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世の中にイノベーションをもたらす最先端のテクノロジーに注目し、これに携わる企業やプロダクトにスポットを当てる36Kr主催の年次イベント「潮科技2020」が昨年末から今年年初にかけて開催された。テクノロジーが巻き起こすイノベーションについて過去10年を総括し、未来の10年を占うイベントだ。注目企業のCEOが読者から寄せられた質問に答える企画「Ask Me Anything」では、中国IT大手テンセント(騰訊)傘下のテンセントゲームズが手掛けた大ヒットスマホ向けMOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)ゲーム「王者栄耀(日本版は「伝説対決 -Arena of Valor-」)の黄藍梟エクゼクティブプロデューサーが登壇し、10の質問に答えた。抄訳は次の通り。
――現在、「王者栄耀」は人工知能(AI)技術を取り入れているのでしょうか。AI技術はゲームにどのような効果をもたらすのでしょうか。また、今後はどのようなAI技術を使っていくのでしょうか。
「AIは対戦環境の改善に大きく関わっている。例えばAI技術を活用し、悪意のあるゲームユーザーの行為のモデルを作成して識別することで、対戦環境の浄化を図っている。効果としては、対戦中に警告を発する機能によって対戦後の通報率が大幅に低下したほか、悪意のある行為の検出率や正確性も大きく向上した。さらに、ハイライトシーンの自動編集や知的学習支援システム(ITS)の構築により、ゲームユーザーの多様な体験と楽しみを実現している」
「ゲームデザインの面でも、AIは新しいプレーやキャラクターの訓練など王者栄耀を構成する重要な部分に関わっている」
「長期的にみて、AI技術の発展がゲーム業界を含む各産業・業種に大きな影響をもたらすことは間違いない。王者栄耀はテンセント傘下のAI研究機関『騰訊AI Lab(テンセントAI Lab)』と共同でゲーム用AIアシスタントの研究を重ねているほか、将来的にはゲーム開発の効果性と効率性の向上にもAI技術を活用していく方針だ。当然ながら、AIに反復作業だけをさせるつもりはなく、将来的には思考や創造でも本格的に活用できるようにしていきたいと考えている。われわれが開発を進めているマップエディター『天工』をAI技術と組み合わせ、ゲームデザインの可能性を広げることも考えていく」
――米国のグーグルやゲームソフト大手「エレクトロニック・アーツ(EA)」などはマシンビジョン(MV)技術をゲームグラフィックに活用することを検討していますが、王者栄耀ではどのような対応を考えていますか。
「現時点でMV技術は導入していない。ただし王者栄耀もゲームタイトル格付け『AAA』級の体験を実現する技術の確立に取り組んでおり、ゲームユーザーの体験の質を常に改善し、より精巧で美しく、没入感を得られるゲーム体験を提供していく」
――第5世代移動通信システム(5G)には注目していますか。5G技術がゲーム業界に与える影響はどのようなものだと思いますか。
「5Gでは通信速度と処理能力が向上し、ネットワーク遅延やダウンロード速度などの面でゲームユーザーの体験の質が大きく改善されるだろう」
「われわれと協力パートナーは一貫して5G技術に注目している。5Gネットワークと対応端末の普及に伴い、ゲームコンテンツのバラエティーが豊かになるほか、新たなゲーム体験も登場するだろう」
――このところ話題となっているクラウドゲーム技術について、どのように考えていますか。
「クラウドゲーム技術も注目している分野の一つだ。この技術の強みはより手軽なゲーム体験をユーザーにもたらすことができる点にある。テンセントゲームズもすでに専門チームを結成し、さまざまな角度からクラウドゲームの実現を探っているようだ。王者栄耀も引き続き注視していく。ただし現時点では、クラウドゲームはまだ黎明期にあり、テストや研究、トライアルが中心だとみている」
――王者栄耀の派生ゲーム開発を検討したことはありますか。
「王者栄耀は今年で4年目を迎える。ゲームユーザーからのフィードバックや調査によると、メインコンテンツ『グランドバトル』モードでのゲーム体験だけでなく、ヒーローやヒーロー間の絆にまつわるエピソードなどにも多くの期待が寄せられている。われわれはこうした期待に全力で応え、多方面で王者栄耀のIP(版権)を確立し、CGアニメーションや派生商品、バラエティー番組、派生ゲームなどの領域で模索を続けていく」
――18年末、テンセントゲームズと共同で開発したゲームAI「絶悟(Wukong)」を発表し、AIの深層学習能力と対戦能力を証明しました。このことは今後の王者栄耀の発展をどう方向付けるのでしょうか。
「AI技術はゲームコンテンツの制作、ゲームデザインなどの面で活用されることが十分に予測される。昨年8月、われわれは王者栄耀のAIオープンプラットフォームを構築する計画を発表した。AIのアルゴリズム訓練データ、検証環境、処理能力などの資源を公開し、大学や研究機関などと一緒により大きな可能性を探っていく。技術が進歩するにつれ、AIはゲーム産業の推進力となるだけでなく、現実の一般的な生活分野においても大きな推進力を発揮するようになるだろう」
――AI、AR+クラウドゲームなど、ゲーム技術の革新に関して他に計画していることはありますか。
「われわれは提携先と非常に緊密で良好なコミュニケーションを重ねている。ゲームに新たな体験をもたらす新技術を共同で探究し、視覚や聴覚、新コンテンツなど全方位にわたる改善と体験の多様化を図っている」
――そうした技術革新は王者栄耀のプロリーグ「KPL(King Pro League)」にもさまざまな形で反映されるのでしょうか。
「ゲームの観賞性改善につながる革新も研究を続けており、すでにゲーム観戦にAR技術を導入している。今後はさらにチームの訓練などにAI技術を使うことも検討していく」
――ゲームジャンル「MOBA」は今後どのように発展していくのでしょうか。
「MOBAにはゲームそのものとプレーに関して大きな可能性があると確信しており、全ての人が爽快に感じるような体験の実現を追求していく。新技術が向上し続けることで、MOBAゲームも常に更新、進化していくだろう」
――どのスマホ向けゲームにも寿命があります。王者栄耀はどのように寿命を延ばしていくのでしょうか。
「王者栄耀がたどってきた道は自らを乗り越え、自らに打ち勝ってきた道だ。一瞬で全てが変わってしまうような激しい競争の中で、われわれは自らを乗り越え続けることに専念し、ユーザーに対する理解力と共感力、質と効率性の高いコンテンツ制作力、試行錯誤を低コストで行う能力を確立した。革新を続け、すでに認識しながらも対応できていないユーザーのニーズを満たし、未知のニーズをくみ取り続けることができれば、自らを更新し、時代と共に前進できるだろう」
(翻訳・池田晃子)
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