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中国の電動垂直離着陸機(eVTOL)メーカー「億維特航空(EVT Aerotechnics)」がこのほど、シリーズAで数億元(数十億円)を調達した。出資は金浦投資(GP Capital)が主導し、精工科技(Jinggong Technology)や英搏爾電気(Enpower Electric)、既存株主の邦盛資本(Bondshine Capital)なども加わった。資金は主力機種の開発と耐空証明の取得、航空用電動推進システム(EPS)の量産体制の構築、商用化の実証に用いられる。
EVTは2022年に設立され、市型航空交通(UAM、アーバン・エア・モビリティー)の普及を掲げ、未来の空の交通に向けたソリューション開発を進めている。コアメンバーは民間航空機大手の中国商用飛機(COMAC)出身が中心で、複数の国産大型旅客機の開発経験を持つ。創業者の任文広氏は航空機の設計・検証の分野で20年近いキャリアを有する。
国金証券は、2030年までに中国のeVTOL需要が1万6000機を突破し、短距離の定期旅客便、法人・個人向けのチャーター便、遊覧飛行、医療搬送の4分野で活用が進むと予測する。一方で、認証の長期化やサプライチェーン整備の遅れが商用化の足かせになっている現状も指摘される。
eVTOL開発で世界の先頭を走る米国のジョビー・アビエーションやアーチャー・アビエーションは旅客輸送に注力している。一方、中国の億航智能(イーハン)や峰飛航空(オートフライト)は主に、観光地での遊覧飛行や貨物輸送に軸足を置いているが、動力システムなどの中核部品は依然として輸入頼みだ。モーター1台あたりの調達コストは数十~百万元(数百万~2000万円超)に上る。
EVTの主力機種は5人乗りのeVTOL「ET9」で、型式証明は取得済み。最大離陸重量2.2トン、航続距離は最大240km、最高速度は時速240kmに達する。4軸8ローターの複合翼構造を採用し、モジュール設計に加え、炭素繊維複合材料を85%以上使用することで、軽量かつシンプルな機体に仕上げた。また、長距離飛行にも対応できるよう、燃料電池とリチウムイオン電池を組み合わせたハイブリッド機「ET3」の開発も進めており、800kmという長い航続距離を生かして用途の大幅な拡大を狙う。
同社が選んだ複合翼構造は、垂直離着陸の機動性と固定翼の航続性能を兼ね備え、物流輸送や都市間シャトル輸送などに活用できる。自社開発した航空用電動推進システムは、モーターから制御装置、プロペラに至るまで国産化を実現。主要性能のテストもクリアし、輸入品に比べて量産コストを大幅に低減した。加えて、1~3トンクラスのeVTOL向けに50~100kWの高効率モーターも開発した。
共同創業者の趙継偉氏によると、ET9プラットフォームの試作機は開発を始めてからわずか17カ月で初飛行に成功、業界平均の24~36カ月を大きく下回った。しかも、初飛行から自社開発の動力システムを搭載している。これまでに400回以上の試験飛行を実施し、その飛行データを活用してシステムの検証や制御アルゴリズムの最適化、機体の軽量化などを進めている。有人タイプは航続距離200kmで、2027年に耐空証明の取得を目指す。貨物タイプは積載量500kgで、26年に海運会社と提携して近海船舶への物資補給の実証運航を開始する予定。1回あたりの輸送コストは現行の航空手段に比べて60~70%削減できるという。
すでに運営センターを設立し、配車アプリの滴滴出行や江蘇省南京市建鄴区と戦略提携を結んで、低空モビリティー運用の模索を進めている。今は巡回検査機、貨物ドローン、有人eVTOLなど計300機以上の注文の意向を受けている。貨物機は山間部・島しょ地域での運用を物流企業と検討中。有人機では長江デルタの三甲医院(中国で最高レベルの総合病院)などから緊急救助用途で30機の受注、観光地向けに50機の導入意向があり、2026年に初の山岳観光ルート開設を見込む。
EVTは2026年から自社製の動力システムを外部メーカーにも供給する予定で、すでに国内企業2社が購入意向を示している。中国のeVTOL各社が動力の輸入依存から脱却できれば、調達コストの圧縮と量産の加速につながるだろう。
*1元=約21円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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