あなたの情報は丸裸にされ広告主に渡っているーー米人気ショッピングアプリの「プライバシー侵害度」をスコア化。メルカリも上位、意外に中華系が⋯

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あなたの情報は丸裸にされ広告主に渡っているーー米人気ショッピングアプリの「プライバシー侵害度」をスコア化。メルカリも上位、意外に中華系が⋯

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日々ネットを利用する中で自身が調べた情報にひもづく広告が表示され、「情報が抜かれている」と不安に思う人も少なくないだろう。米市場調査会社Telescope(テレスコープ)は、米国で使われている100のショッピングアプリを対象にユーザーの個人情報をどの程度取得・利用・追跡しているかを調査し、「プライバシー侵害度(invasiveness)スコア」として点数化した。

調査結果からは多くのアプリが収集した個人データを外部の広告主と共有していることや、アプリの人気とプライバシー侵害度が反比例していることが明らかになった。

調査は米国でもっとも人気が高い100のショッピングアプリのプライバシーポリシー(自己申告が義務付けられている米アップル標準の「プライバシーラベル」)を分析し、以下の3つの目的・場面で利用されたデータの量とプライバシー性の高さから「プライバシー侵害度スコア」を算出した。

① トラッキングデータ(Tracking Data):他のアプリやウェブサイトを横断してユーザーを追跡する。

② サードパーティーデータ(Third-Party Data):外部の広告主と共有する。

③ ファーストパーティーデータ(First-Party Data):アプリ開発者が自社のマーケティング目的で使用する。

最小のデータ収集を「0」、最大の侵害度を「100」と、 スコアが高いほど、アプリから個人情報を取得・利用していることになる。

メール、住所、写真まで広告主に提供

スコアが最も高かったのは米スニーカーEC「フットロッカー(Foot Locker)」。同サイトは他社のアプリやウェブサイトを横断してユーザーを追跡するために購入履歴、金融情報、位置情報、検索履歴、閲覧履歴、利用状況データなど9種類ものデータを収集しているほか、購入履歴、住所、メールアドレス、氏名、電話番号、検索履歴、閲覧履歴、ユーザーIDなど13種類の個人情報を外部の広告主に共有していた。さらに、自社のマーケティング目的でも15種類のデータを使用している。

Foot Lockerのサイト。左下に情報を収集することへの同意ボタンがある。

テレスコープの調査によるとeBay(イーベイ)、メルカリなど24のショッピングアプリが詳細な購入履歴を外部の広告主に共有し、広告主に興味・関心だけでなく実際の購買行動まで把握されることになっている。ルルレモン、アディダスなど19のアプリはメールアドレスを広告主に提供している。住所やユーザーの写真を提供しているアプリもあった。

イーベイ、コストコなど9つのアプリは他のウェブサイトやアプリでの閲覧履歴を、H&Mなど17のアプリは検索アプリを追跡している。こうしたクロスプラットフォーム追跡により、アプリはユーザーの関心や嗜好を詳細にプロファイリングし、他のデータと組み合わせて包括的なユーザープロフィールを構築しているという。

中華系アプリは意外に健全?

調査対象には日本や中国のアプリも含まれていた。両国のアプリで最もプライバシー侵害度スコアが高かったのはメルカリ。100アプリの中で11番目に高く、スコアは63点だった。

クロスプラットフォーム追跡、データの外部広告主への共有、自社マーケティングへの活用とまんべんなく高いスコアとなっている。他の日本企業ではユニクロのスコアが15、楽天は3だった。

中国企業のアプリで最もスコアが高いのはアリババの32でH&Mと同スコアだった。

「個人情報が抜かれているのではないか」と物議をかもすこともある中国系越境ECアプリについてはSHEINが7、TEMUは3と意外なほど低かった。

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楽天とTEMUは自社のマーケティング活用にデータを利用している一方、プラットフォームをまたいでの追跡や外部の広告主へのデータ提供はゼロだった。

TEMUなどは、外部へのデータ提供に頼らなくても、自社プラットフォーム内のアルゴリズムだけで十分に強力なリコメンドができるため、外部追跡の必要性が低いのではないかと考えられる。一方で、セキュリティに関して、常に厳しい監視の目にさらされていることから、アップルのプライバシー規制を「最もクリーンな形」でクリアする戦略をとっているだろう。

テレスコープは「アプリの人気とデータ侵害度が反比例している」のは注目に値する。

人気ランキング2位のTEMUはアプリ横断追跡は行わず、自社マーケティングに使うデータも最小限にとどめている。人気3位のShop by Shopifyはスコア0点だった。

一方、フットロッカーは、人気ランキングで85位。過度なデータ収集は、消費者のプライバシー意識が高まる中で競争上の不利になる可能性を示唆している」と分析している。

文:浦上早苗

経済ジャーナリスト、法政大学IM研究科兼任教員。福岡市出身、早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で教員。現在は経済分野を中心に執筆編集、海外企業の日本進出における情報発信の助言を手掛ける。近著に『崖っぷち母子 仕事と子育てに詰んで中国へ飛ぶ』(大和書房)『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。X: sanadi37

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