めることで従来よりもセンサーを80%以上軽量化し、90%以上小型化することに成功。パートナー企業がより自然な形でロボットに力覚センサーを組み込めるようになった。

「藍点触控」の人型ロボット向け6軸力覚センサー

藍点触控はプラットフォーム型の技術力を基盤としているため、顧客の要望への対応期間を6〜8週間から3〜4週間に短縮できる。人型ロボットの技術革新が加速度的に進み、市場投入までの期間が6〜8カ月に縮まるなか、納期を短縮する能力も技術系サプライヤーの競争力をはかる重要な指標となるだろう。

市場拡大が続く人型ロボットとともに成長

人型ロボット産業は、ここ2年ほどで飛躍的に成長した。調査会社IDCによると、中国では2024年の人型ロボットの販売台数が業界予想を上回る約2000台となった。劉氏は、現在の勢いから見ると、25年の販売台数は5000〜1万台に達する可能性があると予測する。

人型ロボットの実用化が加速するのに伴い、力覚センサーの重要性も鮮明になりつつある。劉氏は「接触を伴う場面で作業精度を高く保つには、人間のように視覚によって大まかな位置を確認し、力覚によって細かい調整を施す必要がある」と説明する。

劉氏の説明では、人型ロボットの末端に6軸力覚センサーを搭載する動きは2024年下半期に始まり、25年に入ってからは各関節に関節トルクセンサーを実装するようになったという。一般的に、人型ロボットには両手足に4つの6軸力覚センサーと28個の関節トルクセンサーが必要で、BOMコスト(部品代)は人型ロボット全体の15%を占める。

「藍点触控」の関節トルクセンサー

藍点触控はすでに量産体制を確立し、競合他社を圧倒している。2024年は人型ロボット向け6軸力覚センサーの市場シェアが70%を突破し、25年上半期には複数の企業に向けてそれぞれ1000個規模の出荷を実現した。関節トルクセンサーの出荷数は24年が5万セット近く、25年上半期は7万セット余りとなり、中国全体の95%以上を占めた。

今回の資金調達を受けて、同社は研究開発体制の強化とチーム拡充を進め、より多様な用途向けのセンサー展開に注力する。また、欧州や北米を中心としたグローバル市場の開拓にも本格的に乗り出す方針だ。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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