有料会員1億人突破の動画サービス愛奇芸(iQiyi)、東南アジアへ進出の勝算

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これまで海外の動画配信サイトのグローバル化の話題はたくさん聞いてきたが、ついに中国の動画配信サイト「愛奇芸(iQiyi)」も海外進出をする。

愛奇芸はマレーシアの有料衛星放送「Astro」と戦略パートナーシップを締結した。この提携によって、愛奇芸はAstroのメディアおよびマーケティングネットワークを通じて現地のユーザーを取り込むことができ、Astroは愛奇芸の技術とコンテンツプラットフォームを通じて愛奇芸のオペレーション能力を活用できるようになる。

愛奇芸のオリジナルコンテンツはすでにAstroにラインアップされている。これまでの中国動画サイトの進出方法と異なり、愛奇芸はパッケージ販売や版権販売ではなく、プラットフォームを開設する方法でコンテンツを提供している。Astroにチャンネルを持つ以外に海外のアプリマーケットには愛奇芸の海外版アプリもある。これは中国の動画配信サイトにとって本当の意味での海外進出と言えるだろう。

東南アジアへ向かう

あらゆるインターネットサービス企業が海外進出を検討している現時点においても、このような決断は簡単ではない。

中国の動画配信サイト業界は14年間お金をつぎ込み続け、ようやく有料会員を1億人の大台に乗せることが出来た。動画を見るのは有料であるというユーザー意識を育てるのに長い時間を要した。

しかし海外進出は今すべき決断であるとも言える。愛奇芸の会員の8割は一、二級都市のユーザーであり、三~五級都市には依然として巨大な成長空間があるが、しかしそこは一筋縄でいくマーケットではない。

愛奇芸がやることは「優酷(Youku)」も「騰訊視頻(テンセント・ビデオ)」もやっている。連合会員(他のインターネットサービスとの共通会員)の販促、オリジナルドラマの制作、有料の版権購入など、3社の競争は依然として膠着状態にある。ユーザーはプラットフォームではなくコンテンツに対してお金を払っているので、投入するコンテンツを減らせばユーザーも減り、競争から脱落することになる。近い将来だけを見れば、これは終わりのない競争である。調査企業「Trust data」のレポートによると9月の愛奇芸、騰訊視頻、優酷のMAU(月間アクティブユーザー数)は、それぞれ2億4400万人、2億600万人、1億3100万人で、依然として競争は熾烈であり、動画配信サイトは成長できる可能性のあるマーケットを探している。

騰訊視頻(テンセント・ビデオ)などのライバルは強力

海外市場を見ると過去数年間、中国の動画配信サイトが目標とするNetfilxは、会員収入によって大きな利益を上げている。今年の第3四半期までにNetfilxの全世界の有料会員数は、1億6400万人に達し、第3四半期に新しく増えた有料会員は678万人であり、その内訳はアメリカが51万7000人、それ以外の全世界で626万人である。

Netfilxは世界的に拡大を加速していて、中国国内の動画配信サイトは太刀打ちできない。1997年にサービス開始したNetfilxは1億人の有料会員を獲得するのに20年間かかったが、愛奇芸は9年しかかかっていない。しかしNetfilxの収益状況と異なり、中国の動画配信サイトは長期に渡って赤字である。

中国のインターネットサービス企業にとって、海外進出はここ2年ホットな話題であり、いくつかの企業はすでに様々な国でサービスを開始している。愛奇芸が東南アジアを選んだのは地理的にも文化的にも近いからである。中国のインターネットサービス企業の多くは東南アジアに目を向けており、愛奇芸も例外ではない。

さらに重要なのは東南アジアは、アメリカなどのコンテンツの浸透が比較的弱い地域であるという点だ。西洋文化が主導する欧米に進出するのは、愛奇芸にとって容易なことではない。そこはNetfilxやディズニーのテリトリーであるからだ。

愛奇芸の会員業務および海外業務グループ総裁の楊向華氏によると、中国国内の芸能人のギャラは高く、ドラマ制作の費用も非常に高い。コンテンツに対する高額な投資は、動画配信サイトの財務レポートをあまり美しくは見せないが、このコンテンツへの投資が海外へ進出するための基礎となった。コンテンツの予算が増え、制作の品質も以前より上がり、質の良い大陸ドラマには海外進出のチャンスがある。東南アジアは香港ドラマ、TVB(香港のテレビチャンネル)ドラマ、韓流、台湾ドラマのブームを経て、今、中国大陸ドラマが流行している。

どのように海外進出するか?

愛奇芸は東南アジアで多くの現地事業者、メディア、テレビ局を視察した後、技術+コンテンツで進出することを決めた。

愛奇芸の技術レベルは東南アジアに比べて一定の優位性があるのも理由のひとつであるが、より重要なのは愛奇芸が自分たちのプラットフォームを作りたいということである。アメリカのコンテンツプロバイダーは、ディズニーもHBOも自分のチャンネルを持っている。愛奇芸のコンテンツをより広く公開するには、自前のチャンネルが必要である。

今のところ、愛奇芸は海外でも中国国内と同じく「無料+有料」のビジネスモデルを採用している。中国国内での運営方法を踏襲して、まずはユーザーに獲得して後からビジネス化していく。楊向華氏によると、現在の海外サービスのビジネスモデルと収入構造は中国国内と同じである。

愛奇芸の財務レポートによると一番大きい収入源は会員費用である。しかしそこには10年近くの時間をかけ有料会員を育成してきた背景があり、無料から有料への転換は容易ではない。楊向華氏も現在東南アジア地域では料金徴収率が低く、ユーザーはまだ動画にお金を払うという習慣がないと語る。つまり海外でも当分の間、ユーザーの育成を行うということである。

しかしどの企業にとっても、海外のなじみのないマーケット環境に存在する隠されたコストは思ったより高いかもしれない。

「抖音(Douyin、海外版は「TikTok」)」はインド市場から締め出された。インドの裁判所は子供がTikTokに夢中になりネットから悪い情報を受け取るという理由でTikTokに対して臨時禁止令を出しダウンロードを禁止している。

「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」の海外事業も人員のリストラからトップの離職まで、様々な紆余曲折があった。現在、海外事業が好調な地域はブラジルで、海外版サービスKwaiはブラジルでDAU(1日当りアクティブユーザー数)300万人を突破した。

今の東南アジアのインフラは確かに10年前の中国に似ている。これを中国インターネットサービス企業はボーナスと捉えていていて、東南アジアは人気がある。しかし、硬貨のもう一面を見ると、まだこれから長いインフラ構築段階を経て、困難なスタート段階を経験し、その後さらに苦しい戦いの覚悟をしなければならないということを認めない訳にはいかない。

どの地域で海外事業を展開しどのようにして発展させるか、インターネットサービス企業が時間をかけて模索していく必要がある。中国のインターネットサービス企業にとって物語はまだ始まったばかりである。
(翻訳・普洱)

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