中国のナトリウム電池新興、「リチウムと性能互⾓」 低コストで1万トン量産へ

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リチウムイオン電池の価格変動やエネルギー安全保障への関心が高まるなか、ナトリウムイオン電池の産業化に向けた動きが加速している。こうしたなか、ポリアニオン系正極材料を手がける中国のスタートアップ「鈉遠新材(SIMT)」がこのほど、プレシリーズAで国芯創投と資略資本から数千万元(数億円)を調達した。資金は年産1万トン規模の量産ラインの建設や、負極を持たない「アノードフリー」技術の開発、市場開拓などに充てられる。

鈉遠新材は2022年に設立され、本社を江蘇省無錫市に置く。最高経営責任者(CEO)を務める劉衆擎博士は、ドイツのユーリッヒ研究センターでポスドク研究に従事したほか、英オックスフォード大学や独材料大手のSCHOTT(ショット)グループでの経験も有している。こうしたバックグラウンドにより、同社はドイツ流の材料安定性と中国スタートアップ特有のスピード開発を両立させている。

ナトリウムイオン電池技術をめぐる競争は、これまでも大きな注目を集めてきた。鈉遠新材が主力とする「改質ポリアニオン系硫酸鉄ナトリウム」は、化学工業の副産物である硫酸第一鉄と硫酸ナトリウムを原料とするため、原材料の供給が安定している。BOMコスト(材料費)は1トンあたり1万元(約22万円)以下と、コストの優位性が際立つ。しかも、電圧は3.6ボルト(V)と高く、アノードフリー電池や全固体・半固体型など高エネルギー密度の次世代ナトリウムイオン電池技術を支える基盤材料として期待が寄せられている。

同社の第1世代製品はエネルギー密度が1キログラム当たり120ワット時(Wh)に達している。現在開発中のアノードフリー電池は、エネルギー密度の理論値が200Wh/kgを突破する見通しで、中低価格帯のリン酸鉄リチウムイオン電池や三元系リチウムイオン電池と互角に戦える性能を備える。

硫酸鉄ナトリウムは、これまで圧縮密度の低さやサイクル特性の劣化、ガス発生による膨張といった課題から商用化が難航していた。これに対し、同社は主材と添加剤を協調設計する独自の手法を採用することで、材料構造の安定性を高め、大幅な性能向上に成功した。また、硫酸鉄ナトリウムの水溶性という性質により、シンプルかつ環境負荷の低い方法で電池をリサイクルできるという利点もある。

市場全体で見ても、ナトリウムイオン電池は本格的な普及に向けた転換点を迎えつつある。試算によれば、ポリアニオン系正極材料の市場規模だけでも現在の約2000トンから2030年には200万トンへと急拡大し、産業規模は400億元(約8900億円)に達すると見込まれる。ナトリウムイオン電池全体でも、容量ベースで4ギガワット時(GWh)から1テラワット時(TWh)へと拡大し、市場規模は5000億元(約11兆円)に膨らむと予測されている。

同社が当面のターゲットとするのは、現在も鉛蓄電池が95%を占める二輪・三輪車向けの軽量動力市場だ。創業者の劉CEOは「技術が確立されれば、ナトリウムイオン電池は鉛蓄電池を圧倒する存在になる」と語る。すでに100社以上の顧客にサンプルを出荷し、1000トン規模の受注も獲得したという。

さらに、無停電電源装置(UPS)やアイドリングストップ用バッテリー、エネルギー貯蔵、ロボット、航空機、AIデータセンター向けバックアップ電源などの分野も開拓しており、中低価格のニッケル系三元電池およびリン酸鉄リチウム電池市場でのシェア獲得を狙う。

劉CEOは「目下の勝負どころは、量産化と実用化のスピードだ」と指摘する。すでに、江西省に5000トンの硫酸鉄ナトリウム量産ラインを完成させたほか、安徽省六安市に1万トン規模の第1期生産ラインの建設を計画中で、2027年には年産1万トンの供給体制が整う見込みだ。

グローバル化にも積極的に取り組んでいる。劉CEOは「欧州では鉛含有量の規制が厳格化し、リチウムイオン電池の安全性に対する懸念も根強いため、ナトリウムイオン電池が有力な代替候補になっている。東南アジアでも需要が急増し始めた」と語っており、海外での販路開拓や現地化を着々と進めている。

*1元=約22円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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