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医療データの8割のソースは医用画像にある。1人の患者にかかるCT画像のデータサイズが数百ギガバイトに軽々と達する現在、これを1GB以下に納められる薄層スライスCTは最先端の技術だ。 いずれにしろ、これほど大容量の画像データをやり取りするには、有線ネットワークでは明らかな遅延が発生する。しかし、5G技術によって迅速なデータ転送とリアルタイム分析を実現できれば、医療機関をまたいだ遠隔画像診断や医用画像AI領域に新たな発展の可能性が拓けてくる。
同領域では多くの企業が商業化の道を模索している。36Krが先日取材した「翼展電子科技(Wingspan Electronnic Technology、以下「翼展」)」もそのうちの1社だ。同社は先日、中華医学会主催の「第26回全国放射線医学学術大会(CCR2019)」にて、5Gを用いた医用画像転送技術を臨床現場に導入する可能性を示した。
医用画像へのAI導入を5Gが加速
翼展の高雲龍CMOによると、5G通信モジュールを搭載したクラウドコンピューティング用のスマートゲートウェイツール「翼展盒子」は、大量の医用画像設備関連データをクラウド上に転送し、リアルタイムかつ遠隔でのモニタリング、遠隔メンテナンスおよび故障前通知を行い、大規模な遠隔画像診断を円滑化するプラットフォームだ。
エッジコンピューティングは、クラウド上のデータリソース・データ処理機能・データ蓄積機能を、ユーザーのローカル機器へ移行し、ローカル端末単独で大量のデータ処理や意思決定を行うものだ。AIを用いた医用画像分野においては、AIの学習モデルをエッジに移行することでデータ通信コストを大幅に引き下げられる。データをローカルで処理できれば、大量のデータをクラウド上に保存しておく必要もない上に、エッジ側で機械学習を行うことができれば、将来的な通信機器の爆発的増加にも対応でき、プライバシーや機密性、低遅延に対する需要の拡大にも対応できる。
5Gの恩恵によって臨床現場も変貌を遂げる。キャリア豊富な専門家が地方に分散する末端医療機関から提出された医用画像を遠隔で読影し、診断を行えるようになる。まさに中国政府が推進する「分級医療(各ランクの医療機関における役割を明確化し、相互に連携する制度)」へ貢献し、医療体制の脆弱な地域の患者にもその恩恵を行きわたらせることができるのだ。
高CMOによると、画像診断の精度には撮影技術も直接的に影響してくる。遠隔診断における大きな問題点として、医療設備に乏しい地方の小規模医療機関では、技師の経験不足などもあり、十分なレベルの画像が撮影できないことがある。有能な医師が診断を担当するにしても、これでは診断そのものに困る。
翼展盒子は医用画像をAIで判定し、画質に問題があれば技師に差し戻して再撮影を促すことができる。エッジ処理を導入する以前は、画像がすでにクラウド上に転送・処理された後で診断する側の医師がこれを確認し、画質が悪ければ再撮影を依頼する流れだったが、翼展盒子はエッジ側の段階で差し戻しを行うため、一連のやり取りにかかる時間を短縮でき、遠隔診断のプロセスがスピーディーになる。
読影、診断、対診、教育、経営までを遠隔で
2009年に設立された翼展は、医用画像のスマートソリューションを提供し、医用画像AIの応用を研究するハイテク企業だ。
同社の中核製品は2013年に発表された「雲影」だ。データ・クラウドコンピューティング技術・使用シーンをかけ合わせ、遠隔診断、遠隔対診、遠隔教育、遠隔経営を網羅するマルチソリューションで、具体的には以下の三つの機能を有する。
一つ目は、クラウド上で3Dリモデリングを行う機能。MPR(多断面再構成法)、MIP(最大値投影法)、MinIP(最小値投影法)、AIP(平均値投影法)といった三次元画像表示法に対応する。撮影スライス厚を簡単に調整でき、アングルも自由に設定できるため、画像の遠隔診断を可能にする。
二つ目は、PET-CT(陽電子放出断層撮影とコンピューター断層撮影の融合検査システム)における3D画像融合機能。MPRおよびMIPによってPET-CT融合画像を表示する。これにより組織の病変を観察し、病巣位置をピンポイントで特定することができる。現在では各部位に色付けができる機能も追加された。
三つ目は、超音波を用いた遠隔対診機能。院内の各診療科・部門、あるいは同一地域内の医療機関が連携して遠隔で対診を行うソリューションだ。
雲影はオンラインで読影し、遠隔診断を行い、診断報告書を自動作成する放射線科医向けのツールで、医用画像分野で立ち遅れた設備と医師とをモバイルインターネットで接続し、画像診断の精度および速度向上を支援するものだ。現段階ではCT血管撮影法(CTA)、マンモグラフィー、眼底画像、内視鏡画像などに対応している。
翼展はこれまで進化を繰り返しながら、核医学(RI)・超音波を融合した遠隔画像診断プラットフォーム、およびブロックチェーン技術を基礎としたリージョンAIクラウド画像プラットフォームを発表。画像診断報告の改ざん防止とトレーサビリティーを確実に保証し、、患者のプライバシーとデータの安全性を最大限に守りながら、医用画像データの送信・交換を加速し、遠隔診断の効率を高めた。また、AIの訓練データの収集およびタグ付けを行い、最終的に分散型医用画像AIの応用範囲を広げてきた。
医用画像特化の「アプリストア」目指す
メディカルAIを手がける多くの企業と異なり、翼展は医用画像を通じたエコシステムの構築を目標としている。
同社はそのために医用画像のAIオープンプラットフォーム「AI Discovery」を構築することとで、さまざまに細分化されたシーン向けのアプリケーションツールを取り込み、マルチプラットフォームを目指す。高CMOの言葉を借りれば「医用画像界のApp Store」といった様相で、世界中のAI企業や開発者チームに製品発表の場を開放し、商業利用してもらうという。
翼展自身の商業化については、高CMOによると、同社の製品およびアプリケーションは中国国内でおよそ3000の医療機関に導入されており、現在は海外進出を経てグローバル化を進めている。
(翻訳・愛玉)
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