AIが国家戦略の中核に、GITEX GLOBAL 2025がドバイで開催 OpenAIアルトマン氏「AIと社会は共進化する」 

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10月のドバイは依然として熱気に包まれていた。そのなかで第45回「GITEX GLOBAL 2025」が開幕した。

「世界のテックトレンドを占うイベント」と評されるこの展示会は今年、はっきりとした風向きの変化を示した。人工知能(AI)が単なる技術テーマから、国家戦略や産業変革の中心となる原動力へと進化したのだ。各国のAI政策は受動的なものから積極的な取り組みへと転換しつつあり、ドバイを含むUAEはその最前線に立っている。

国家戦略がAI実装を加速

UAE内閣メンバーで経済大臣のアブドゥッラー・ビン・トゥーク・アル・マッリ氏は開幕のスピーチで、「AIは経済構造を根本から変革する中核である」と強調した。

同氏によれば、UAEの非石油経済の比率は2019年の69%から、現在は77.3%にまで上昇。2016年からのAI戦略が、AI企業グループ「G42」や国産AIモデル「Jais」などを生み出したという。

UAE内閣メンバーで経済大臣のアブドゥッラー・ビン・トゥーク・アル・マッリ氏

AIの社会実装を加速させるため、UAE政府は40件を超える国家レベルの法規を改訂し、法制度にAIを組み込んだ。例えば、企業が商標登録をしようと思う場合、商標のデザインをアップロードするだけで、AIがデータベースと照合し、既存商標との類似度を即座に判定してくれる。これまで手作業で1~2日かかっていた作業が、わずか数秒で完了するようになった。

ドバイ商工会議所会頭モハメド・アリ・ラシッド・ルータ氏は、ドバイが進める経済アジェンダ「D33」の一環として、2033年までにユニコーン企業30社を生み出す目標を掲げた。その中核施策として、起業家・投資家・メンターを結ぶ「Dubai Founders HQ」を設立し、創業からグローバル展開までの全プロセスを支援するという。

ドバイ商工会議所会頭モハメド・アリ・ラシッド・ルータ氏

展示会では政府や企業の協業が次々に発表された。アブダビ市政交通局が19件の戦略提携を発表したほか、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)とe&グループはAI人材3万人の育成を目指す「AI Nation – Afaaq」プロジェクトを始動。さらにアブダビのAI企業Presightとドバイタクシー社(DTC)が、AI交通ソリューション開発で協力する覚書を締結した。

AIはもはや単独の技術ではなく、バイオテック、エンボディドAI、量子コンピューティングと融合しながら、次世代の産業基盤を形成しつつある。

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技術と社会の「共進化」

今年のGITEX GLOBALで最も注目を集めたのは、G42の肖鵬CEOとOpenAIのサム・アルトマンCEOによる対談だ。

アルトマン氏は、UAEのAI戦略を「世界の模範」と称賛し、肖氏も強力なリーダーシップがAIネイティブ国家を実現する鍵になると述べた。

G42の肖鵬CEOとOpenAIのサム・アルトマンCEOによる対談

アルトマン氏が提唱する「共進化(co-evolution)」の概念は、技術と社会が相互に影響し合いながら進化するという考え方だ。AIの価値は効率向上にとどまらず、「人類文明を新たな段階へと導くだろう」と語った。

一方、肖氏はG42の実例を挙げた。「ChatGPTのプロンプトを500回重ねて設計した日本庭園がすでに完成した。社内ではAIエージェントと社員の比率が10対1に達している。AIが家を設計するようになり、AIエージェントが人間の社員数を上回った時点で、AI時代はすでに始まっている」と断言した。

G42の肖鵬CEO

G42は「7歳から70歳まで」を対象としたAI教育プログラムを推進。アブダビの行政プラットフォーム「TAMM」には1000以上のサービスが統合され、その多くがChatGPTで稼働している。

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中国企業も多数参加 ロボットが主役に

今年のGITEX GLOBALでは、中国企業の存在感も一段と高まった。とりわけ、ロボティクス分野の出展が目立った。

スマート警備巡回ロボット「山猫M20」

四足歩行ロボットで知られる雲深処科技(Deep Robotics)は、スマート警備巡回ロボット「山猫M20」を展示。5G通信による高解像度画像の伝送とガス検知警報機能を備えており、会場では複雑な環境での安定した走行とリアルタイム映像伝送のデモンストレーションを披露した。感知・移動・警報を集約した多機能性が注目を集めた。

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初出展となった銀河通用機器人(Galbot)は、産業生産向けの人型ロボットを披露。自社開発のロボット用AIモデルを搭載し、事前の環境スキャンやマーカーなしで自律的にタスクを遂行できる。

銀河通用機器人(Galbot)の展示エリア

同社は今年の「世界人型ロボット競技会」で医薬品仕分け競技の優勝を果たし、NVIDIAなど大手企業から一目置かれる存在になっている。

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通信機器大手の海能達(Hytera)は、AI解析機能付きの「移動型スマート取り締まりシステム」を展示。パトカーのルーフに搭載したカメラで顔・車両ナンバーをリアルタイムに認識し、異常な運転行動を検知する。ドバイ空港やカタール航空、W杯の警備にも採用されており、中東で存在感を強めている。

海能達(Hytera)の「移動型スマート取り締まりシステム」

グローバルな技術ハブとして

今回のGITEX GLOBALは、もはや単なる技術発表の場ではない。 国家戦略と企業のイノベーションが交差し、共振する舞台であり、欧州・アジア・アフリカをつなぐ中核的ハブとしての地位を確立しつつある。

ただし、成功に至る道は決して容易ではない。ある海外企業の代表はこう語る。「中東市場は購買力が高く、ビジネス環境も開かれている。しかし、成功するには時間がかかるだろう。重要なのは、現地文化への深い理解と、地域に根ざした長期的なローカライズ戦略だ」

(翻訳・編集:茶谷弥生、校正:畠中裕子)

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