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10億人が動画投稿サイトを利用し、1人あたりの視聴時間が1日2.6時間に達する中国では、誰もが簡単に動画を制作し、配信できる時代を迎えている。こうしたなか、小さなワイヤレスマイクが、クリエイターに欠かせないアイテムとして存在感を高めつつある。
調査会社QY Researchによると、世界のワイヤレスマイク市場は2023年に104億元(約2300億円)に達し、中国では年間500万台以上が売れたという。ショート動画やライブ配信の普及で急拡大した市場は競争が激しく、一時は参入企業が400社を超えたとも言われる。このレッドオーシャンで、ひときわ異彩を放っているのが、深圳企業「昊一源科技」の展開するブランド「HOLLYLAND」だ。
同社は8年前に海外メーカーのODM(受託開発)からスタートし、技術力を高めて自社製品の開発へとかじを切った。2023年と24年には中国のワイヤレスマイク販売台数で2年連続首位を獲得している。現在は世界160カ国・地域のクリエイター500万人以上が製品を利用しており、売上高の60%以上を海外が占める。

その成長を支えてきたのは、全工程を自社で開発する技術体系だ。技術開発への投資を惜しまず、約500人規模の開発チームを組織して、ワイヤレス伝送や音声処理、映像アルゴリズムなどの分野に注力し、これまでに220件以上の特許を取得してきた。プロユースでは、コア技術をすべて自前で開発し、大規模運用も可能なシステムを完成させて、国家レベルの大型イベントを支えられるほどの安定性と低遅延性を実現している。

最新のフラッグシップモデル「LARK MAX2」を例に挙げると、マイク本体にAIノイズ除去機能を搭載し、1000種類以上の環境ノイズの識別と抑制が可能で、サンプリングレート48kHz、信号対雑音比72dB以上と放送局レベルの高い音質を実現した。ノイズ除去は従来の2段階から20段階へと細かく調整できるようになり、周囲の環境音を抑えながら、細かな声のニュアンスもしっかり拾える。
また、ユーザーの声を製品改良に反映する仕組みを確立したことで、優れた口コミや高いリピート率を獲得してきた。プロダクトマネジャーやエンジニアが現場に赴いて、ユーザーと直接対話したり、使用状況をシミュレーションしたりすることで隠れた課題を洗い出し、製品の改良に役立てている。例えば、モニタリング用イヤホンのケーブルが絡まりやすく、撮影に支障をきたすことが分かると、すぐさまLARK MAX2に100メートル以内で25ミリ秒という超低遅延のワイヤレスモニタリング機能を追加した。
加えて、まだ顕在化していない課題にも先回りして取り組んできた。マイク本体のロゴがあまりにも目立ちすぎると、視覚的なノイズとなり、映像の雰囲気を壊してしまうことに気付いた開発チームは、ロゴが見えないよう裏向きにも装着できるようにデザインし直した。ブランド名の露出は減るものの、ユーザーからは高い評価を集め、シャオミの雷軍氏やファーウェイの余承東氏など、テック業界の著名人のライブ配信でも頻繁に使用されている。
HOLLYLANDは培った技術を応用してカメラも開発した。ライブ配信用カメラ「探境2」は独自開発の映像処理技術を搭載し、AIがシーンを判別して肌の色や明暗バランスを最適な状態に調整してくれるため、照明に頼ったり細かな設定をいじったりすることなく完成度の高い映像を簡単に撮れるようになった。

2024年には、中国国内向けブランド「猛瑪(MOMA)」と海外向けブランドのHOLLYLANDを統合し、グローバル化に向けた新たなブランド戦略をスタートさせた。ショート動画の質が向上し、オンライン教育やリモート会議用の需要も広がるなか、ワイヤレスマイクはプロ用の機器から一般向けへと普及しつつある。さらなる拡大が見込まれる市場で、HOLLYLANDは技術力と中国の優れたサプライチェーンを武器に、世界進出のサクセスストーリーを描き出そうとしている。
*1元=約22円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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