無名の中国企業から「バフェット銘柄」に。バークシャー、出資17年でBYD株を全売却

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米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイが、中国自動車大手BYD(比亜迪)の株式を全て売却したことがこのほど明らかになった。2008年に同社に出資したバークシャーは2022年に株式の売却を開始。売却によって80億ドル(約1兆2000億円)超の利益を得たと報じられている。

出資から17年、成長見届け売却

BYDの広報責任者である李雲飛氏は9月22日、バークシャー氏の株式全売却を念頭に、SNSで「株式投資において、買う人がいれば売る人がいるのはごく普通のことです。過去17年間にわたる(チャーリー・)マンガー氏と(ウォーレン・)バフェット氏の投資、支援、そして共に歩んでくれたことに感謝します。すべての長期主義者に称賛を送ります」と投稿した。

バークシャーは2008年、株式2億2500万株を1株8香港ドル(約150円)で引き受けた。バフェット氏の盟友で同社副会長だった故マンガ―氏が投資を勧めたとされている。出資額は約18億香港ドル(約340億円)で、BYDの株式の10%を保有する大株主となった。

EVの進出前で、グローバルでは無名の存在だったBYDはこの投資を機に「バフェット氏が投資した」注目企業としてスポットライトを浴びるようになった。

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BYDは2010年代までこれといって特徴のない中国自動車メーカーに過ぎなかったが、バフェット氏はBYDの新車発表会に出席したり、コロナ禍ではBYDが生産した医療用マスクを着用して公の場に出るなど、BYDの後見役的な存在を果たしてきた。

BYDの自動車販売が急成長を始めたのは2021年以降だ。2020年に約42万6900台だった販売台数は、2021年に約74万台、2022年に約185万7000台と伸びていった。2022年3月にはガソリン車の生産を終了し、「テスラの唯一のライバルであるEVメーカー」としてのポジショニングを確立した。

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地政学リスク意識か

バークシャーが初めてBYD株を売却したのは2022年8月。133万株を1株あたり平均277香港ドルで売却した。株価は2008年の30倍以上に上昇していた。だが、バフェット銘柄のイメージが強かった反動もあって、この売却でBYD株が急落し、BYDが「行き過ぎた解釈は控えてほしい。事業はすべて通常通りだ」とのコメントを出すに至った。

その後もバークシャーはBYD株の売却を継続。2024年6月には出資比率が5%以下にまで下がっていた。最近提出した資料で、3月末時点でBYD株の保有がゼロになっていたことが判明した。

出資引き揚げについてバークシャーは理由を説明していないが、いくつかの理由が挙げられている。

1つはBYDの成長鈍化。中国自動車業界の競争激化で、BYDの販売も苦戦している。2025年1〜6月期決算は増益だったものの、値下げによって利益率は圧迫されており、年間の販売目標も下方修正した。

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もう一つは地政学リスクだ。バークシャーは取得したばかりの台湾積体電路製造(TSMC)の株を、2023年までに全て売却した。バフェット氏はTSMC株を手放したことについて、台湾企業であることを挙げ、今後は日本企業に資産を振り向けると説明していた。

いずれにしろBYDの株価はバークシャーに大きな利益をもたらした。「オマハの賢人」の目利きは確かだったと言えよう。

※1香港ドル=約19円で計算しています。

(文・浦上早苗)

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